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警告の先、想定外④

 距離は、近い。


 逃げ回っていた頃とは違う。

 根の密度、地面の盛り上がり、空気の重さ――

 すべてが、はっきりと“中心”を示している。


(……ここまで来ると)


 触手は、確かにまだ動いている。

 だが、外縁で暴れていたときのような無秩序さはない。


 長い根と大きな木の枝は数を絞られ、

 太いものだけが、明確な意図をもって動いている。


(そうか、近くにくると触手は根と枝がある。しかも太い)


 それだけで、背筋が冷えた。


 物量が減ったのではない。

 「選別された攻撃」になっただけだ。


 剣を構え直す。


(この距離で、致命傷になるのは――)


 一瞬、頭をよぎったのは触手だった。

 叩き潰す。

 絡め取る。

 締め上げる。


 だが、違う。


(……違うな)


 触手は“攻撃手段”だ。

 本当にまずいのは――


 地面そのものが、物理的、精神的に障害になること。


 その考えに至った瞬間だった。


 ――ず、と。


 足元の土が、わずかに沈んだ。


(っ……!?)


 跳ねるように後退する。


 直後に触手での上からの攻撃、

 さっきまで立っていた場所に的確に。

 瞬間、背中に、冷たいものが走る。


 立っていた場所が、死地になる。


 視線を落とす。

 その理解が、腹の底に落ちた瞬間――


 地面の奥から、

 低く、重い振動が伝わってきた。


 今度は、さっきよりも明確だ


 地表は一見、ただの森の地面だ。

 だがよく見ると――

 すべてが、罠の候補だった。

 (……地面が、信用できない)


 足場そのものが、敵だ。

 

 間がほしい。落ち着いて考える時間も

 だが格上相手では間をあたえるのは良策ではない。

 受け身になるな! 


 賭けにはなるが策はある。

 最善は何もやらせない事。

 

 

 その前に試さなければならない。

 ルーファウスは覚悟を決める。

 

 「《ソイルフォーム》」

 地面がわずかに盛り上がり、足場が整う。

 次の瞬間。


 太い触手が、横薙ぎに振るわれた。


 速度はない。

 だが――質量が異常だ。


(受けるしかない)


 身体強化をかけて剣を両手で構え、踏ん張る。


 ――ガンッ!!


 衝撃が、腕を叩き潰す。


 足が、地面にめり込む。

 膝が、悲鳴を上げる。


「ぐっ……!」


 押し返される。

 このままでは、体勢が崩れる。


(……切れる)


 刃を、滑らせるように押し当てる。


 真正面から叩くのではない。

 繊維の流れに沿って、斜めに。


 ズズッ……


 嫌な感触。

 だが、刃は入った。


 ――ブツン。


 太い触手が、途中で断ち切られる。


 重い音を立てて、地面に落ちた。


(……切断、可能)


 確信が、胸に落ちる。


 だが、安堵は一瞬。


 別の触手が、即座に襲ってくる。


 右、左、上。


 数で押す。


 剣を振るう。

 一閃、二閃。


 切れる。

 だが――遅い。


 一本切れば、一本来る。

 体力が、削られていく。


(……補助が要る)


 短く、詠唱。


「《エアスラッシュ》」


 不可視の刃が走る。


 狙いは本体ではない。

 触手の付け根と、交差点。


 ――ズバッ。


 細い触手が、まとめて裂ける。


 攻撃が、一瞬だけ疎になる。


(今だ)


 その隙に、前へ。


 再び、太い触手。


 今度は、突き。


 剣で受け、流し、切る。


 ――二本目の太い触手が、落ちる。


 だが。


 断面が、蠢いた。


 完全な再生ではない。

 だが、地面の奥へ引きずり戻されていく。


(……戻るのか)


 切断は、無意味ではない。

 だが、終わりでもない。


 息が、荒い。

 腕が、重い。


 それでも――


(……一度は、通用した)


 剣で、受け。

 剣で、切り。

 魔法で、数を減らす。


 この距離でも、何とか戦える。


 だが同時に、理解する。


(理解はしていたが……長くは、もたない)


 今のは、

 “一度だけ”受けきれた攻防だ。


 次も同じことができる保証は、ない。


 ルーファウスは、歯を食いしばり――

さらに一歩、踏み込んだ。






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