森の外れにて③(──静かな小空き地)
ルーファウスは森の奥へ数十歩ほど進んだ。
地形は緩やか。視界も悪くない。
しばらくしてゆっくりと歩みを止め意識を広げた。
「《気配察知》」
MP:119 → 117
音でも視線でもない。
自分を中心に、円を描くように感覚が広がる。
半径二十メートル。
その範囲に――
(……二つ)
「MP残量を考えると悩みどころだな。ただ、森の入り口に近いのでとりあえず確認してみるか。」
一つは動かない。
地表付近。薄く、滲むような反応。
もう一つは、断続的に動く。
跳ねるような感覚。
ステータス画面は開いたまま
まず、動かない反応へ。
距離を詰めても、位置は変わらない。
(罠じゃないよな)
そこで初めて、立ち止まり、視線を落とす。
「《鑑定》」
MP:117→ 113
《リーファ草(未加工)》
・微弱な水属性
・毒性なし
・止血・解熱系の基礎素材
・鮮度:良好・毒性なし
・薬草素材
「これって魔力に反応しているのか。」
(……鑑定の内容自体は、以前の感覚と変わらない)
名前、性質、危険性の有無。
本来なら、それだけのはずだ。
それなのに。
(止血、解熱……?
いや、鑑定が教えているわけじゃない)
表示された情報を見た瞬間、
頭の奥で、知識が勝手に噛み合っていく。
(これは……残響知識か)
鑑定で“拾えた断片”に、
過去の知識が後追いで意味を与えているだけ。
(知らない草だ。
だが、鑑定が示す性質は、理解できる)
名称や由来じゃない。
作用の“方向”だけが、過去の知識と噛み合っている。
新しく何かを見ているわけじゃない。
(万能じゃない。
現代の知識で“置き換えられるもの”だけだ)
数本を採取し、袋へ。
その直後、
もう一つの反応が――動いた。
半径二十メートルの円の縁で、跳躍。
(こっちに来てるな)
動く気配。
距離が、縮まる。
ルーファウスは木の幹に身を寄せ、半身になる。
視線を走らせ――
白い骨の影を捉えた。
(うさぎ??)
ここで、初めて対象を絞る。
「《鑑定》」
MP:113→ 109
《ボーンラビット》
・不死系・小型
・跳躍特化
・攻撃手段:爪・体当たり
・魔力反応:低・跳躍主体
・核:破壊により機能停止
(核か。…)
鑑定は、対象に
触れない。干渉しない。
だから、悟られない。
剣に手をかける。
「《危険察知》」
MP:109→ 108
「発動はしたよな。ただ反応がない」
《危険察知》は、沈黙したままだ。
(――やれる)
距離、約十数メートル。
狩人として、
最も慣れた間合い。
ステータス画面を意識しつつも
ルーファウスは、静かに相手が気づくように踏み込んだ。
ボーンラビットがその存在に気づく。
白い骨の影が、地を蹴った。
魔物が距離を詰めてきた瞬間。
「──《身体強化》」
一気にではない。ほんの一拍だけ。
踏み込みが鋭くなる。
地面を蹴る力が、普段より明確に伝わった。
MP:109→ 108
(……速い)
横薙ぎ。
だが、深追いはしない。
魔物が跳ねる。
その瞬間だけ、再び。
「《身体強化》」
今度は腕。
剣の軌道がぶれず、重さを感じさせない。
振るためじゃない。
“止めない”ため――刃を逃がさないように、そこだけを強化する。
MP:108→ 107
鈍い音。
魔物が弾かれ、体勢を崩す。
斬り伏せたはずの骨が、再び軋む。
(……やっぱり、核か)
鑑定は“核がある”としか示していなかった。
場所までは、教えてくれない。
跳ねる。
身をひねる。
そのたびに、胴体の中心だけがわずかに遅れる。
「なるほど。試してみるか。」
(常時じゃない……必要な瞬間だけためす)
これは、狩人時代に身につけた感覚そのものだった。
全力で走り続けるのではない。
必要な瞬間に、力を上げる。
距離を取り、様子を見る。
魔物が再び突っ込んでくる。
今度は足。
逃げではない。
踏み替えと回避――そこだけを強化する。
「《身体強化》」
半歩だけ、位置をずらす。
攻撃は空を切った。
MP:107 → 106
(消費は軽い……だが、積み重なるな)
ここで、魔法を一つ試す。
「《エアスラッシュ》」
風の刃が走り、魔物の動きを止める。
MP:106→ 98
止まった隙に、踏み込む。
最後は、強化なし。
狩人として培った、素の一撃。
(そこだ)
核を断つ。
剣が振り抜かれ、白い骨が、音もなく崩れた。
(骨の集合体……中枢が一つ。
構造としては、単純だ)
理解は、あとから追いついてくる。
しばらく、その場で呼吸を整える。
(身体強化を刻んで……三回。……五回程度か。長時間の戦闘には向かない。
だが――短期決戦。狩り。逃走。この使い方なら、十分だ)
「あとは…《危険察知》」
MP:98→ 97
――反応なし。
「やっぱりな」
魔力の減りを確かめながら、ルーファウスは息を吐いた。
(これは“探す”魔法じゃない。
引っかかるのを、待つタイプだ)
反応がないということは――
少なくとも、今の自分が即死するような危険は、近くにない。
「……反応したら、相当やばいってことか」
その事実を、頭の片隅に刻む。
剣を拭い、鞘に収める。
まだ粗はある。
だが、方向性は間違っていない。魔力の減りを意識する。
