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第六話

 この小説はフィクションです。実際の人物、団体、国名および作者の中二病とは一切関係ありません。

 目が覚めたら、そこはベッドの中だった。

 知らない天井に、知らないベット、知らないシーツ。


 そして、信じがたい頭痛。


 「うおっ、ってぇ、なんだこれ?」


 自分で言った直後、自分で気付く。


 「ああ、アレか、『左目』使いっぱだったからな……。」


 アレはなんだかんだ言って、けっこう疲れる。精神的にも、肉体的にも。と言っても、肉体的なモノは所謂筋肉痛で、動くとビシビシ身体が音を立てる (様な気がする)くらいで、問題になるのは専ら精神的なヤツだ。以前サイとやった幽霊退治の際には、連続して二時間近く『左目』を行使し続けたため、翌日は一日中脳味噌に紙やすりをかけられるような頭痛に襲われたものだ。


 昨日は、いや、一昨日も含めれば、丸一日以上眼帯をつけずに、本気で使った時間にしても軽く四時間を超えるだろう。比例的には、脳味噌に鋸をかけられるくらいの痛みが生じても不思議はない。


 いや勿論、俺も脳味噌に紙やすりやら鋸やらかけた事はないから、どんなもんかは分からんが。


 「左目さん!!!」


 左目さん?一瞬、誰だその特徴的なあだ名のやつは。


 「よかった!気がつかれたんですね!!!」


 そう言ってベットから半身を起こした俺にめがけて、ピンク色の髪の少女が突進する。下がった目尻が可愛らしく、小柄な体格によく似合う。

 その少女 ―― エスナは、そのまま俺の手を握る。


 「左目さん…、よかった…。」


 そのままちょっと涙声で呟く。


 …。

 ……。


 ああ、そうだね。ここまできたらチェックメイトだね。

 うん。そうだよね。まあ、俺もなんとなく気付いてはいたよ?だってさ。しょうがないよね、確かに俺名乗ってないしね。この異彩放ちまくり、特徴バリバリの目に由来するあだ名もつくよね。


 「ぁぅ……。」


 声にならない声が、俺ののどから零れる。ああ、さらば俺の平穏…。


 「どうしました、左目さん!?どこか、痛みますか!?」


 その様子に、エスナが慌てて俺の額やら脈やらを触り始める。いや、大丈夫だよ、そんな所じゃないよ。寧ろ治したいのなら、その呼び方さえやめていただければ結構です。


 「……。…マナコ。」

 「はい!?」

 「俺の、名前。シンエイジ・マナコ、っていう。左目さんは勘弁してくれ。」

 「あ、はい。シンエイジマナコ、マナコさんですね。分かりました!」


 ちょっとは落ち着いたのか、頷いて、にっこりと微笑む。うん、可愛らしいね。左目くんはこれで無くなるかな。


 「あ、申し遅れましたね。私は、エスナ・オーフェンメイツと言います。エスナ、って呼んでください!このバリアイーストの国の、自衛団で衛生兵を務めています。所属は、特殊遊撃小隊、という所です。よろしくお願いします!」

 「あ、ああ、よろしく。」


 至極全うかつ礼儀正しい挨拶をされてしまったが、あいにくこっちは特に名乗れるような肩書きも無いため、これ以上は言う事も無い。その為、挙動不審に宜しくするくらいしか出来ない。

 だってさ、大学とか出身地とか言っても、通じないよね。ここ、異世界だしね。


 「そうですね、現状を説明しますね。二日前の雨の日、白銀の国ロングヤードから、100人規模の軍隊が我が国に向かって進軍。私達は500人規模でそれを迎え撃ちました。」

 「二日前……二日前!?」

 「はい。二日も眠り続けてたんですよ。…続けますね。そこでは、敵の操る不可視の攻撃によりわが軍にも多数の被害が出ました。ですが、ひだ…失礼しました、マナコさんや、黒服の男の協力もあってこれを撃退。被害も、…犠牲となった方は、ほんの、数人、後の方は皆怪我はあるものの治療のめどが立っています。」


 ほんの数人、と言った時の、エスナの表情。到底「ほんの」と考えている者の顔ではなかった。ああ、そういや、俺のこの目の事件の時、サイがおんなじような顔してたっけ。医者に、「運よく」一命を取り留めた、って言われたときに。


