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忘れ物。  作者: 桃色 ぴんく。
1/15

~プロローグ~

 初めてのデートの日の帰り道。家の近くまで送ってくれた彼が言った。

「おやすみ」

「おやすみなさい」

 彼に頭を下げ、家に帰ろうとする私を彼が呼び止める。

「・・・忘れ物」

 そう言って、私に優しいキスをした、年上の彼。



 彼は、会社の上司だった。入社してすぐ、私に仕事を教えてくれることになったのが、彼だった。一目見て、私から恋に落ちた。純日本人なのに、ハーフのような顔立ち。彼の顔のパーツの一つ一つが文句のつけようのないぐらい、整っていた。

 そんな彼だから、きっとモテるし、私なんて相手にしてもらえない・・・と、諦めかけたが、何も告げずに諦めてしまうぐらいなら、当たって砕けろ!と思い直して彼を誘うことにしたのだ。



「山本さん、お盆休みって何か予定ありますか?」

 今は仕事中。だけど、この部屋には私と彼しかいなかった。誘うなら、今!

「特にないけど、何で?」

 彼はニッコリと優しい笑みを浮かべながら、私に聞く。この笑顔を見るだけで、すでに私は舞い上がっているのだが、ここでしっかり誘わないと!

「えっと、その・・・」

 なんて言えばいいのか、『良かったらお茶でも』なのか、『どこか遊びに行きません?』なのか、いきなりここで『好きです。付き合って下さい』なのか・・・

「あの、デート!デートしてください!」

 一瞬のうちに頭の中で考えが廻った挙句、私が口にしたのはこの言葉だった。

「デート?俺と?」

「はい、山本さんと、私がデート・・・」

 ダメだ。絶対断られる。そう思った時だった。

「いいよ。デートしよう」

 こうして、私は彼とデートの約束をしたのだった。



 例え、1回きりのデートでもいい。何か思い出を作れれば、それでいいや。私はそんな気持ちでいた。待ち合わせ場所は、2人の住んでる場所の中間地点の駅だった。お茶でも飲んで、ぶらっとウインドーショッピングでもしよう、という約束だった。



「なんで、俺なの?」

 カフェに入り、アイスコーヒーを飲みながら、彼が聞いた。

「あの・・・一目惚れです。入社した時に見かけて以来」

「そうかぁ。嬉しいな」

「でも、山本さん・・・彼女いるんですよね、きっと」

「え?彼女なんかいないよ」

 そうなんだ。こんなに素敵な人なのに、彼女いないんだ。きっと、あれかな?誘うタイミングが良かったのかも知れない。私ってラッキーかも。そんなことを考えながらアイスレモンティーを飲んでいると、彼が言った。

「そうだ。海、行こう」

「え、いつ?」

「お盆休みだし、もう明後日行っちゃおう」

「明後日!?あ、どうしよ。水着がないです・・・」

「じゃあ今から買いに行こう。買ってあげるよ」

「ええっいいんですか?ありがとうございます!」

 夢のようだった。今日だけで終わるかも、と思ってた私に、次のデートの約束が入ったのだ。彼が【明後日】と言ってくれたのを先延ばしにするともうチャンスがない気がして厚かましく水着まで買ってもらうことになったが、年上の彼に私は甘えることにしたのだった。




 カフェを出て、近くのショッピングモールに向かう。お盆のセールで、売っている物も安くなってそうだ。

「あ、水着あの辺にあるね」

 彼が私の手を引き、水着コーナーへと歩いて行く。あ、あ、今、手を繋いでる・・・。嬉しくなって、私も彼の手を握り返す。もう夏も終わりかけだというのにまだ水着コーナーにはカラフルな水着たちが並んでいた。



そして、水着を見ようとして気付く。



「あ、手を繋いでたら見れないね」

「あはは、そうですね」

 優しく手を解いて、彼が私に選んだ水着を当てて、見てくれる。

「ん~、智恵ともえちゃんは大人っぽいから可愛いのより、こっちかな~」

 持っていたオレンジ色のフリフリの水着をやめ、黒いセクシーなワンピースを当てる。

「うん、これだ!すっごく似合うよ」

「え、でもこれってすごい・・・」

 こんなの着たら、処理しないと恥ずかしいことになる・・・ものすごいハイレグなワンピースだった。

「大丈夫、絶対似合うから」

 そうよね、せっかく彼が選んでくれたんだから。頑張って着こなそう。



 待ち合わせた時間が夕方だったので、お茶をして水着を買ったら、もう夜になっていた。私と彼は、近くの店でお好み焼きを食べながら、いろんな話をした。彼には、行きつけのバーがあるらしく、そのお店では【マイケル山本】という名でボトルを入れていること。ハーフっぽい彫りの深い顔立ちは、家族の中で自分だけだということ。私の知らなかった彼の一面が見れて、私は幸せな気分だった。



 そして、その日の帰り道。

「・・・忘れ物」

と、言って、私にくれた初めてのキス。この日は、嬉しすぎて眠れなかった。入社以来、ずっと想いを寄せてきた彼が、私にキスをしてくれたのだ。



 こうして、私と彼の、幸せな恋が始まったのだった。

 

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