魔物を倒し、周囲を警戒しながら歩いていた。
緊張が、完全に解けたわけじゃない。
だが――戻るだけ、という判断が、意識を一段落とした。
次の一歩で、足元がわずかに沈む。
「……っ」
踏みとどまった瞬間、脛に遅れて痛みが来た。
見ると、皮鎧の隙間から血がにじんでいる。
(浅い……が、放っておくと厄介だな)
狩人としての判断だった。
この程度の傷で動けなくなることはない。
だが、長時間の行動には確実に影響する。
腰のポーチに手を伸ばしかけて、止める。
(ポーションは……ある)
だが、今日は違う。
ルーファウスは《初級魔法大全》を思い出し、ページを開いた。後ろの方。
戦闘魔法とは明らかに違う、静かな記述。
回復系・初級魔法
《ヒール》
「──ステータス・オープン」
視界に半透明の情報板が広がる。
「……《ヒール》」
魔力を流した瞬間、脛の内側がぬるくなる。
撫でられているような、だが確実に深部へ届く熱。
(……これは)
傷口そのものより、周囲が先に落ち着いていく。
血が止まり、痛みが引く。
――塞いだ、というより。
身体が「戻ろうとしている」のを、後ろから押された感覚。
(……身体強化と、似てるな
属性を使っている感じが、しない。
……いや、表に出てこないだけか)
MP:97 → 85
(……来るな)
胸の奥が、わずかに空洞になる。
息が一拍、深くなる。
魔力が“減った”というより、
身体の中の余裕が削られた感覚だった。
視線を落とす。
血は止まり、傷口は塞がっている。
だが、完全に元通り――というわけではない。
(動ける。だが、全快ではないな)
軽く足に体重をかけてみる。
違和感は残るが、痛みは許容範囲だ。
「なるほど……」
ポーションとの違いが、感覚的に理解できた。
ポーションは、外から足す。
ヒールは、内側を無理に動かす。
(そりゃ、重いわけだ)
だが、魔法は“その場で使える”
(使いどころを選ぶ、か)
もし戦闘中だったら。
この消費量は致命的になりかねない。
ルーファウスはポーチからポーションを一本取り出し、確かめる。
ポーションを飲むと、さっきまで残っていた違和感が、
嘘のように引いていった。
(やっぱり、基本はこっちだな)
回復魔法は、切り札。
あるいは、ポーションが尽きたときの保険。
立ち上がり、軽く足を動かす。
「……悪くない」
初めて使った回復魔法。
万能ではない。
だが、確実に“使える選択肢”だった。
「……増えたな。
項目も、できることも。
全部が分かったわけじゃないが――
少なくとも、何が武器になるかは見えてきた。」
剣を持ち直し、森の出口の方角を見る。
(今日は、ここまでだ)
これ以上は深入りしない。
理解できたことだけで、十分な収穫だ。
ルーファウスはそう判断し、静かに森を後にした。
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◆ステータス(非表示)
名前:ルーファウス
年齢:18
種族:人族(転生者)
レベル:13
【能力値】
HP:214
MP: 85
筋力:87
敏捷:84
耐久:80
器用:107
知力:115
魔力:100
運:92
【戦闘スキル】
剣術(3)
受け流し(2)
弓術(1)
【魔法スキル】
■ 属性魔法(Elemental)※全属性魔法(無詠唱)
火/水/風/土/光/闇
《フレイム(1)》
《ウォーターボルト(1)》
《エアスラッシュ(1)》
《ストーンショット(1)》
《フラッシュ(1)》
《シェイド(1)》
■ 生活魔法
《クリーンアップ(3)》
《スパーク(1)》
《ウォーター(1)》
《ブリーズ(1)》
《ソイルフォーム(1)》
《ライト(1)》
《ダークネス(1)》
■ 身体干渉魔法
《身体能力向上(5)》
《ヒール(1)》
■ 認識魔法
《鑑定(2)》
《気配察知(1)》
《危険察知(1)》
【GIFTスキル(非公開)】
▼《道具融合ツール・インテグレーション》
■《道具融合:戦闘補助系》(非公開) 武器・防具・道具へ魔力を流し込み、
刃の切れ味上昇、硬度強化、付与などを行う戦闘特化スキル。 剣に魔力を宿して
切れ味を増したり、 短時間だけ軽量化するなど、臨機応変な戦術が可能。
■《道具融合:探索系》(非公開) 魔力を流し込むことで、探索・生活に有用な道具を生成・取得
し、保管する特殊能力。機能は二種類あり、道具生成(ランダム形式)と便利ボックス※別名
アイテムBOXの保管能力を備える。
なお生成物は使用者の知識・経験に基づいて選ばれる。「意図しないが、必要そうなものが出る」
※魔力を使用するがスキル扱いになるのでMPは消費しない
■《残響知識レミナント・メモリー》
風間真の生きてきた現代の記憶から断片的に現代知識が“閃き”としてよみがえるスキル。
また、鑑定などで得た“断片的な情報”に対してのみ反応し、引き出された情報を“解釈する”
(不安定・条件付き)現代の知識体系に当てはめて理解を補助するスキルである。
■《■■■■■■■■(????????)》
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