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警告の先、想定外⑦

 森を抜け、石畳が見えたとき、ようやく肩の力が抜けた。


 門はまだ閉じられていない。

 夕刻前――空の色が、昼と夜の境目に差しかかる頃だ。


 門の前には、いつもの二人の門番。確かガイウスとエルン。

 見慣れた姿に声をかけようとして――ルーファウスは、足を止めた。


(……待て)


 まず、自分を見る。


 肩口。

 切り傷は浅い。血ももう止まっている。


 胸元。

 鎧の下で鈍い痛みは残っているが、致命的な損傷はない。


 脚。

 切り傷は回復している、引きずるほどではない。


 呼吸。

 魔力の巡り。

 異常なし。


(……違和感は、ない)


 ようやく、顔を上げる。


「お疲れさまです」


 以前と同じ、少し抑えた声。

 門番の一人が気づき、目を細めた。


「お、あんたか。今日は早いな」

「森の方は、特に問題なし?」


 ――自然だ。

 余計な詮索も、疑念もない。


「ええ。大丈夫でした。まあ少し、採取を」


 それだけで十分だった。


 門をくぐり、街へ戻る。

 人の気配と、生活の音が、ゆっくりと身体に戻ってくる。


 ギルドは、いつも通りのざわめきに包まれていた。


 受付に立つ、ミレーネが、顔を上げる。


「あ、ルーファウスさん。お帰りなさい」


 その声に、わずかに救われる。


「ただいま。これを」

 ルーファウスは、

 腰の革袋とは別に、肩から下げていた採集用の革袋を外し、

 カウンターに中身をまとめて出した。

 

 保存状態は良好。数量も問題ない。

 魔力草が、乾いた音を立てて転がる。


 ミレーネは一つずつ手際よく確認し、

 傷みや欠けがないことを確かめてから頷いた。


 「保存状態もいいですね。……四十本。すごいですね。群生地でも見つけられましたか。」

  

 「ええ、まあそんなとこです。」

  正直そんなものは見つけていない。ただ夢中で気づかない間に北へ移動して作業をしていた

  とはいえない。


 「確かに。こちらで納品、受け取りますね」

 「一本、銅貨五枚。ですので――銀貨二十枚になります」

  銀貨が、静かに並べられる。


 一拍置いて、視線がわずかに泳ぐ。


「……あの、森で何か――」


 質問が来るのは、分かっていた。


 だが、今日は。


「すみません。その話は、また今度で」


 自分でも驚くほど、穏やかな声だった。


「今日は、少し疲れました」


 ミレーネは一瞬だけ考え、すぐに微笑む。


「そうですね。無理は禁物です。」

「また、落ち着いたら聞かせてください」


 それ以上、踏み込んではこなかった。


 手続きを終え、報酬を受け取る。


 数字を見て、心が動くことはない。


 ギルドを出ると、街路は夕暮れに染まり始めていた。


 宿屋へ向かう足取りは、重いが、乱れてはいない。


 考えるべきことも、多い。


 ギルドを出て、宿屋の扉を押す。


 夕方前の時間帯。

 中はまだ静かで、客もまばらだった。


 カウンターの主人に軽く会釈し、鍵を受け取る。

 余計な会話はしない。


 階段を上がり、部屋へ。


 扉を閉め――

 内側から、確かに鍵をかける。


 ……ここでようやく、完全に一人だ。

 

 「《クリーンアップ》」

 淡い魔力が広がり、汚れが剥がれ落ちる。

 布が軽くなり、肌のべたつきも消える。


 まず、装備を外す。

 剣を壁際に立てかけ、鎧と防具を順に外していく。

 (……見た目は、完璧だな)


 だが、だからこそ違和感が残る。


 刃に走った衝撃。

 防具越しに受けた重さ。

 あの横薙ぎの一撃。


(内部の歪みまでは、分からないか)


 軽く剣を手に取り、角度を変えて眺める。

 刃は真っ直ぐ。欠けもない。


 ――それでも。


(明日、ちゃんと確認しよう)


 見えない疲労は、後から牙を剥く。


 ベッドに腰を下ろし、息を吐く。


 そこで、ようやく気づいた。


(……ポーション)


 腰のポーチを探る。

 空だ。


 予備もない。

 魔力回復系は、最初から持っていなかった。


(完全に、尽きてたな)


 あの戦い。

 余裕があったわけじゃない。


 それどころか――


(あの魔物が何者かは知らないが、北側はCランクが出るって、聞いてたよな)