 「それ以降、白銀の国からの進軍はありません。我々は現在はこの救護テントを中心に負傷者の治療を行っています。…恐らく敵の目的は我々の戦力を殺ぐこと、それも削げなければそれはそれでいい、程度のものだったのでしょう。」

 「……そうだろうな。あの兵隊たちは、俺の世界から召喚された連中を操ってたみたいだった。こんな魔法の世界で、敵を殲滅できると考えていたとは思えない。」

 「それがそうでもないですよ。」


 突然会話に割り込んできたのは、薄青い肌の色をした、すらりとした長身の男。だが、何より特徴的な、波打つ黒髪からのぞく、ひれのような見た目の耳。


 「ブルー、どういうことだよ?」

 「おお、左目の君はその名で呼んでくれるんですね。嬉しいですよ。…っと、なんでしたか。ああ、打撃についてですね。あれですね、ウチの国だけでなく隣国のほとんどに同時に敵が向かったそうだ。」

 「隣国すべて!?え、っと、五カ国もですか!?どこにそんな兵力が!」


 いや、そいつは多分、兵じゃない。俺達、召喚した奴らだ。

 そのうちの、多分、いらない奴らを処分・・するための派兵だったのだろう。


 ふと、その内の一人の顔が脳裏をよぎり、知らぬうちに奥歯をかみしめる。


 「で?そのうちどこかに甚大な被害があるところがある、と?」

 「ええ。そうです。」

 「……この世界の国には、たかが百程度の兵隊で滅ぼされるような国があるのか?魔法の力は、見たところ凄い様子だったが。」

 「ああ、私のですか?アレはちょっと特殊ですよ。他の国がこんな『怪物兵器』をポンポン所持しているわけではありません。」


 若干自嘲気味につぶやく、ブルー。なるほど、アレはこの世界でも異常なんだな。ちょっと安心した。


 「それで、深刻な被害を受けた国、というのは?」


 エスナが会話に口をはさみ、先を促す。それにこたえて、ブルーがぽつりと呟く。


 「…ニュータイドランドです。」

 「な……。」

 「…残念ながら、事実です。」


 エスナが、絶句する。なんかえらいことが起こっているらしい。

 だが、異世界人の俺にはさっぱり深刻さが伝わってこない。


 「えーっと、空気読めなくて申し訳ないんだが…その、ニュータイドランド、って?」


 二人が、こちらを見る。ブルーはちらりとこちらを眺めただけだったが、エスナの方は慌てて補足の説明を口走る。


 「す、すみません、分からないですよね。ニュータイドランド、別名『道士と魔鉱の国』。冬場は厳しい積雪がありますが、夏は農耕、冬は鉱山労働でとても栄えている街ですよ。特に鉱山は、武装の要となる魔石や、高級品の魔鉱が取れますから、とても重宝されています。」

 「ま、この際そんな事は蛇足だろうね。重要なのは、『道士』の方だし。あそこは普通の兵でも、数で言ってココの倍以上の兵がいるね。質的にも、あそこは立地的に第三魔道学舎の生徒が多く所属するから、強力な軍だよ。」


 うーん。

 説明になってるようで、マセキやらマコウやらマドウガクシャやら、分からんワードは増えていくな…。まあ、突っ込むとそれはそれで芋づる方式に増えていきそうだし、曖昧に頷く。


 「さらに、あそこにはご自慢の『道士』部隊がある。『道士』ってのはまあ、『異能』を持った者の事だよ。君のように、ね?」


 俺を見てにやりと笑うブルー。う……。説明した覚えはないが、こいつはなんか気付いているらしい。まあこの目がまともじゃない事は見れば分かるんだろうが。


 「『異能』者は基本、各国に二、三人ほどしかいない。それをあそこは小隊三つ分揃えている。それだけでこの国くらいは落とせるような戦力だよ。」


 ほうほう、と頷く俺。ちなみに、横でエスナは何か複雑そうな顔をしていた。


 「で、ここからが本題だよ。」

 「ニュータイドランドの被害は!?」


 熱がぶり返したかのように慌てて詰め寄るエスナ。

 そんなエスナへの、ブルーの返答は、


 たった一言。


 「全滅だ。」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一瞬の、間。


 その後、放心したようにエスナが呟く。


 「ぜ、ぜん…。どういうことですか、それ……。」

 「分からない。」

 「分からないって!!!」


 ものすごい剣幕でエスナがブルーに問い詰める。あわてて詰め寄るその目は、心なしか湿り気を帯びているように見える。


 「詳しい事は、分からない。なぜなら、この全滅・・が、君の考える全滅、とは違うからね。」


 通常の戦闘、いや、戦争において、全滅とは、部隊の兵全てが死に絶えることではない。負傷者などの増加によって、戦線の崩壊を抑えられず、指令系統の麻痺、撤退を余儀なくされる事を指すのだ。

