第6話 定期テスト
番組収録も終わり一安心!と思っていたら...
颯太「妬ましい妬ましい。」
藍人「人の席で妬ましいを連呼するな。」
番組収録から何週間か経ち、無事に番組は放送された。
颯太「あの皇藍人とか言うやつ、あんなに楽しそうに栞さんとご飯を食べやがってー...」
周りは知らないからしょうがないけど、本人の前で言うかね。
藍人「それより、お前テストは大丈夫なのか?」
颯太「え!?もうそんな時期か?」
今は6月の後半。既にテスト期間中だ。
颯太「前回の中間は簡単だったけど、今回はやばい!」
藍人「いや、簡単って言ってるけどお前前回赤点ギリギリだったじゃねーか。」
颯太「ふっ!甘いな。俺が勉強せずに赤点を取らずに済むということはそれほど簡単だったということだ!」
.....なんだこいつ。志が低いとかの話じゃないぞ。
藍人「はぁ。まぁお前がいいならいいんだけどな。」
颯太「総司!俺からの頼みを聞いてくれ!」
【藍人はここでは月下総司という名前で生活していて、容姿も変装で変えている。】
藍人「なんだ?(嫌な予感が)」
颯太「この俺に!勉強を教えて」
藍人「やだ」
颯太「まだ言い切ってないぞ!?」
藍人「どうせ言われると思ったからな。」
颯太「そう言わずに頼むよー。」
藍人「第一、僕のメリットがないじゃん。」
颯太「いや、あるぞ!この俺と勉強ができる」
藍人「何言ってんだよ」
それが嫌だから断ってんのに。
栞「何話してるの?」
その時、栞さんが僕らに話しかけてきた。
颯太「しししししし栞さん!?どうしました?」
栞「ん?いや、何話してるのかなーって。」
藍人「こいつがテスト期間で焦ってるから勉強教えてくださいって懇願してたんですよ。」
栞「そうなんだ。」
次の瞬間、彼女から想像もつかない言葉が飛んでくる。
栞「なら、私もお願いしようかな。」
藍人「え?」
何を言っているのだろうか。そもそも、栞さんと一緒にいるだけで妬まれると言うのに。
颯太「よし総司、たった今お前の拒否権が消えた。勉強会開催決定だ!」
栞「よろしくね。」
ここまで来てしまったらもうどうしようもないな。
藍人「はぁ。わかったよ。」
颯太「よし決まりだ。開催場所はお前の家な。開催日は今度の土曜日で。」
そしてそんな風にして勉強会が決まってしまった。
藍人「というわけだから、その日は総司って呼んで。」
藍人母「了解ー。」
夕食を食べてる時、母に事の顛末を伝えて承諾を得た。
藍人母「にしてもあんたに友達が来るなんてね。しかもその内1人はアイドルなんて。」
藍人「まぁ、僕も少し驚いてるよ。」
正直、中学の体験から友達なんてできないと思ってた。
藍人母「せっかくできた友達なんだから、大切にね。」
藍人「わかってるよ、母さん。」
そう言って僕は部屋に戻った。
そして土曜日がやってきた。
颯太「おーい来たぞー。」
藍人「おお、来たか。」
玄関を開けると、そこには颯太しかいなかった。
藍人「栞さんは?一緒だと思ったが。」
颯太「馬鹿か?俺ごときが一緒に来ていいはずがないだろ。」
藍人「ああハイハイソウデスネー。」
颯太「雑!」
そんか会話をしてると、
栞「やっほー!2人とも」
栞さんが家に来た。
颯太「しししし栞さん。そそ、その。とととてもお綺麗です。」
藍人「緊張しすぎだろ。」
栞「ふふっ、ありがとう。」
颯太「ぐはぁ!」
その笑顔を見た瞬間、颯太が鼻血を出して倒れた。
藍人「やれやれ。まぁ上がりなよ。」
栞「はーい。おじゃましまーす。」
そうして2人が家に上がり、リビングへ行くと、
藍人母「どうもー。私、総司の母の月下心美です。よろしくね。」
栞「初めまして。夢咲栞です。」
颯太「久遠颯太です。」
心美という名前は僕の母の実名だ。全く大胆なことをする。
栞「心美さんお綺麗ですね。昔モデルとかやってたんですか?」
心美「いやいや、そんなことないよ。」
藍人「ほら、今日は勉強会なんだろ?早く部屋に行くよ。」
颯太「まぁそう照れんなよ。じゃあ心美さん、失礼しまーす。」
心美「はいよー。」
そうして2人が僕の部屋に入る。
颯太「なんというか...なんもねぇな!」
藍人「悪かったな。」
僕の部屋は仕事のせいでほとんどものがない。買い物の時間なんてほとんどないのだ。
藍人「ほら、勉強するぞ。」
そう声をかけた時、栞さんがぼーっと本棚を見ていた。
藍人「栞さん?どうしました?」
栞「え!?いや、なんでも。」
藍人「?」
はて、なにか気になることでもあったのだろうか。そんな事を思いながらも、僕らは勉強会を始めた。
颯太「あーーー、疲れた。休憩しようぜ。」
あれから3時間ほど経った頃、颯太の集中力が切れたようだ。
藍人「だいぶやったし丁度いいかもな。」
栞「私も疲れたし休憩しよー。」
颯太「あ、ならお手洗い借りるわ。」
そう言って颯太は部屋を出た。その時、
栞「ねぇ総司くん。これって」
そう言って彼女が指したのは本棚にまとめてあった俺が出てるドラマのDVDだった。
藍人「ああ、それですか。一時期ハマってたんです。」
栞「へー。他にも色々あるね。」
