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黒いうつつ  作者: 凪久
3/7

第三夜


 室内は薄暗く、わたしは所在なげに佇んでいた。先生は部屋の電気を点けると、わたしに振り返った。


「さあ、こっちだよ」


 微笑んで、明かりの届かない奥を示した。

 板張りの廊下の突き当たりに木製の扉がある。そこからピアノの音が聞こえてきた。

 素人耳でもわかる、卓越した旋律。


 これから会える相手にわくわくと心が躍った。


「少し驚くかもしれないな。悲鳴を上げないようにね」

 

 冗談とも本気ともつかない口調で言われ、わたしは彼の横顔を盗み見た。

 いつもの穏やかな微笑。


 わたしは再び廊下の奥に視線を戻した。先生は廊下の電気を点けず、背後の居間の明かりを頼りに進んでいった。


 ―――コンコンッ

 

 先生が扉を叩くと、


「はい、どうぞ」

 

 くぐもった少年の声が応えた。

 ドアノブを回し、先に室内に足を踏み入れる先生。わたしはその背後から覗き込むように室内に視線を走らせた。

 

 鉄格子のはまった窓から夜の明かりが射し込み、ぼんやりと闇を照らす。

 部屋の中央には黒いグランドピアノが置かれ、椅子に学生服姿の少年が腰を下ろしている。


「先生、今日は早いですね」

「いや、君に紹介したい人がいてね。僕の塾生なんだ」

「……どうも」


 会釈して見せるわたし。

 少年は鍵盤から視線を外し「どうも、初めまして」とふんわりと笑んだ。

 その瞬間、音が止んだ。


 ………不自然な終わり方だった。

 

 彼はピアノの鍵盤に触れておらず、わたしはてっきり自動ピアノだと思っていた。

 

 旋律の終わりは、丁度少年が挨拶するために、彼自らが止めたかのようだ。

 だが少年はこちらに振り返っただけで、他の動作は一切していない。


 多少疑問が浮かんだものの、わたしはそれを放り投げた。

 先生が言葉をかけてきたからだ。


「彼は、僕の親戚の生島いくしまくん」

 

 少年―――生島くんはわたしに軽く頭を下げた。

 先生は言葉を続ける。


「実は彼、少し訳ありでね。彼の事は口外しないでほしい」


 そう言って、人差し指を口元に当てた。


「だから、僕と君、そして生島くんと。三人の秘密だ」




文章が安定してないです……。

ちょっと書き直すかも。


11月9日、書き直しました。

更新遅くなります。

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