 分かっていた。

 それでも、深く調べなかった。


 魔物の詳細。

 生態。

 対処法。


(……全部、甘かった)


 剣を一本だけしか持っていなかったことも、今さらだ。


(折れてたら、終わってた)


 考えただけで、背筋が冷える。


 予備の剣。

 消耗品。

 魔力回復手段。


 どれも欠けていた。


(準備不足だ)


 言い訳はできない。

 生きて戻れたのは、運が良かっただけだ。


 ベッドに背を預け、天井を見る。


(明日は……)


 頭の中で、順に整理する。


 まず、朝の鍛錬。

 身体と剣の感覚を確かめる。


 ギルドに行ってから森狼の素材を確認して

 森で解体する。それから街に出て――

 必要な物資を補充。


 ポーション。

 予備武器。

 可能なら、防具の点検。

 揃えたら完全に赤字だ。

 

(魔物の情報も、わかる範囲でちゃんと調べる)


 ざっくりでいい。

 だが、知らないまま森に入るのは、もうやめる。


 静かな部屋。

 外は、夕暮れに近い。


それから起き上がり――

 意識を内側へ向けた。

「──ステータス・オープン」


 ステータスを、開く。

==========

◆ステータス(非表示)

名前:ルーファウス

年齢:18

種族:人族(転生者)

レベル:15


【能力値】

HP:268

MP:232

筋力:97

敏捷:94

耐久:89

器用:120

知力:129

魔力:114

運:102


【戦闘スキル】

剣術(3)

受け流し(2)

弓術(1)


【魔法スキル】

■ 属性魔法(Elemental)※全属性魔法(無詠唱)

 火/水/風/土/光/闇

《フレイム(1)》

《ウォーターボルト(1)》

《エアスラッシュ(1)》

《ストーンショット(1)》

《フラッシュ(1)》

《シェイド(1)》


■ 生活魔法

《クリーンアップ(3)》

《スパーク(1)》

《ウォーター(2)》

《ブリーズ(1)》

《ソイルフォーム(1)》

《ライト(1)》

《ダークネス(1)》


■ 身体干渉魔法

《身体能力向上(5)》

《ヒール(1)》 


■ 認識魔法

《鑑定(2)》

《気配察知(1)》

《危険察知(1)》


【GIFTスキル(非公開)】

▼《道具融合ツール・インテグレーション》

■《道具融合:戦闘補助系》(非公開) 武器・防具・道具へ魔力を流し込み、

刃の切れ味上昇、硬度強化、付与などを行う戦闘特化スキル。 剣に魔力スキルを宿して

切れ味を増したり、 短時間だけ軽量化するなど、臨機応変な戦術が可能。

■《道具融合:探索系》(非公開) 魔力を流し込むことで、探索・生活に有用な道具を生成・取得

 し、保管する特殊能力。機能は二種類あり、道具生成(ランダム形式)と便利ボックス※別名

 アイテムBOXの保管能力を備える。

 なお生成物は使用者の知識・経験に基づいて選ばれる。「意図しないが、必要そうなものが出る」

 ※魔力を使用するがスキル扱いになるのでMPは消費しない

■《残響知識レミナント・メモリー》

風間真の生きてきた現代の記憶から断片的に現代知識が“閃き”としてよみがえるスキル。

また、鑑定などで得た“断片的な情報”に対してのみ反応し、引き出された情報を“解釈する”

(不安定・条件付き)現代の知識体系に当てはめて理解を補助するスキルである。

■《■■■■■■■■(????????)》


==========


数字が並ぶ。


 そして、はっきりと分かる変化。


(……二つ、上がってる)


 レベルアップ。


 しかも、一度ではない。

 思い出す。

 あの木の魔物の存在感。

 

 倒した後でレベルアップ前に残ったMPは体感でおそらく多くて20~30くらいと思う

 枯渇はなかったがギリギリだった。


 (スキルアップの条件と狩場に行く際の朝のMPの使用限界の目安も考えておかないと。)

 

 再びベッドに背を預け、天井を見上げる。


 外は、もうすぐ夕暮れだ。


(今日は、休む)


 考えるのは、明日。

 問い直すのも、明日。


 今は――

 生きて戻れた、それだけで十分だ。


 それが、この世界で生き残るための、正しい選択だと――

 ルーファウスは、ようやく理解し始めていた。

 

 ルーファウスは静かに目を閉じ、

 明日の段取りを、頭の中でもう一度なぞった。


 

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