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森の外れにて①(──静かな小空き地)

 ギルド登録を済ませたルーファウスは、朝のうちに街を出て森の入口近くの小空き地へ向かった。

「……とりあえず、ギルド登録も完了したし、今日は少し整理する必要があるな」


 人目のない場所で、自分の力をもう一度確かめるつもりだ。


 初戦では咄嗟に身体を守るために魔力を巡らせ、《身体能力向上》が働いた――

この世界のルーファウスの習慣が助けてくれた形だ。だがあのときは混乱していて、消費や持続の把握

はできなかったし、そのへんの記憶も曖昧だ。

 転生前の狩人経験が基礎になっているため動き自体は馴染みやすいが、魔力量そのものは元々多くないと潜在的に何故か強烈に感じる。だからこそ“効率”が重要になる。


 周囲に人影がないことを確認して、ルーファウスは静かに口を開いた。


「──ステータス・オープン」


 視界に半透明の情報板が広がる。

==========

◆ステータス(非表示)


名前:ルーファウス

年齢:18

種族:人族(転生者)

レベル:13


【能力値】

HP:214

MP:198

筋力:87

敏捷:84

耐久:80

器用:107

知力:115

魔力:100

運:92


【戦闘スキル】

剣術(3)

受け流し(2)

弓術(1)


【魔法スキル】

■ 属性魔法(Elemental)※全属性魔法(無詠唱)

 火/水/風/土/光/闇


■ 生活魔法

《クリーンアップ(3)》


■ 身体魔法

《身体能力向上(5)》


■ 認識魔法

《鑑定(2)》

《気配察知(1)》

《危険察知(1)》


【GIFTスキル(非公開)】

■《道具融合ツール・インテグレーション

■《残響知識レミナント・メモリー

■《■■■■■■■■(????????)》


==========

ギルドを出る前、

 ルーファウスは受付で一冊の本を受け取っていた。


『初級魔法大全──生活魔法と基礎属性①』


  分厚くはない。

 だが、紙質は良く、簡単に刷られたものではないと分かる。

 図解が多く、実用性を重視した構成だ。


「……これ、借りられますか?」


 ギルドカウンターでそう尋ねると、

 受付嬢は一瞬だけ、本とルーファウスの顔を見比べた。


「貸し出し用ではありますけど……」


 そう前置きしてから、言葉を続ける。


「数は多くありません。

 森に入る前の確認用として、短時間だけですよ」


 彼女は本を差し出す前に、念を押すように言った。


「濡らさない、破らない、書き込み禁止。

 もし紛失した場合は、弁償になります」


 淡々とした口調だが、本気だ。


「詠唱は、声に出して行うものです。

でも、“何を起こそうとしているのか”を分かっていないと、

魔法は言うことを聞いてくれません」


「分かりました」


 そう答えて受け取り、

 ルーファウスは森の中で慎重に本を開いた。


「……よし。順番にいくか」


 借りてきた《初級魔法大全》を開き、最初の項目に指を置く。


火属性

攻撃魔法:《フレイム》


「《フレイム》」


 小さな火球が生まれ、前方の地面で弾ける。

 威力は低いが、着火と牽制には十分。


MP:198 → 190


(無詠唱想定どおりだな)


生活魔法:《スパーク》


「《スパーク》」


 指先で小さく火花が散る。

 焚き火の種火や、火口代わりに使えそうだ。


MP:190 → 187


水属性

攻撃魔法:《ウォーターボルト》


「《ウォーターボルト》」


 圧縮された水の塊が飛び、木の幹を叩いて弾ける。


MP:187 → 179


生活魔法:《ウォーター》


「《ウォーター》」


 掌に澄んだ水が溜まる。

 30秒もしないうちに、水は消える。


(出しっぱなしにはできない、か)


 悪くない制限だ。

 少し口に含んで、思わず息をついた。


「……はぁ」


 以前、持ち物の水を飲んだときは正直きつかった。

 井戸水でも、川水でもないが、どうにも舌に合わなかったのを覚えている。


「……これなら安心だな」


 狩人として、水の確保が保証されるのは大きい。


MP:179 → 174


風属性

攻撃魔法:《エアスラッシュ》


「《エアスラッシュ》」


 不可視の刃が走り、草をまとめて薙ぐ。


MP:174 → 166


(軽いが、射程がある)


生活魔法:《ブリーズ》


「《ブリーズ》」


 穏やかな風が吹き、汗を乾かす。

 匂いも流れ、夏場や焚き火後に役立ちそうだ。


MP:166 → 163


土属性

攻撃魔法:《ストーンショット》


「《ストーンショット》」


 拳大の石が跳ね、地面に食い込む。


MP:163 → 155


生活魔法:《ソイルフォーム》


「《ソイルフォーム》」


 地面がわずかに盛り上がり、足場が整う。

 簡易的な陣地構築や罠の下準備に使えそうだ。


MP:155 → 151


光属性

妨害魔法:《フラッシュ》


「《フラッシュ》」


 瞬間的な閃光。

 目を閉じても、網膜に残像が残る。


MP:151 → 142


生活魔法:《ライト》


「《ライト》」


 淡い光が浮かび、周囲を照らす。


MP:142 → 139

(維持:1MP/5分)


