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第9話 嘘の仮面

藍人はどんな中学生活を送っていたのか。

総司くんは自身の過去を淡々と話してくれた。

総司「僕は、中学時代にちょっと問題に巻き込まれましてね。」

栞「問題?」

総司「とあることがきっかけで、クラスメイト達からストーカーみたいなことされたんです。」

栞「え!?(た、確かに顔は整ってると思うけど。まさかそんな事が...)」

総司「その時は、先生に1度報告して何とかなったと思ったんだですが。」

栞「ならなかったの?」

総司「はい。それどころか、逆に頻度がどんどん増えていきまして。おかげで登下校で気が休まりませんでした。」

栞「そ、そうなんだ。」

でも今のところ聞いてる限りだと、あまり似てる体験ではないような。

総司「そのせいで色んなことに支障が出まして。運動や勉強もあまり良くなくなっちゃったんです。そしたらクラスのみんなとか先生から急に見向きもされなくなりました。」

栞「で、でもそれはストーカーのせいじゃ?」

総司「それが今回のストーカーは全く見つからなくて、先生達からも勘違いとされちゃいました。」

栞「そんな!そんなの教師としてダメだよ!」

総司「確かにそうかもしれないんですが、学校側からすれば、こうするしかなかったんですよ。」

栞「でも(そんなの理不尽すぎる!)」

総司「(皇藍人の問題を学校側は好評したがらなかった。そうすれば自分達の評判が落ちるのが目に見えてるからだ。だからストーカーの件は深追いせずそのままにした。そして、そのまま僕の精神は壊れていき、中学3年の大事な時期には不登校になってしまった。だから僕は、もう傷つかないために、月下総司という仮面を被った。)」

総司くんは少し沈黙を挟み、再び話し始めた。

総司「まぁでも、栞さんに比べたらなんてことないですけどね。」

栞「そ、そんなことないよ。」

総司「え?」

総司くんは少し驚いたようにこちらを見る。

栞「人によって辛さは違う。テストで悪い点をとっても、赤点さえ免れれば大丈夫って人と、50点以下をとって心の底から悔しがる人がいるように、総司くんには総司くんの辛さがあるんだよ。だから、自分の過去を周りの方が辛いって言って我慢しないで。」






藍人「......」

あまりに衝撃な言葉を言われて、思わず驚きを見せる。こんなこと、誰にも言われたことがなかった。

栞「私の推しも、中学時代に大変なことがあったらしいの。でも自身のファンのために頑張らないとって言ってたんだ。私はそんな人の考え方を尊敬してる。」

藍人「(そういえばそんなこと言ったような?)」

栞「総司くんも、そんな状況になっても自分なりに頑張って周りの人に応えられるようにしたんでしょ?それって凄いことだよ。だから...」

そう言って栞さんが手を掴む。

栞「自分のことを褒めてあげて。じゃないとずっと苦しいままだよ。」

藍人「.....」

真っ直ぐな目でそんなふうに言われてしまった。

藍人「(そっか。こういう所があんなにファンができる理由なんだな。)」

僕はそんな風に思いながら、

藍人「ありがとう。」

と、心から言ったのだった。




栞「!?///」

突然笑顔でありがとうと言われ、思わず少しドキッとしてしまった。まさかあんな顔を見るとは。

総司「あの、ところで。」

総司くんが少し恥ずかしそうに言う。

総司「そろそろ手を離していただいても?」

栞「あ!」

私は自身の手元を見て、急いで手を離した。

栞「ご、ごめんね。思わず」

総司「いえ、お気になさらず。あ、そういえば気になってたんですが。」

栞「ん?なになに。」

総司「栞さんって料理苦手ですか?」

栞「(ドキッ!)」

総司「この前昼食食べた時もコンビニ弁当でしたし、炊飯器とかも使った痕跡がほとんどなかったので」

栞「うぅぅぅぅ。」

そう、私は料理が出来ない。何故か米を炊こうとしても、ふにゃふにゃになってしまうのだ。フライパンでお肉を焼いた時も焦がしてしまった。

栞「ソ、ソンナコトナイヨー」

総司「棒読みですよ。」

栞「ぐぬぬぬ。」

総司「もし嫌じゃなければ、今夜は僕が作りましょうか?」

栞「え!?いやいや流石に悪いよ。」

総司「遠慮しないでください。話を聞いてくれたお礼です。」

栞「...まぁそこまで言うなら。」

総司「ならリクエストとかありますか?」

栞「私、魚が食べたい!」

総司「了解です。じゃあ少し買い物に行ってくるので。」

そう言って総司くんは家を出た。

栞「手料理なんて、久しぶりだなぁ。」








総司「出来ました!」

総司くんがそういうと、キッチンからいい匂いがしてきた。

栞「おお、凄い。」

総司「お口に合えばいいのですが。」

栞「ふふん!これでもアイドルとして、ちょっといいお店に行ってたりするんだよ。私の舌は厳しいよ?」

そう言いながら私は焼かれた鮭を箸で割り、口に運ぶ。

栞「ん!?美味しーい!」

なんだこれ。お店の味なんかよりずっと美味しい。

総司「昔から料理を少し手伝うことがありまして、それで覚えました。」

栞「へぇー、そうだったんだ。」

料理出来るのは普通に尊敬である。

栞「(にしても美味しいなぁ。見た目は昔母が作ってくれたのとあまり変わらないのに。どうしてこんなに違うんだろ。)」

総司「栞さん?どうしました?」

栞「ん?いや別に何も無いよ。」

総司「なら良かったです。骨とかが詰まったのかと思ってヒヤヒヤしましたよ。」

栞「(.....あぁ、そういう事か。)」

私が昔食べた料理は、私のことなんて考えてなかったんだ。でも今は違う。総司くんは私に気を使って美味しく食べてもらえるように作ってくれたんだ。

栞「ふふっ!」

総司「?」

優しさがこもったご飯。やっぱりこっちの方がずっと美味しいや。






栞「今日はありがとう。」

総司「いえ、こちらこそ。」

私は総司くんを見送るために玄関まで来ていた。

総司「明日からまた学校で。」

栞「うん!またね。」

そう言って総司くんは帰って行った。

栞「総司くんも苦労してたんだなぁ。ちょっと藍人さんみたいに見えちゃった。」

まぁ気のせいだよね!さぁ、明日から学校行くために早く寝よ!

次回!

体育祭練習へ。

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