第四夜
カチャカチャッと食器の擦れる音と、咀嚼する音が静かに響く。
白い百合の花を象った電灯の下で、三人で夕食を囲んでいた。
生島くんとのファーストコンタクトを終えたわたしは、そのまま一階の住居で晩餐に招かれた。
「先生、醤油を取ってください」
「はいどうぞ」
生島くんは鮭に醤油をかけ、わたしにも勧めてくる。塩分過多の惨状に、首を振った。
先生も何故かハム卵に醤油をかけている。
これは、正しい食べ方なのだろうか?
「―――ごちそうさまでした」
わたしは両手を合わせ、箸を置いた。
「口にあったかい?」
「はい、美味しかったです。何でも醤油をかけるのはどうかと思いますが……」
「先生、俺もごちそうさまです」
「皆、食べ終わったね。なら最後はデザートだ」
先生は立ち上がり、隣接した台所に足を向ける。流しの横にある冷蔵庫を開けた。
ちらっとだったので確かではないが、大量にプリンが入っていたような……気がする。
彼はプリンをわたしたちに渡すと、食器を片付け始めた。
「先生っ! 手伝いますよ」
「ああ、いいよいいよ。君たちはプリンでも食べてテレビでも見ていてくれ」
わたしの申し出を手で制し、先生は微笑む。
そう言うならと憮然と居間のソファーに腰を下ろした。ダイニングとリビングが一繋がりになっている設計だ。
隣では生島くんが、にやけた顔でプリンを食べている。
先生の親戚と頷ける精悍な顔立ちが、プリン一つで蕩けるとは……。
わたしも一口すくい、口に運ぶ。
「ん、美味しい」と賛美が零れる。
「だよね。スプーンですくえるデザートに不味いものはない」
生島くんがそう応えた。
すでに食べ終えてしまった彼は、台所に振り返り、
「先生、おかわりいいですか?」
「今、手が離せないから自分でねー」
わたしはそんな会話を尻目に、ちまちまとプリンを口にしていた。
ベリッと小さな音が聞こえ、生島くんが次のプリンのカップを開けていた。
………生島くん、いつの間に取って来たのだろう?
彼が席を立った時間が思い出せない。
会話をしたあと、すぐにプリンを開けていたような。
「……気の為か」
わたしは頭を振り、その言葉で全て片付けた。
久しぶりの更新で、文章が少し変わったかもしれません。
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