(完全な継続型……夜間向きだな)


闇属性

妨害魔法:《シェイド》


「《シェイド》」


 影が濃くなり、存在感が薄れる。


MP:139 → 133


生活魔法:《ダークネス》


「《ダークネス》」


 小範囲の光が鈍り、視界が落ちる。

 完全な暗闇ではないが、逃走補助には十分だ。


MP:133 → 127


 すべて確認し終え、本を閉じる。

ステータス確認を終え、意識を外す。

(数値と文字は、視界から静かに消えた。)


「……全部、使えるが一通り確認するだけでMP3割強もってかれたな」

 (とりあえず理解はできた。あとは実戦で、必要なものを選び取るしかないな。)


「次は、戦闘スキルか……」


ルーファウスは、腰のロングソードを抜いた。


そう独り言ちて、倒木に向かって剣を振る。


ただの素振り。

いつもやってきた動きの延長だ。


——だが。


「……あれ?」


剣先がぶれる前に、自然と修正が入る。

力を入れすぎると、手首が勝手に逃がす。


 ——近い。

 ——遠い。


 言葉になる前に、距離が分かる。


 どこまで踏み込めば届くか。

 逆に、どこまで下がれば触れられないか。


 考えたわけではない。

 そう感じている だけだ。


 ロングソードを抜く。


 構えた瞬間、足の位置が自然に決まった。

 重心が前に出すぎない。

 かといって、引きすぎてもいない。


 ——この距離。


 剣を振る。


 空を斬ったはずなのに、刃の軌道がぶれない。

 力を込めていないのに、刃が走る。


 身体能力向上の魔法を使った覚えはない。

 詠唱も、魔力を巡らせた感覚もない。


 それなのに。


 ずっと、こうして動いていた気がする。


 息を整え、もう一度剣を振る。

 今度は、わざと少し踏み込みを浅くした。


 刃が届かない。


 ——違う。


 次の一歩で、距離を詰める。

 今度は、ちょうどいい。


 距離を測っているつもりはない。

 測らされてもいない。


 ——分かる。


 その感覚に、ふと既視感が重なった。


 ワイルドハウンド。

 苦痛に吠えながら、無理矢理身体を起こし、

 横薙ぎに振るわれた爪。


 あのときも、剣で受け止めたつもりだった。


 だが実際には——


 正面で受けたわけではない。

 刃をわずかにずらし、角度をつけ、力を逃がしていた。


 それでも。


 腕に、鈍い衝撃は残った。


 完全ではない。

 だが、直撃ではなかった。


 (手負いですごい力だ……だが、動きはみえる)


 あのとき浮かんだ思考を、今になって反芻する。


 見えていた。

 速さではなく、来る場所 が。


 意識してやったわけではない。

 魔力を使った覚えもない。


 それでも、

 そう動けていた。


 少しだけ息を整え、

 

 ゆっくりと魔力を丹田に落とし、狩人として培った呼吸と姿勢を合わせる。

「──《身体強化》」


 魔力が四肢へじわりと行き渡り、筋肉の動きがしなやかに変化する。視界が僅かに澄み、動きの“合点”が体内で整う感覚だ。発動の仕方はルーファウスの癖そのままだが、今は魔法として機能している。


  呼吸を一つ、深く吐く。


 身体が軽くなった、という感覚はない。

 だが、重さの位置がはっきりする。


 踏み出した足裏に伝わる地面の感触が、ぶれない。

 踏み込みの強さと、体重移動の量が、最初から噛み合っている。


 試しに一歩、やや強めに踏み込む。


 速くなった、というより——

 余分が消えた。


 足が前へ出るまでの、わずかな“間”がない。

 身体が、次の動きを先回りして受け入れている。


 剣を構え、半身になる。

 腰の位置をずらし、切っ先をわずかに下げる。


 いつもなら、意識して調整するところだ。(いつもならか……)

 だが今は、構えた瞬間に形が決まった。


 振る。


 刃が空を切る音が、低く、短い。

 振り抜いた後の反動が腕に残らない。


 ——力は、増えていない。


 それでも、

 使った力が、そのまま動きになる。


 間合いを一歩、詰める。

 その距離が、ぴたりと収まる。


 跳べるわけではない。

 速さが増した実感も、強くはない。


 だが、

 「この一歩で届く」という確信だけが、はっきりしていた。


 身体能力向上。

 それは身体を“強くする”魔法ではなく、

 狩人の動きを、そのまま通すための補助に近い。


 胸の奥で、魔力が静かに巡っているのを感じる。

 消費は、重くない。


 その間、無理なく続けられる。


 呼吸が乱れる気配もない。

 筋肉に余計な張りも残らない。


 ルーファウスは一度剣を下ろし、意識を内側へ向けた。念のため消費を確認するため、短めに動作を繰り返してから再びステータスを開く。おおむね体内時計で三分ほど──軽い走りと跳躍、姿勢の切り替えを入れて試した。


ルーファウスはステータスを開いた。

「ステータス・オープン」


【ステータス(発動中→短時間試用後)】


MP:127 → 122(-5)


 ルーファウスは眉を動かす。数値の変化は単純だが意味深い。


「……三分で五消費か。なるほど」



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