第35話 特別な日
藍人の誕生日!
そして他の人の思いも?
藍人「……へ?」
突然のことに、思わず困惑してしまう。僕はハッとなって時計を見ると、ちょうど日付が変わっていた。
藍人「まさか、これをするためにこんな遅くまで?」
栞「ふふん!すごいでしょ!」
颯太「結構大変だったぜ?隠しながら準備するのも。」
智穂「心美さんたちにも協力してもらって何とか実現できたわ。」
海斗「発案者は俺なんだ。クリスマスにドッキリしたいなって。」
瑠香「文化祭のこともあったし、お礼したいなって思ってたしね。」
蓮「俺らも日ごろお世話になってるからな。」
陽菜「ちょっとしたお礼としてね。」
そういわれ、少しずつ誕生日を迎えた実感がわいてきた。僕の誕生日は12月25日。クリスマスとかぶるから昔から一緒に祝われてきた。そのせいか、僕自身も誕生日というよりはクリスマスを祝っているという感覚だった。だから、こうして誕生日を祝われることに少し違和感を覚えている。
藍人「(そうか。僕誕生日なのか。)」
次の瞬間、母さんがろうそくに火をつける。
心美「さあ、一息でやっちゃって。」
大和「誕生日といえばこれだよな。」
藍人「あんまり経験したことないからわからないんだけど……」
鈴「まあまあ、細かいことは気にしないで。ほらほら。」
僕は流されるままに、ろうそくの火を消した。
蓮「よし!早く食べようぜ!」
智穂「心美さん。よろしくお願いします!」
心美「了解。ちょっと待っててね。」
栞「いやぁ、楽しみだなあ。」
~ケーキカット中~
心美「できたよー。」
鈴「待ってました!」
藍人「僕より楽しみにしてない?」
栞「まあケーキを目にしたら誰でもそうなるよ。」
この人たちの本当の目的はケーキを食べることなのではないかと疑いたくなるくらいには目を輝かせている。そんなことが気になりながらも、僕はケーキを口に運ぶ。
藍人「……うん。おいしい。」
イチゴの酸味と生クリームの甘みが絶妙にマッチしている。シンプルイズベストである。
栞「うーん、おいしい!」
そういう栞さんの頬には生クリームがついていた。
藍人「栞さん、生クリームついてますよ。」
そういって僕は指でその生クリームを取る。
栞「へ?」
栞さんは驚いたのか、素っ頓狂な声を出した。しだいに恥ずかしさからか、見る見る顔が赤くなっていった。
栞「あ、うん。ありがとう。」
鈴「…あんた、たらしなのね。」
藍人「?」
智穂「……」
海斗「智穂?どうした?」
智穂「いや、別に?」
栞さんが生クリームを取ってもらい、照れてる様子を見て、私は少し羨ましく思っていた。私も一人の女子高生だ。恋愛とか、恋愛とか、恋愛とか、気になるに決まっている。
颯太「おい蓮、お前よくそんなに食えるな。」
蓮「ん?だって甘いもの食べたら、しょっぱいもの食べたくなるだろ?」
颯太「だからって、そんなに食べるやつがあるかよ。」
颯太が蓮へそんなツッコミを入れている。こいつは昔からそうである。自分がふざけることもあれば、意外と常識人だったりするし、いろいろと謎である。
私たちは小学生からの幼馴染だ。家は隣同士で、よく公園で遊ぶことも多かった。
颯太「よし、次は鬼ごっこしようぜ。」
智穂「いや、二人でやってもしょうがないでしょ。」
颯太「それもそうだな。ならかくれんぼは?」
智穂「あんまり変わんないって。」
昔からどこか抜けていて、元気が尽きなくて、いつもまっすぐな奴だった。私が落ち込んでいた時も、
颯太「よし!俺が何とかしてやる!」
何の考えもないのにそういうことを言って、私を慰めてくれるような奴だった。その明るさと真っ直ぐな性格は、今でも健在である。
智穂「はぁ。(私も恋愛したいなぁ)」
私がそう思いながら、残りのケーキを食べ終え、席を立とうとしたとき
颯太「ほら。」
智穂「え?」
颯太が私に残ったケーキを渡してきたのだ。
智穂「どうしたの急に。」
