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館もの伝奇ミステリ(?)に転生して全事件を解決したら館の美女母娘とメイド姉妹に終身●●された冴木ハクアの袋小路  作者: 所羅門ヒトリモン
第3部

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File.21「読解師:九十九譚」



 では、約束通り後日談を語るとしよう。


 今までと比べれば短いし。

 特に伏線も残ってはいないから。


 ただ淡々と、『伝奇憑きの館』に起こったその後の顛末。

 冴木ハクアと玲瓏館の皆が、どうなったかを端的に説明していくね。


 七つの事件が解決されたあとで、僕は師匠が勧めてくれた通りに〝上流階級専門の霊能者〟になった。


 玲瓏館、というか美園家のツテを頼って。

 最初は遠縁の親戚筋だとか、ジュリアさんの学生時代の友人だとか。

 ミウちゃんやコハクちゃん、現役の女学園生のネットワークを通じて、いくつもの名家に話を広げていって。


 なにかおかしな出来事に困っていないか?

 人の常識では説明できない、不可思議な現象に心当たりはないか?

 玲瓏館にはそういった〝お話〟を、好んで蒐集して助けてくれる青年がいるらしい──と噂を広げてもらった。


 言ってしまえば、これも結局、彼女たちの面倒になった形ではあるけれど。


 読解師として、無事にお金を稼げるようになったし。

 怪異事件解決の過程は、まるっと僕の手腕にかかっているので、うん。


 なんだかんだ、これは趣味と実益が叶えられる最良の進路選択になったんじゃないかな? と思っている。


[知らないうちに]

[ハクアは教祖様にされてたけどね]

[九条スミノが立ち上げた新興宗教]

[まぁ、教義も何も形ばかりで]

[実態はお悩み相談室みたいな宗教法人らしいし]

[美園家の影響力が無かったら]

[設立はだいぶ難しかったって話でもあるけどさ]


「ハハハ。困ったことに」


[ああ]

[問題はその教祖様が実際に、怪異を祓えてしまう読解師なんだよね]

[すでに助けた人たちと]

[これから助けられる人たちにとって]

[ハクアはぶっちゃけ]


「本格的に、崇められ始めてもおかしくない立場になっちゃったんですよねー……」


 ただでさえ、胡散臭い読解師の肩書きに。

 ますます胡散臭さの増した、教祖様とかいう肩書きまで乗っかるようになった。


 まぁ、信者からの献金という形でお礼金をもらっているので。


 世の中にはこんなカラクリもあるのだなぁ、と戦慄しながら焼肉に行った僕なんだけど。

 ここはひとつ、どうかそのあたりで。

 教祖様の俗な一面を通じて、これから増えていきそうな信者ちゃんの信仰心とかが少しでも薄くなれば幸いだ。


[けど、真に恐ろしいのは]

[どういうワケか、ハクアに持ち込まれる怪異事件の当事者たちが]

[誰も彼も美園家、九条家に劣らない類まれな美女に美少女尽くしで]

[スタイルまでが、とんでもない爆乳だらけって点だよ]

[あれかな?]

[怪異に遭った人間は、怪異に遭いやすくなる]

[爆乳に遭った人間は、爆乳に遭いやすくなる]

[そんな、ふざけたジンクスが、生まれてしまったのかなー?]

[キミは伝奇憑きならぬ、爆乳憑きだったりしてー?]


 師匠は本気なのかふざけているのか。

 最近は判断しづらい冗談を口にするようになった。

 そのせいで僕も、あながち笑い飛ばせない。

 これはひょっとすると、僕にかけられた〝呪い〟の一種なのかもしれなかった。


[ま、それも含めて『九十九譚(ツクモノガタリ)』なのかな]

[わたしとハクア]

[これはキミという読解師を主人公にし]

相方(バディ)には憑藻神(わたし)を添えた]

[見目麗しい美女一族と]

[その心の闇に光を当てた伝奇憑きの物語なんだからね]


 ところで、と師匠は確認する。


[ハクアは結局、誰の夫になったんだい?]


