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警告の先、想定外⑤

 空中。


 跳ね上がった触手の数を、瞬間的に数える。


(……六)


 地面から伸びるものとは別だ。

 今、空中にある“攻撃中の触手”は六本。


 ――足元が、沈む。

 少し下がり、先ほど試した

 「《ソイルフォーム》」を唱える。


 地面がわずかに盛り上がり、足場が整う。


 周囲の地面はもはや安定していない。


(踏み込むなら、今しかない)


 息を吸い、吐く。


 瞬間的に身体強化を重ねる。


 足裏に、力が集まる。


 踏み込み。本体よりわずかにそれた影が集まる方へ向かう。

 目指している場所にむけて

 「《ソイルフォーム》」を唱えた瞬間。


 ――同時に、触手が来る。


 横薙ぎ。

 叩きつけ。

 空を切る音。


 剣で弾き、かわす。


 金属音と破砕音が重なる、その一瞬。


「――ここだ」


 強化を、切らない。


 かわし続けながら、低く詠唱。


「《シェイド》」


 影が、濃くなる。


 輪郭が、滲む。


 存在感が――一瞬、抜け落ちた。


 触手の動きが、止まる。


(……効いた!)

 

 相手がわずかに自分への認識が外れた隙をつき

 一直線に懐へ

 即座に、剣へ意識を集中。


 道具融合。


 刃に、異質な重みが走る。

 切れ味が、研ぎ澄まされる。


 狙いは一本。


 触手の根元――

 だが、それはただの幹ではない。


 無数の根を束ね、

 魔力が脈打つ“中枢に最も近い部分”。


 勢いのまま剣を振るう。


 だが、刃はすぐには通らない。


 ――硬い。


 木ではない。

 生き物の、拒絶する感触。


「……っ」


 歯を食いしばり、

 道具融合の力を、さらに刃へ流し込む。


「うおおおおおおおおおおおおおお」

 押し切る。


 繊維が、悲鳴を上げるように軋む。


 次の瞬間。


 ――ズン、と鈍い衝撃が腕を打ち返した。


 斬ったのではない。

 叩き割った。


 幹が裂け、

 内部から濁った魔力が噴き出す。


 根の動きが、目に見えて乱れた。


 確信が、背筋を貫く。


 横一閃。


 繊維を断ち、

 抵抗を押し切る。


 ――ズン、と鈍い衝撃。


 幹が、裂けた。


(……まだだ)


 思い出す。


 ボーンラビット。

 核を壊さなければ、止まらなかった。


(あいつは、“一点”を潰さない限り動き続けた)


 なら――


(こいつにも、あるはずだ)


 命そのものじゃない。

 だが、動きを支えている“何か”。


 距離を取らず、連打。

「《エアスラッシュ》」


 不可視の刃が、上から落ちる。


 ズン、と重い音。


 樹皮が裂け、

 幹に一直線の切り目が刻まれた。


 間髪入れず。


「《フレイム》」


 火が、切れ目に流れ込む。


 焼ける音。

 湿った木質が、内側から爆ぜる。


 触手が一斉に、荒れる。


(今しかない)

 剣を、縦に構える。


 道具融合を、刃に重ねる。


 切る――のではない。


 叩き潰す


 切り目に、真っ直ぐ。


 全体重を、刃に預ける。


 真上から、振り下ろす。


 ――ガンッ。


 硬い反発。


 だが次の瞬間。


 ミシ、と嫌な音が内部から走る。


(……崩れる)


 もう一度。


 同じ軌道で、振り下ろす。


 ――断裂。


 裂け目が、一気に広がり。


 幹の内部で、

 何かが耐え切れず、潰れた。


 重い手応え。

 そして、内側で何かが砕ける感触。


 刃が、深く通った。


 中枢を、貫いた。


 次の瞬間。


 絡みついていた根が、力を失う。


 地面を走っていた緊張が、

 嘘のように消えた。


 ……しばらくして。


 森に、音が戻る。


 風の擦れる音。

 葉の揺れる音。


 完全な沈黙が、

 ようやく――戻ってきた。


 


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