颯太「蓮がいろいろ食わせてきたせいで腹いっぱいなんだ。それに、」
颯太が少し間をおいて言った。
颯太「なんかお前、元気なさそうだったからな。」
智穂「!!」
そう言って、颯太は蓮たちの方へ戻っていった。
智穂「…ふふっ(ほんと、変わらないなあ。)」
そう思い、私は颯太の方を見る。
智穂「(…まぁ、今はこれで勘弁してやるか。)」
そう思いながら、私は颯太から押し付けられたケーキを食べるのだった。
陽菜「ふわぁ。ねむ……」
私は少し眠気を覚ますために、夜風にあたっていた。
瑠香「…あれ?陽菜?どうしたの?」
陽菜「ああ、瑠香。いや、少し眠くなっちゃって。」
瑠香「珍しいね。こういう時はいつも最後まで起きているのに。」
陽菜「まぁ、ちょっとね。」
今回、私は海斗くんと蓮との三人でいろんなことを準備してきた。その影響もあってか、今少し寝不足である。
瑠香「しかし、まさか総司くんの誕生日がクリスマスなんてね。聞いたときはおどろいたよ。」
陽菜「そうだね。まあ皆楽しそうだしいいじゃん。」
瑠香「……そろそろ頃合いなんじゃない?告白しなよ。蓮くんに。」
陽菜「……」
私は、同じクラスの桐ケ谷蓮に惚れていた。きっかけは入学して間もないころ、私が演劇部で必要な道具を取るために体育館の倉庫に行ったとき、
男子「うわぁ!危ない!」
陽菜「え?」
その日は雨で、校内で陸上部が練習していたのだが、その時にたまたま走ってきた陸上部の生徒と衝突してしまい、その時私は足をひねってしまった。
陽菜「いっ!(あ、足が。)」
男子「ご、ごめん!大丈夫?」
陽菜「は、はい。大丈夫です。」
私はそのまま無理して立ち上がり、道具を拾って再び歩き出した。
陽菜「うっ!」
だが、私の考えが甘かったのだろう。足には相当なダメージがあったのか私は少しずつ歩くのが遅くなっていき、もうすぐ限界を迎えそうになった時、
蓮「あれ。君は陽菜さん?」
陽菜「あなたは同じクラスの……」
偶然廊下を歩いていた蓮と遭遇した。これが、私たちが最初にまともに会話した瞬間だった。
蓮「って、その足どうしたの。腫れてるよ。」
陽菜「いや、これくらい大したことないよ。」
私が再び歩き出そうとしたとき、
陽菜「あっ!」
私が足を踏み外し、前のめりに倒れそうなとき
蓮「おっと。」
蓮が受け止めてくれたおかげで、何とか倒れずに済んだ。
蓮「やっぱりその足じゃ無理だよ。保健室に行くよ。」
そういって蓮が私をお姫様抱っこする。
陽菜「え?いや、ちょ!?」
蓮「安心しろ。すぐにつくから。」
そういって蓮は私を保健室まで運んでくれた。
陽菜「あ、ありがとう。」
蓮「気にするなって。困ったときはお互い様だろ?あ、これ演劇部に持ってっとくよ。」
そういって蓮は道具を持って保健室を後にした。
陽菜「……(かっこよかったなぁ。)」
思えばあの時にはすでに蓮に惚れてしまったのだろう。
瑠香「まあ、今日はこのまま止まる予定なんだし、チャンス見つけなよ。」
陽菜「うん。ありがとう。」
私はなるべくカップルの日々を長く送りたい。高二になると、少しずつ受験についても考えなければならないため、三学期の間くらいは何も気にせず楽しみたいものだ。
陽菜「(よし!頑張ろ!)」
私は改めて決意を固めるのだった。
それから時間が迫り、そろそろ寝る準備をしようとなっていた時、
海斗「じゃあ最後のイベントを始めるか。」
藍人「え?まだあるの?」
海斗「うん。まぁクリスマスと誕生日といえばこれもないとね。」
栞「じゃあ始めようか。皆、用意してきた?」
颯太「ああ、もちろん。結構悩んだぞ。」
智穂「天才的なセンスで選んであげたわ。」
瑠香「あ、ちょうどいいタイミングでこれたみたいだね。」
陽菜「正直これを楽しみにしたまである。」
蓮「よし、なら始めるか。」
いったい何が始まるのだろうか。
栞「ではこれより、プレゼント交換会を開催しまーす!」
次回!
三章最終話。プレゼント交換&お泊り会




