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第42話 ピンチ

ちょい裏話

藍人の人気度は、学校で正体を明かしたら栞と同じくらいファンが集まるほどである。

 藍人「……いやだ。」


 その内容を聞いて、僕は即座に撮影を断った。だが、


 大和「なーんでよー!いいじゃん!出てよー!」


 こうして父さんに駄々をこねられているのだ。


 藍人「第一、なんでうちの高校なの?」


 大和「お前の友達もいるし、やりやすいかなって。」


 藍人「僕の友達を仕事で利用しようとしないでよ。」


 どんな精神をしているんだ全く。


 大和「なあ頼むよ。お前はこんなに懇願する父を見捨てたりしないだろ?」


 藍人「時と場合による。」


 大和「辛辣!父さん泣いちゃう!」


 と、駄々をこねられること一時間。


 藍人「ああもう!わかったよ。やるよ!やればいいんでしょ!」


 結局僕は根負けしてしまい、そのドラマに出演することになった。


 大和「ほんとか?ありがとう。じゃあよろしくな!あ、撮影開始は新学年になってからなー。」


 藍人「やれやれ。」


 また面倒なことになりそうと思ったのだった。










 そこから月日が流れ、僕らは高校二年生になった。新学年になって最初の登校で僕が見たのは、


「よっしゃあ!きたー―!」

「な、なぜだ。なぜなんだー!」


 学校の前に展示された新クラスの結果を見て、大喜びしたり、落胆している生徒たちの光景だった。まあ理由は何となくわかるが。


 藍人「(僕のクラスは…)」


 僕が自身のクラスを確認するために、クラス表を見た。次の瞬間、僕の口からため息がこぼれる。


 藍人「(今年も騒がしくなりそうだ。)」


 確認を終えた僕はそのまま自身のクラスへと向かった。ドア越しからでも聞こえる生徒たちの騒がしい声を聴き、僕は再びため息をつく。そうしてドアを開くと、


「栞さん!同じクラスになれて光栄です!」

「栞さん!今日の放課後お茶でもどうかしら?」

 颯太「栞さーーーん!」


 栞さんを囲む群衆が僕の目に入った。そう、僕は二年連続栞さんと同じクラスになってしまったのだ。騒がしい日々が来ることに頭を悩ませていると、


 瑠香「あ、総司くん。3組になったんだ。」


 横から瑠香さんに声をかけられた。どうやら瑠香さんも同じクラスになったらしい。彼女はまともな人だから同じクラスになれたのはありがたい。


 藍人「瑠香さん。良かったです。まともな人がいてくれて。」


 瑠香「あ、あはは。確かにここまで騒がしいとちょっと不安になるよね。」


 そう言って瑠香さんが指を刺した方向を見ると、


 陽菜「栞さん!写真撮りましょ!」


 蓮「陽菜!俺も入れろ!そして送ってくれ。」


 いつものメンバーの中で栞さんの熱狂ファンである二人が見えた。これはいつも以上に騒がしくなることを確信し早くも学校を休みたくなった。


 先生「お前ら席につけ―。」


 その時、先生が教室に入ってきた。その先生は、去年僕らの担任をしていた人だ。


 先生「今日から新学年と新クラスだ。まだ慣れないところもあるだろうが、仲良くするように。そして、新学期早々に悪いんだが、皆には協力してもらいたいことがあるんだ。」


 そう言って先生は廊下にいた人を教室に入れた。


 大和「こんにちは。月下大和です。」


 そこには父さんがいた。僕は事前に父さんから今日撮影の話をすると聞いていたので特に驚きがなかったが、


 瑠香「え、大和さん?総司くんのお父さんだよね?なんでここに?」


 隣にいる瑠香さんが僕に話しかける。僕は父さんの仕事について説明すると、父さんの撮影についての説明が始まった。


 大和「皆さんには、ぜひとも私が作るドラマに出演していただきたいです。私は今回、高校生活を中心とした青春ドラマを作ろうと思っています。といっても、我々がお願いをしない限り、何か特別なアクションをしていただく必要はありません。いつも通り生活していただければそれで大丈夫です。」


 大まかな概要を説明し終えると、生徒たちからは両省の意味を込めた拍手が送られた。こうして、この学校で青春ドラマの撮影が正式に決まったのだった。







 その日の放課後、クラスではドラマの話でもちきりになっていた。


 陽菜「ドラマの撮影って。私、スカウトされたりして。」


 瑠香「思いあがらないの。」


 陽菜「ひどい!」


 蓮「俺も部活の活躍で有名に!」


 颯太「まじか!俺も部活探さないと!」


 藍人「んなことあるか。」


 そんな会話をしていた時、


 栞「総司くーん。」


 栞さんが僕に声をかけてきた。


 総司「栞さん。どうしました?」


 栞「なんか大和さん達が迎えに来てたよ。」


 藍人「本当ですか?(何か用事でもあったかな?)」


 僕は栞さんに伝えられたところに向かった。そこには確かに父さんがいたが、後ろにも数台の車があった。


 藍人「なにこれ。」


 大和「何って、今から撮影だが?」


 藍人「撮影?」


 僕は疑問に思いつつも、とりあえず車に乗って目的地まで送ってもらうことにした。





 ~車移動中~





 大和「着いたぞ。」


 そこは夕日がよく当たる道だった。いったい何を取るのだろうか。


 藍人「で、何を撮るの?」


 僕は車の中で変装を解き、皇藍人の姿となっていた。


 大和「新学年に不安を抱える生徒の様子を撮るんだ。というわけで、演者を連れてきたぞ。」


 父さんがそう言うと、後ろの車から演者が出てきた。


 海斗「よよよよよろしくお願いします。」


 智穂「せ、精いっぱい頑張ります!」


 藍人「………(いきなりかよ!)」


 僕は早速窮地に陥ったのだった。

次回

立て続けにピンチが訪れる

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