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第38話 恐れていたこと

迷子探しの始まり。

 藍人「はぁぁぁぁぁぁ。」


 栞「ま、まあまあ。そう落ち込まなくても。」


 おみくじを引いた後、僕らは辺りの屋台を回りながら、他のメンバーを捜索していた。だが、僕は一つ気になることがあった。


 藍人「栞さんがはぐれただけで、皆さんはまとまって動いているのでは?」


 栞「いやいや、そんなことはないはずだよ。多分。」


 藍人「いや、多分って。(曖昧なんかい。)」


 一応アイドルなため、何かある前に合流すべきだ。ということで、僕らは何人かに分かれて捜索することになった。


 藍人「さて、どこにいるかな。」


 僕はなぜか単独にさせられた。ほかの4人はペアになってるのに、なんで仲間外れを作ったのだろうか。


 藍人「(流石に疲れてきたな。飲み物でも買うか。)」


 そうして僕が自販機に行った時、


「あれー?栞どこ行ったのかな?」


 どこからか栞さんの名前を聞き覚えのある声が言っているのが聞こえた。


 藍人「(この声は…)」


 声が聞こえた方向を見ると、そこには


 結衣「ほんと、すぐどっか行くんだから。」


 梨乃「あれ?奏もいなくない?」


 美波「ほんとじゃん!これ以上迷子が増えるのは困るんだけど。」


 藍人「(…やっぱりか。)」


 そこには栞さんを探しているであろう結衣さん達のがいた。しかも聞いた限りでは、奏さんも迷子になっているそうだ。面倒ごとが増えたと思い、声をかけようとした時


 奏「ねぇ、そこのあなた。」


 藍人「え?うわぁ!」


 いつの間にか僕の背後に奏さんがいた。この人ごみの中で僕を見つけるとは。


 奏「皆に何か用?」


 藍人「あ、いや、その。」


 結衣「あっ、いたいた。奏ー。」


 その時、奏さんを見つけた結衣さんたちがこちらに向かってくる。


 梨乃「あれ?その人知り合い?」


 奏「ううん。なんかみんなの方を見てたから何か用があるのかなって。」


 美波「えっと、どこかでお会いしましたかね?」


 藍人「あ、そういうわけではなくて。」


 とりあえずここでは人の邪魔になるだろうと人込みから離れて改めて事情を説明した。


 藍人「…というわけで、皆さんを探していたわけです。」


 美波「そういうことだったんだ。うちの栞が迷惑かけてごめんね?」


 梨乃「にしても、栞にこんな真面目な友達がいたなんてね。」


 どうやら、栞さんはメンバーの皆には僕(総司)のことを話していないらしい。


 結衣「よし、じゃあ栞たちのところに行こうか。」


 奏「………」


 その時、奏さんがこちらをじっと見る。


 梨乃「ん?奏、どうしたの?」


 奏「何となく、どこかで見たことあるような。」


 藍人「!?」


 その言葉を聞いて、僕は内心すごく驚いていた。監督でも最初は分からなかったのに感づかれるとは、奏さんはすごい勘を持っているようだ。


 美波「気のせいでしょ。ほら行くよ。」


 奏「…そうかも、変なこと言ってごめんなさい。」


 藍人「い、いえいえ。(危なかった。)」


 こうして僕は何とかその場を逃れることができ、そのまま皆さんと一緒に栞さん達のところに向かったのだった。




 ~移動中~




 結衣「もう、勝手にどっか行っちゃだめでしょ?」


 栞「ご、ごめんなさい。」


 栞さん達と合流した瞬間、結衣さんが栞さんへお説教を始めたのだ。まるでお母さんと子供だな。


 美波「何この髪質、さらさらすぎ!なに使ってるんですか?」


 鈴「そんな高いものとかは使ってないよ?」


 梨乃「ほんとですか?信じられない。何か秘伝の術とかありますか?」


 鈴「そんな忍者みたいなものはないよ。」


 姉さんは、二人から美容のことについて詳しく聞かれていた。


 奏「え?大和っさんもそのアニメ知ってるんですか?」


 大和「最近見始めてね。意外とハマっちゃって。」


 父さんは仕事の関係上、色々な作品に触れておく必要があるため、仕事のない期間はドラマやアニメを見て勉強しているのだ。