 具体的な数字で言えば、三割から四割。それを超えた戦闘不能者が生じた部隊を、全滅というのだ。


 「……文字通り、全滅・・全員が死滅していた・・・・・・・・・。戦闘員は勿論、国そのものが全滅・・していたそうだよ。」

 「な…!」

 「ぁ…!」

 「…残念だが、確かな情報だね。私の昔の恩師の元の学生が、直接その目で確かめたそうだから。…列島有数の大国が、完全に死の廃墟だったそうだよ。」


 …全滅。

 列島有数の大国の、国一つが、全滅。

 召喚から派兵されて、僅か三日目。その三日で、全滅。


 「逃げのびた者は、ほんの数十人。全員が「『死神』が来た」と震え、話もままならない状況だそうだ。この件は、シルバ君…ああ、私の後輩に調査を頼んでありますが…。」

 「…んだよ。これ以上何かあんのか?」


 魂が抜けたように放心してしまったエスナに代わって、マナコが先を促す。心底嫌そうな声なのは、エスナを横目に見ているからだ。こんな状況の少女に、さらに追い打ちをかけるのは、誰だって嫌なものだ。


 「これは、まだ未確認ですが…。証言からして、どうやらこれを為した『死神』は、おそらく、単独犯のようなのです。」

 「たっ、お、おい、一人で国落としたってのかよ!?ありえねえだろ!!!?」

 「街から離れた荒野で、異世界人と思われる100人ほどの集団の遺体が見つかったそうです。恐らく、ロングヤードの派兵はこれでしょう。これとは別に…あるいは、この中の一人が、たった一人で国を落した。」


 マナコの身体に、震えが走る。

 たった一人で、国を滅ぼす。そんな事が、可能なのか。身体的な能力は勿論だが、精心的に。

 震えながら自分に助けを求めた男の、最期の顔が脳裏によぎる。相手が非戦闘員ならば、ほぼ全員が同じ表情を浮かべていたはずだ。


 それを、繰り返す。

 何千回も、何万回も、何十万回も。あの表情を、踏み越えて。

 そんなもの、もう、人間では無い。


 ああ、と、ふと納得する。

 なるほど、『死神』。全く、その通りだ。


 「さて、ここまででほぼ話は終了です。で、今から、私達が為すべき事を説明しましょう。」


 パン、と手を打ち鳴らすブルー。

 そんなもので振り払える空気では無かったし、そもそもエスナは放心状態から帰ってきすらしていないのだが、それも無視して早口で指示をまくしたてる。


 「まず左目の君、ベット開けてください。エスナさん用にね。で、そのまま外で、私達の指導者 ―― 老子に話を聞いてきてほしいのです。」

 「お、ああ。老子?誰だよそれ?」


 今にも膝から崩れ落ちそうなエスナを慌ててベットに座らせながら、とりあえず一応 ―― まともな答えは返ってこないと知りながらも ―― 聞いておく。


 「老子 ―― プレジド様。この国の賢者と称されるお方ですよ。そこまでの案内は、グリンさんにお願いしてあります。」

 「って……」


 思ったよりまともな返答が返ってきて面食らうマナコ。いや、テメーの言う事に従うのがなんかシャクだ、と言おうとしたマナコだったが、次のブルーの言葉で百八十度意見を変えざるを得なくなった。


 「教えてくださると思いますよ。――この世界の、仕組みについてね。」



 ごめんなさい。前ふり書いてたらSF考証まで行けず……。あ、プレジド翁からの説明、っていうのが、それになります。頭の中で際限なく膨らむSF妄想…。次回は、はたして5000字程度で抑えられるんだろうか…。あ、なんとなく一話5000字くらい、メモ帳で10kb超えるくらいで投稿してます。


 う~ん、それにしても、同時進行のもう一方や、前作に比べてすごいレビューの伸びですね…。異世界召喚モノ、恐るべし。期待 (あるのかは疑問ですが)に応えられるよう、がんばります!

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