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第41話 青春ドラマ

今回からキャラのちょっとした設定を前書きに載せます。


鈴は総長を務めていたこともあって、身体能力は凄まじく、頑張れば片手でリンゴを砕ける。

警察の事情聴取も終わり、僕らは栞さんの家へと戻っていた。


鈴「てか、折角何日か泊まる用で結構服持ってきたのに、無駄になっちゃったね。」


藍人「まあストーカーは消えたんだし、いいでしょ。」


そんな会話をしているとき、栞さんはうつむいて何かを考えている様子だった。ストーカー以外にも何か悩みの種があるのだろうか。


藍人「栞さん?どうしました?」


栞「え!?あ、いや。別に……」


栞さんは笑顔を見せたが、僕には何かを隠しているように見えた。


鈴「ねえ、時間も遅いし今日は栞ちゃんの家に泊まっていい?」


栞「はい、もちろん。」


こうして、僕らは栞さんの家に一日お泊りすることになったのだった。




~数時間後~




藍人「ふぁぁぁぁ。ねむzzz。」


風呂上がりのドライヤーを終え、僕がリビングへ行くと栞さんがソファで何かを考えている様子だった。


藍人「栞さん?」


栞「おわぁ!総司くん。いつの間にそこに!?」


僕が風呂から出てきたことにも気が付かないなんて。これは何かを抱えているに違いない。


藍人「さっきもそうでしたけど、やっぱり栞さん何か悩んでいませんか?」


栞「……やっぱり、バレた?」


藍人「約一年の付き合いですからね。それくらいの変化は感じますよ。」


栞さんはこれ以上は隠せないと考えたのか、素直に話し始めた。


栞「ずっと考えてたんだ。あのストーカーはどうやって私の家を知ったのかなって。」


藍人「そうだったんですか。確かに謎ですね。」


事務所やメンバー、学校からの流出はないだろう。メンバーの誰かが栞さんを恨んでいるとは考えにくいし、事務所や学校が個人情報を漏らすわけがない。ストーカーが自力で探し出したという線もなくはないが、流石に可能性は低いだろう。だとすると、一体誰が…


藍人「それで、何か心当たりが?」


栞「……一つだけ思い当たる節があるの。私を恨んでて、ここまでやりかねない人たちが。」


次の瞬間、栞さんが発する言葉に、僕は唖然とする。


栞「私の両親が、関わってるんじゃないかなって。」


藍人「ま、まさか!」


栞さんの両親は、栞さんをお金儲けの道具としか見ていないとんでもない毒親だ。だが、高校入学と同時に栞さんは親元を離れている。行先も伝えず、急に消えたので栞さんの家のことは何も知らないはずだ。


藍人「栞さんの情報は、何も持っていないのでは?」


栞「そのはずなんだけどね。でも、他に心当たりもないし、あの人たちならお金のために何でもやりかねないからさ。」


そういう栞さんの手が震えていた。


藍人「(栞さん。震えてる。)」


栞さんの気持ちを感じた僕は、無意識のうちに栞さんの手をつかむ。


栞「そ、総司くん?」


藍人「大丈夫ですよ。今はもう僕らがいます。何も心配ありません。」


僕は栞さんを励ますために、言葉をかける。正直、思いを伝えただけで励ましになっているかは不安だ。


栞「……うん、ありがとう。」


そういう栞さんの顔から、涙が零れ落ちる。きっとずっと不安で押しつぶされそうだったのだろう。そのまま栞さんはしばらく泣き続け、そのまま眠ってしまった。


鈴「総司ー。小腹空いたんだけど....って、栞ちゃんどうしたの?」


その時、2階から姉さんが降りてきた。


藍人「ちょっと色々あって、泣き疲れて今は寝てるよ。」


鈴「泣き疲れたって。あんたまさか....」


藍人「違う違う違う!」


指を鳴らしながら迫ってくる姉さんに怯えながら、事の顛末を話した。


藍人「....って事だったんだよ。」


鈴「なるほどねー。でも本当にそんなこと有り得るの?」


藍人「分からない。でも、1つの可能性としては考えてもいいとは思う。」


現状他の可能性が浮上しない以上、調べておく価値はあるだろう。とは言っても、下手に詮索すると何が起きるか分からない。


藍人「頭の片隅に置いて置くくらいにしとこうか。」


鈴「そうだね。それはそうと、小腹空いた。なんか作ってー。」


藍人「それはそうとって。はぁ、全く。」


どこまで呑気なんだと思いながら、僕は姉さんの小腹を満たすために料理を始めたのだった。









翌日、僕は1番最初に目を覚ましそのままキッチンで朝食を作っていた。


藍人「よし、上手くできた。材料あって助かったな。」


栞「うーん。」


その匂いにつられたのか、ソファーで寝ていた栞さんが目を覚ました。


藍人「おはようございます。栞さん。」


栞「あ、総司くん。おはよう。それより何?このいい匂い。」


栞さんが匂いの先に目線をやると、机には僕の作ったホットケーキが置いてあった。


栞「朝ごはん作ってくれたの?」


藍人「はい。泊めさせて貰ってる身ですから。」


栞「そんなの気にしなくていいのに。でもありがとう!」


そう言って栞さんが笑顔を見せる。少しでも気が治まってくれたなら何よりだ。


鈴「ふぁぁぁぁ。おはよう。」


藍人「姉さん。珍しく早いね。」


鈴「珍しくは余計だよ。てかホットケーキできてるじゃん。食べよ食べよー。」


藍人「全く、朝から元気だね。」


そうして僕らは朝ごはんを食べて、帰りの支度を済ませるのだった。


栞「ほんとに、何から何までありがとうございました。」


鈴「気にしなくていいよ。私たちの仲じゃん。」


藍人「それどっちかと言えば僕のセリフのような。では栞さん。また学校で。」


栞「うん。またね。総司くん。」


そうして僕らは帰路に着いた。少し不安は残ったが、ひとまず一件落着だ。







大和「お、帰ったか。お疲れ様。」


藍人「ただいまー。てか、早く荷物持つの手伝って。」


家に帰ると、父さんが玄関で出迎えてくれた。僕らはとりあえず、余分に持って行った服達を押し付けた。


大和「ちょ、何も全部押し付けるなよ。」


鈴「私か弱い女の子だから。」


大和「何言ってんだ、握力ゴリラ。」


鈴「はぁ?なんだって?」


大和「いえ、なんでもありません。」


藍人「(父の威厳もクソもないな。)」


そんな茶番をそこそこに、僕らは荷物を整理し始める。


大和「そういえば藍人。そろそろ父さん新しいドラマを始めるんだが、お前も出てくれないか?」


藍人「いいけど、今度はどんなの?」


父さんのドラマは恋愛や探偵、刑事といった幅広いジャンルを取り扱っている。その度に何かしらの役をやらされている。


大和「今回はずばり、青春ドラマだ。現役高校生のお前は主演としてでてもらう。」


藍人「了解。それでどの学校で撮影するの?」


その質問の答えに、僕ら耳を疑った。


大和「お前の高校だ。生徒さん達にも出てもらうつもりだ。」

次回

撮影開始

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