 言い換えれば、それは誰を正妻にしたんだい? という質問だった。

 僕は「うーん……」と唸ってしまう。


 というのも、それは僕自身にも分からない答えだからだ。


 婚姻届に自分の名前を記入した記憶はある。

 けれど、もうひとつ埋められるべき空白の欄には、誰の名前が記されていたのか分からない。

 戸籍の確認とかも、今ではすっかり玲瓏館任せになっているので。


 僕は自分の妻が誰なのか知らなかった。


「でも、べつに気にする必要もないかなって」


[はいぃ?]


「だって、あれからちょっとして、僕らは結婚式を挙げたんです」


 ジュリアさん、ミウちゃん、ルリちゃん、コハクちゃん、スミノさん、ユウナちゃん、ユズキちゃん。

 七人がウェディングドレスを着て、七人が僕と誓いのキスをして。

 もちろん、正式な結婚式場で執り行った挙式ではないけれど。


「なんか、ジュリアさんがポンっと無人島を買ったみたいで」


 そこで、八人だけの結婚式をするコトになったのだ。

 段取りとかケーキとか、何もかも完璧に準備されていたので、僕はほとんどポカンとしたまま夢を見ている気分のうちに式を終えた。


 よく分からないが、僕を教祖としたインチキ宗教の教義では。


 法の目を掻い潜る記述で、一夫多妻制を成立させる文言があるらしい。

 曰く、教祖様と()()を行った者は、魂の結びつきがうんたらこうたらでカルマから解脱してカーマ=スートラどうたらこうたら。


[……あー]

[たぶんというか確実に]

[それは美園ジュリアと九条スミノのアイディアだろうね]

[まさかそんなトンデモ論法で、現代日本にハーレムを作るなんて]

[つくづく驚きだよ]


「僕も驚きました」


 ただ、この新興宗教の教義というのが案外バカにできなくて。

 どういうワケだか、玲瓏館に染み付いていた始祖の亡霊が、すっかり掻き消されてしまったようなのだ。


[新しい掟か]

[新しい因習……とまでは言わないまでも]

[古今東西の魔術や妖術、呪術というのはね]

[案外、儀式場(フィールド)がぶち壊されたら]

[それであっけなく、台無しにされてしまうものが多いんだよ]


 だから、古代の神殿や寺社なんかは立派で荘厳な造りをしている。

 簡単には壊されないよう、神聖な場を大規模に作り上げて。

 その内側で執り行われる様々な神事、行事を。

 オカルト的な理由で、守ろうとしたために。


「……師匠の言った通り」


 始祖の亡霊は黒幕にしては、その品性に相応しい末路を迎えたと言えるだろう。

 もともと死人だけど、最後は忘れ去られて消滅するなんて。


 皮肉的で、因業に満ちた終わり方だ。


[玲瓏館を物理的に建て直す方法もあったけどね]

[建物自体を壊して、新しく作り直してしまえば、亡霊は同じように消えたはずだ]


「はは。それはユウナちゃんが悲しみそうなので、僕はこっちで良かったと思います」


 館もの伝奇ミステリ(?)に転生して。

 全事件を解決したら。

 館の美女母娘とメイド姉妹に。

 終身●●された冴木ハクアの袋小路。


 伏字には、雇用、束縛、隷従、執着、発情いろいろ当て嵌めてもらって構わない。

 僕としては、恋愛の二文字が気に入っているけどね。


[呪縛、というのもオススメだ]

[なにせこの町の名は──『九十九坂』]

[怪しくて妖しくて(あや)しい物語の大舞台]

[まさに、わたしたちには打ってつけの町名だったんだからさ]


 九十九坂町では遠い未来、退魔師なんて職業も生まれるらしい──っと。

 これはまぁ、べつの物語のお話なんだけども。


 なんだかんだ物語化が進んでいるのか。


 僕はどうも、最近ご同類について知覚できる時があるんだよね。


 何を言っているのかは、特に気にしないでもらって構わない。


 所詮これは、胡散臭い読解師の戯れ言だ。


 僕も数秒後には忘れてる。

 曖昧で不確かで、黄昏時のような境界線の話。

 僕の人生(タイトル)には、ほんのちょ〜っぴりしか関係が無さそうなので、気にしなくても問題ないだろう。


 それでも気になるって人は、探してみるのをオススメする。


 ……僕みたいに、おかしなモノに魅入られない保証は無いけれどね?


 では、また。



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