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警告の先、想定外①

魔力草の採集は順調だった。


根を傷つけないよう慎重に掘り、湿った布で包んで革袋へ。

革袋いっぱいになった。そう判断した時点で、引き返すつもりだった。


「……もう十分だな」


独り言のように呟き、来た道へ向きを変える。


その直後だった。

魔物が急に接近する気配を感じた。


すぐに気配察知を唱える。


気配察知に、一つ目の反応。


距離は近い。

数は一。

獣型――だが、魔力反応が強くはない。


「F……いや、Eか」


足を止めず、位置だけを把握する。

避けられる距離。問題ない。


だが。


二つ目の反応が、横から割り込んだ。


「――っ」


瞬時に身体強化を“入れる”。


踏み込み、木の影へ。

低木を突き破って現れたのは、牙の欠けた森狼だった。


「ちっ……!」


剣を抜く。

魔力は使わない。

一太刀で終わらせる判断。


首元へ斜めに――

骨に当たる感触。即座に引く。


倒れた。


息を整える間もなく、三つ目。


「複数!群れか。くそ」


舌打ち。


今度は二体。

連携はない。だが数が増えれば消耗が嵩む。


ここで、水属性魔法を一発。


ウォーターボルト。


一体を倒し、もう一体は剣で。


――終わった。


はずだった。

森狼との連戦を終えた直後だった。


剣を収め、呼吸を整えながら周囲を確認する。

気配察知――反応は、ない。


(……一度、戻るか。いや、なんだ、倒したことよりも違和感!?

 やけにあっけなすぎた。

 群れで獲物を狙う感じじゃなかった。もしかして

 逃げていたのか?何から!!)


そう判断した瞬間、足元の感覚が狂った。


「――っ!?」


地面が“ずれた”。


否。

地面に見えていたものが、浮き上がった。


樹皮と苔に覆われた根が、横薙ぎに振るわれる。

反射的に身体強化を入れ、後方へ跳ぶ。


遅れて、衝撃音。

さっきまで立っていた場所の木が、へし折れていた。


「……森と、同化してやがる」


視線を走らせる。

魔力反応の一番濃いところで蠢く不気味な影。二足歩行?、巨躯?遠くて認識できない。

魔力反応は――ある。だが、散っている。


(気配察知が、効かない……?)


正確には、効いているのに判別できない。

森全体がざわついているように感じるだけだ。

一番大きな反応に注意を傾けようとした瞬間

地面が“持ち上がった”。


反射的に跳ぶ。


遅れて、空気が裂ける音。


着地と同時に、背筋に冷たいものが走る。


「《鑑定》」


視界が一瞬、曇る。


……何も、出ない。


(……?)


以前――ボーンラビットの時は、

詳細な情報が即座に流れ込んできた。


だが今回は、沈黙。


その違和感を認識した瞬間だった。


じわり、と。


汗が滲む。


気配察知で認識する魔力感知に映る“量”が、

明らかにおかしい。


一点だけではない。

森全体に、薄く、重く、広がっている。


「……《危険察知》」


半信半疑で唱える。


次の瞬間。


――警告。


言葉ではない。

感覚が、直接叩きつけられる。


(……っ!?)


心臓が跳ねる。


以前、何度か使ったが、

一度も反応しなかったスキル。


それが、今は――


(……これ、逃げれるのか。いや

 仮に逃げれるとしても逃げ道を間違えたら、死ぬ)


――まず、落ち着け。


一度、意識的に息を吸う。

肺の奥まで空気を入れ、ゆっくりと吐く。


(……大丈夫だ。まだ、余裕はある)


心拍が速い。

だが、制御できないほどじゃない。


恐怖を無理に消そうとしない。

認識したまま、押さえ込む。


――今やるべきは、感情じゃない。判断だ。


視界の端で、樹影鬼の触手がわずかに動く。

すぐには来ない。来られない、のかもしれない。


(仮定だ……)


少し前の戦闘を思い返す。

森狼。


あれが、もし――

追われていた原因が、こいつだったとしたら。


(スピードは……対応できる)


森狼は速かった。

だが、あれを視認し、迎撃できた。


つまり、純粋な速度だけなら問題ない。


注意すべきは、別だ。


視線を下げる。


地表。

根。


いや、触手だ。


地面と同化したそれが、

間合いに入ること自体を拒絶している。


(これの正体が正確にわからない限り、近接は無理だな)


踏み込めば、絡め取られる。

跳べば、下から来る。


本体がおそらく遠目に見える位置にいる以上、剣の距離に持ち込めない。


「……なら」


選択肢は、自然と一つに絞られる。


遠距離。

しかも――


長期戦になる可能性がある。


消耗戦で不利になるのは、こちらだ。


だからこそ、

まずは反応を見る。


思考を切り替える。


――火がどうとか、森がどうとか、今は関係ない。

――命が、かかっている。


火が効くなら、それが正解だ。


「《フレイム》」


小さな火球が生まれ、

弧を描いて前方へ。


次の瞬間、地面で弾けた。


ぼっ、と乾いた音。


威力は低い。

だが、着火と牽制には十分。


――重要なのは、結果だ。


燃えるか。

避けるか。


樹影鬼の触手の動きに、

ルーファウスは全神経を集中させた。


(……見せろ)


これは攻撃じゃない。

問いかけだ。


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