藍人「まぁドラマとかは結構好きですから」
栞「.........」
藍人「栞さん?」
栞「このDVD!めっちゃレア物じゃん!すごい!実物初めて見た!」
藍人「(....しまったぁ)」
忘れていた。
そう、今彼女が手にしているDVDは今では販売していない。僕が俳優になり始めた頃の作品なのだ。ファンの間ではレア物となっているらしい。
藍人「(まだ名が知られてない頃、自分の演技確認したくて買ったの忘れた。)」
栞「ねぇねぇ。見てもいい?」
藍人「まぁいいですよ。」
栞「やった!ありがとう!これ見たかったんだよねー。」
そう言って栞さんはテレビをつけて、DVDを見始めた。
颯太「よー、戻ったぞ。って、何見てるんだ?」
栞「私が気になってたドラマなの。」
颯太「ぜひお供します。」
藍人「おいおい....」
心美「失礼するね。お菓子持ってきたよー。」
颯太「お!ありがとうございますー」
藍人「なんてピンポイントなんだ。」
栞「休憩中だし、丁度いいね。」
そうして僕らはお菓子を片手にドラマを見た。自分が出ている作品を見られるのは中々恥ずかしいものだ。しかもデビュー当初で出来も悪いのだから余計に恥ずかしくなる。
栞「あー面白かった。」
颯太「意外と楽しめたぜ。」
藍人「....そうですか。」
僕は終始恥ずかしさに襲われたけどな。
颯太「そういえば、栞さん。この前の番組見ましたよ!」
栞「ほんと?ありがとう。」
颯太「どうでした、草津は。」
栞「楽しかったよ。ゲストの俳優さんもいい人だったし(いやほんとまじでいい人だったなぁ。)」
颯太「うっ!そ、そうですか。」
藍人「なんでダメージ食らってんだよ。」
ふと時計を見るともう夜中の7時だった。
藍人「そろそろいい時間だし、お開きにするか。」
颯太「そうだな。」
栞「じゃあ帰ろー。」
そうして2人を玄関まで見送ると、
心美「あんたも送ってあげなさい。」
そう無理やり母さんに言われて、僕も家を出ることになった。
颯太「じゃあ俺はこっちだから。総司!栞さんに変なことすんなよ!」
藍人「しないよ。」
栞「またねー颯太くん。」
颯太「はい!栞さん!」
そう言ってやつは浮かれて帰って行った。
栞「ねぇ総司くん。お願いがあるんだけど。」
藍人「?なんです?」
すると彼女はモジモジしながらこう言った。
栞「ほかの教科も教えてくれない?」
藍人「....え?」
栞「じ、実は私、勉強苦手でさ。前回は何とかなったんだけど、今回は番組収録とかもあってほかの教科なんにも手がついてないのー。」
藍人「.......」
栞「こんなことみんなに知られたら今のイメージが崩れちゃうの。ね?お願い!」
藍人「....はぁ、わかりましたよ。」
ここまでお願いされたら断れないだろう。
栞「ほんと?ありがとう!じゃあまたよろしくねー。」
そう言って彼女は帰って行った。
あれからしばらく、僕は栞さんに勉強を教え続けた。栞さんは勉強が苦手なりにも必死に食らいついていた。
そして迎えたテスト日!
栞「あわあわあわあわ」
藍人「(すごく緊張してる。)」
栞さんにはできる限りの事をしたつもりだ。あとは彼女次第である。
先生「それでは、テスト初め!」
こうして、戦いのゴングが鳴ったのだった。
颯太「いやー今回は自信あるぜ!」
テストから数日が経ち、今日は学年順位が発表される日である、
藍人「とか何とか言って、また赤点ギリギリじゃないよな?」
颯太「大丈夫大丈夫!今回は平均を超えたと思うぜ。」
藍人「そう。」
そうしているうちに、校内に出された学年順位表を見る。
颯太「よし!やっぱりな。」
颯太の順位を見ると、半分より上にあった。
藍人「やったな颯太。」
颯太「おう!お前のおかげだ。あ、そういえばお前の順位は。」
颯太はそう言って順位表を再び見て、驚いた。
颯太「ええ!お前が学年10位だと!?」
藍人「いや、いつもこんなもんだよ。」
颯太「お前、そんな頭良かったのか。」
藍人「いや、今回はたまたま得意な分野だったってだけ。」
颯太「そ、そうか。」
そんな会話をしていると、順位表に張り付いてたやつらが急に離れた。何があったのかと進行方向を向くと、そこには栞さんがいた。
生徒達
「栞さんさすがです!」
「学年15位なんて!」
「勉強もできてアイドルもできるなんて凄すぎですよ!」
栞「あはは、たまたまだよ。」
颯太「やっぱ栞さんは素晴らしいお人だ。俺も混ざるぞ!」
そう言って颯太は集団の中に入っていった。
藍人「はぁ、全く。」
栞さんはほんとに大変だな。まぁあんなに頑張ってたんだから報われるのも納得だ。
翌日
颯太「よぉ総司。」
藍人「おはよう、颯太。」
いつものように颯太と話していると、何やら教室の雰囲気が変だ。
藍人「どうしたんだみんな。」
颯太「実はまだ栞さんが来てないんだよ。」
藍人「あぁ、そういう事か。」
道理で活気が無いわけだ。
先生「ほらお前ら、席に着けー。」
先生がそういうと朝のホームルームが始まった。次の瞬間、先生が放った言葉に周りの生徒は驚愕する。
先生「栞は体調不良で、本日は休みだ。」
次回
お見舞い編