 奏「ならこれもおすすめですよ。ほかの作品にはない伏線回収もありますし、何よりキャラクターデザインも……」


 大和「お、おお(この子、アニメのことになるとすごく早口になるな。)」


 奏さんは無類のアニメ好き。そのうえ好きなことになると熱中して周りが見えなくなるのだ。僕も一度話したことがあるからわかる。


 栞「うぅ、ずびばぜんでちた。」


 結衣「全く、気を付けてね。」


 どうやら栞さんへのお説教は終わったようだ。というか、栞さんがすごくシュンとしている。どんだけ怒られたのやら。


 梨乃「じゃあそろそろ帰ろうか。奏、行くよー。」


 奏「…っは!また私は…」


 大和「あっはっは!面白い子だね。嫌いじゃないよ、そういうの。」


 その言葉を聞いて奏さんは少し安堵していた。


 鈴「お父さん…それだけは駄目だよ。」


 藍人「そこまで落ちたか。」


 大和「ちょ、お二人さん?それはシャレにならんぞ?」


 栞「あはは!」


 そうしていつもの様に父さんをいじっていると、栞さんに笑顔が戻る。少しは元気になってくれたようだ。


 美波「なんかすごいにぎやかな家族だね。」


 栞「そうでしょ?見てて面白くて。」


 結衣「確かにこれは面白いね。」


 そう言って五人は帰っていった。新年早々あの人たちに会うとは。これは波乱の予感がするなぁ。







 そこから2週間ほどが経ち、三学期が始まった。


 颯太「ぐでーん。」


 藍人「何ぐでーっとしてんだ。休みは終わったぞ?」


 颯太「だからだよ!こんなにつらいことはない!なぜこの国は一年中休みじゃないんだ!」


 と、そんなふうにかなわぬ願いを嘆く颯太をよそに、僕は辺りの様子を見渡す。すると、


 栞「み、皆。少し落ち着いて。」


 栞さんが相変わらず生徒たちに囲われているのが見えた。この人に休息はあるのだろうか。


 先生「ほらほら、お前らそろそろ席に着けー。」


 先生がそう言っても、生徒たちは知らん顔をして栞さんの周りを動こうとしなかった。だが、


 先生「早く座らないと、席替えができないだろうが。」


 その言葉を聞いた瞬間、生徒が一瞬で席に着いた。手のひら返しが速すぎる。


 颯太「よっしゃあ!席替えじゃあ!」


 さっきまでぐでーんとしていた颯太も起き上がった。なんて単純な奴なんだ。


 先生「よし、じゃあくじ引きで決めるから、順番に引きにこーい。」


 次の瞬間、生徒たちが一気に教卓へと向かい、誰が一番に引くかを争っていた。


 藍人「ほんと、こいつらは…」


 栞「あ、あははは。」


 他のクラスなら、いい席を確保するために競うのだろうが、このクラスの場合は男女問わず、誰が栞さんの隣になれるかを争うのだ。


 智穂「全く。席替えになるといつもこうなんだから。」


 瑠香「皆欲望に忠実だねー。」


 先生「っと、残りはそこの四人だな。さっさと引いてくれ。」


 そう言われたので、僕らは残ったくじを引いた。そしてそこに書かれた番号の席についた。


 藍人「うーん。」


 栞「物欲ってやつ?」


 藍人「いや、別に望んでないんですけど!?」


 僕は栞さんの隣になってしまった。それにより、周りからの視線がものすごく痛い。


 颯太「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…」


 藍人「(これ死んだかも…)」


 その後、ほぼ全員から追われることを恐れた僕は、その場から全力で逃げ出した。こんなにも席替えを望む日はもう二度と来ないだろう。









 藍人「はぁぁぁぁぁ。(疲れた。)」


 その日の帰り道、僕は疲労感がMAXになっていた。あの後、先生に呼び出され、雑用を手伝わされたからだ。


 藍人「(早く帰ろ。)」


 そう思い歩いているときだった。


 栞「あ、あの。やめてください!」


 栞さんの声が聞こえた。何があったのかと見に行くと


 ?「僕と君は運命の糸で結ばれてるんだ。さぁ、早く付き合おう!」


 そこには、僕が想定していた中で、最悪の光景があったのだった。

次回

栞のピンチ!?

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