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転生の残響

ルーファウスは、深い森の薄暗がりの中で息を整えながら、自分の手と足の感覚を確かめる。

 土の冷たさ、湿った落ち葉の感触。どれもが妙に生々しい。


 融合した記憶が混線しているせいで、頭の奥がじんわり熱い。

 自分が“ルーファウス”であるという感覚と、風間真として生きてきた三十数年分の記憶が、まだきれいに整理されていない。


(……落ち着け)


 まずは現状確認。

 社会人時代に身についた癖が、無意識のうちに思考を整理させる。


 ――そういえば。


 ふと、風間としての記憶が、どうでもいい知識を引っ張り出してきた。

 異世界転生ものにありがちな、“あれ”だ。


(まさかとは思うが……)


 周囲に誰もいないことを確認し、ルーファスは小さく息を吸う。


「……ステータス、オープン」


 自分でも苦笑したくなるほど、期待はしていなかった。

 出なければそれでいい。ただの思考整理の一環だ。


 だが――


 視界の前方、空中に淡い光が滲む。

 何もないはずの場所に、半透明の板のようなものがゆっくりと浮かび上がった。


◆ステータス


名前: ルーファウス

年齢: 18

種族: 人族(転生者)

レベル: 12


【能力値】

HP:138

MP:122

筋力:82

敏捷:79

耐久:75

器用:101

知力:108

魔力:94

運:86


【戦闘スキル】

剣術(3) 

受け流し(2)

弓術(1)


【魔法スキル】

■ 属性魔法(Elemental)※全属性魔法(無詠唱)

 火/水/風/土/光/闇


■ 生活魔法

《クリーンアップ(3)》


■ 身体魔法

《身体能力向上(5)》


■ 認識魔法

《鑑定(2)》

《気配察知(1)》

《危険察知(1)》


【GIFTスキル(非公開)】

道具融合ツール・インテグレーション

残響知識レミナント・メモリー

・■■■■■■■■(????????)


表示されたステータスを見つめていると、

ふと、胸の奥で引っかかっていた違和感が、別の記憶を呼び起こした。


(……そうだ)


 鑑定を初めて使った日のことだ。


 まだ森に慣れきっていない頃で、

先輩狩人の背中を追いながら歩いていた。


 言われるままに魔力を流し、

目の前の獲物へ意識を向ける。


 そのとき視界に浮かんだのは、

今よりずっと簡素な表示だった。


 名前と種別。

 あとは、危険かどうかの目安。


(たしか……あれで十分だって言われた)


 狩人にとって必要なのは、

戦う前に引くべきか、進むべきかを判断する材料だけだ。


 鑑定は、そういう道具だった。


 数字が見え始めたのは、

もう少し後のことだ。


(……たしか、使い続けていたら)


 ある日、今までなかった項目が、

当たり前のように表示されるようになった。


 誰かに何かを教わったわけじゃない。

 ただ、気づいたら“見えるようになっていた”。


 そのとき、周りに聞いた覚えがある。


「これって……俺だけですか?」


 返ってきたのは、

大したことでもないような反応だった。


 ――使い込めば、そうなる。

 ――段階が一つ上がっただけだ。


(……ああ、そういうものか)


 数字の意味も、理屈も、

その時は深く考えなかった。


 鑑定の後ろにつく数字は、

魔法が強くなった証じゃない。


 どこまで“見えるか”の話だった。

 たしか、そんな説明だった気がする。


 あの頃の自分は、

属性魔法なんて持っていなかった。


 火も水も、風も土も。

 特別な力は、何一つない。


 使っていたのは、

狩人として必要な魔法だけ。

 

 生活魔法。

 身体魔法。

 認識魔法。


自然に最後に表示されている異質な文字列【GIFTスキル(非公開)】に目がいく


最初に目に入ったのは――

道具融合ツール・インテグレーション》。

何気なく文字に触れてみる。すると

道具に魔力を流し込み、

修繕/耐久回復/性能の微調整 を行うスキル。

戦闘・探索いずれにも応用可能。

と大まかな情報が頭に思い浮かぶ。具体的な方向性は教えてくれそうだ。

戦闘から生活まで、あらゆる場面で“かゆいところに手が届く”タイプの能力。


その次に《残響知識レミナント・メモリー》を続いて確認する。

すると現代の知識の断片が、思考の隙間からひらめくスキル。

あくまで“点”での知識補助であるがの注意点をそえて補足説明が入る。

この世界の不便を埋めるには十分すぎるほど頼もしい。


そして最後に――

最後の一行だけ、黒いノイズのように揺らぎ、

まるで“表示する権限が不足している”かのように読めない。


そしてルーファウスがその行を凝視し、手で確認した瞬間――

薄い警告表示が浮かび上がる。


【解放条件未達】

 ※一定レベル到達まで閲覧不可


「まあ……見えないなら仕方ないか。」


そう言ってスキル欄から視線を外す。


ステータス表示を閉じると、森の涼しい空気が肌に戻ってきた。


「よし。最低限、わかる範囲ではあるが自分が何者かだけは把握できた」


スキルのことは誰にも話さない。

この世界でスキル持ちはごく一部で、特に読めなくても現時点で2つ読めないものを加えると3つも

あるのは異常すぎる。

不用意に知られれば、面倒どころでは済まない。


ルーファウスはステータス画面を閉じ、森の静けさに耳を澄ませた。


「次は……装備の確認。それから街を目指す」



次に装備の確認だ。


腰に下げた革袋を外し、中身を一つずつ指先で触れて確かめる。

指に宿る微かな感覚の鋭さは、融合後のものだと直感的に理解した。


「……水袋、干し肉、火打石……小型ナイフ。回復ポーション最低限は揃ってるな」


森を抜けるには決して心強いとは言えない装備。

だが狩猟暮らしをしてきた身体と経験が、恐怖の代わりに冷静さを育てていた。


ルーファウスは最後に腰のロングソードを抜き、重さとバランスを確かめる。

新しい自分の体に、刃の長さや重さがきちんと馴染むか――。


「……悪くない。これなら、いける」


小さく呟き、剣を戻す。


ルーファウスは近くの倒木に登り、周囲を見回した。

木々の高さ、葉の色、苔のつき方――

狩猟生活で培った感覚が、自然と働く。


「北側は日差しが柔らかい……こっちが南。

風向きは……この森は谷を抜ける風が多いな」


視界の向こうに、わずかに地形が低く落ち込む場所がある。

水が流れ、獣道が生まれ、街道に繋がる可能性が高い方角。


「……まずはあの低地だ。人の痕跡があれば街に繋がる」


冷静に判断しながらも、胸の奥では静かなざわつきが続いていた。

融合の影響で曖昧になった記憶たちが、光と影のように揺れている。


小さく呟いた声が森に吸い込まれ、

彼の異世界での新たな一歩が、静かに始まった。


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― 新着の感想 ―
鑑定やスキルの成長が「使い続けた結果」として描かれているのが説得力ありました。 転生の特別感と、狩人としての積み重ねが自然に噛み合っていて読みやすかったです。
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