第33話 隠し事
栞の思いとは……
いや、何を言っているのだろうか。月下総司は、僕の学校での名前だ。つまり、この人はかりそめの僕に恋しているということだ。
栞「私、これでもアイドルなので、学校の皆にモテるんです。特別扱いもされてて嫌気がさしてたんですが、彼は私を特別扱いしなかったんです。彼はアイドルの私じゃなくて、『夢咲栞』を見てくれたんです。それがうれしくて。」
藍人「栞さん……」
薄々感づいていたが、やはり栞さんは自身の学校での扱いに不満を抱いていた。彼女も年頃の高校生(僕もだけど)。普通の学校生活には、やはりあこがれるのだろう。
栞「でも、まだ会って一年も経ってないし、藍人さんもいるし、何より私、アイドルだし!もうどうしたらいいんですかねーー!」
栞さんはそういうと、糸が切れたように寝てしまった。多分、アルコールの影響だろう。
藍人「(危なかった。どうやって答えればいいのか分からなくなっていたから、何も言えず戸惑うところだった。)」
しかし、根本的な問題は解決していない。今後どんな対応して会えばいいんだろうか。
藍人「はぁぁぁ(全く。僕はただ普通の高校生活を知りたかっただけなんだけどなぁ。)」
とりあえず、しばらくは様子見にしようと決断し、あたりを見渡してみると、
煌雅「ぐがぁぁぁぁぁぁ……」
響「もうひとビン!むにゃむにゃ……」
マスター「あひゃひゃひゃひゃ、皆寝ちゃった!」
藍人「…………(駄目だこりゃ。)」
アイドルの皆は全員眠ってしまい、大人は使い物にならなくなってしまった。
藍人「あ、もしもし父さん?」
大和「ん?どうした?打ち上げは終わったのか?」
藍人「うん。だから、迎えに来てくれない?」
大和「え?なんで?」
藍人「大人がダウンしたから。」
大和「何してんねん。」
その後、駆け付けてくれた父さんによって、全員を自宅に送ったのだった。
翌日、僕は久しぶりに学校に向かった。ここ最近は5人に演技を教えるために学校を休んでいたのだ。
藍人「(さて、そろそろ来るかな。)」
時期は二学期終盤。この時期に来るものと言ったら、
颯太・智穂・蓮「勉強会お願いします!」
定期テスト以外無いだろう。
藍人「あのさ、そろそろ自分で勉強することも覚えたら?」
颯太「それは俺たちに死ねと言うことか!?」
藍人「いやそうはならないでしょ。」
何故生死を分ける選択を迫ったみたいになってるんだ。
智穂「とにかくお願い!二学期はいい成績で終わりたいの!」
今回はいつもより目が真剣に見える。なんか他に目的がありそうだ。
藍人「わかったよ。てか、どうせ断っても無理やり来るでしょ。」
智穂「あ、バレた?」
蓮「当日は海斗や陽菜達も来るから、よろしくな。」
藍人「(まじか。)」
もうこのままお約束の展開になりそうで怖いな。
蓮「(こっちはOK。頼むぜB班。)」
そのころ、栞さんのほうには瑠香さんたちが向っていた。
瑠香「栞さん。総司くんのところで勉強会するけど来る?」
栞「うん、行こうかな。」
というか、こっちは確証もないのに誘ったってこと?何考えてるんだ。
陽菜「よかった。あと、追加の情報が……」
陽菜さんがその内容を伝えると、栞さんの目が輝いた。
栞「何それ!学生っぽい!」
海斗「もう準備は始めてます。栞さんにも協力してほしいんですが、お願いできますか?」
栞「もちろん!演技練習で培った成果をここで生かすよ!」
こうして、僕が知らないところで、何かが計画されていた。
その週の土曜日、いつもの様に家で勉強会が開催された。
藍人「で、なんで姉さんもいるの?」
鈴「なんか面白そうだったから!」
なんか同じ理由で参加してきて、痛い目にあった父親を見た気がするけど、あえて言わないでおいた。
藍人「じゃあ始めるね。」
一同「お願いしまーす!」
~二時間後~
鈴「はぁ、はぁ、皆こんな大変なの?」
颯太「そうですか?今回は楽なほうですよ?」
鈴「聞きたくなかったよ。その真実。」
大和「俺も同じ体験したぞ。つらいよな、それ。」
鈴「お父さんと同じレベルになっちゃった。」
心美「皆、いつも通りご飯食べる?」
智穂「食べまーす!」
海斗「相変わらずすごい食欲だ。」
陽菜「よく太らないよね。羨ましい。」
心美「ってことで藍人、買い物してきて。」
藍人「買ってなかったのかい!(まあなんか今回は皆の飲み込みもいいし、この調子なら僕がいなくても大丈夫かな。)わかったよ。」
颯太「一人じゃ大変だろ。俺も行くぜ。」
智穂「私もー!」
藍人「お前ら勉強いやなだけでしょ。(まあいいか。)」
そうして僕らは家を出た。
栞「行ったよね?」
私は総司君たちが行ったことを確認して、心美さんたちに本題を持ち掛けた。
栞「心美さん、大和さん、鈴さん。ちょっとお願いがあるのですが。」
鈴「ん?どうしたの?」
陽菜「実は、私たちで計画していることがあって。」
大和「へえ、なんか面白そうだね。」
心美「またあなたはそう言って。で、どんな内容なの?」
栞「それは……」
~計画説明中~
鈴「面白そう!そろそろ驚かせたかったところなんだよね。」
大和「あいつにこんないい友達ができるとは。喜ばしいことだ。」
心美「もちろん協力するわ!」
栞「ありがとうございます!」
こうして、見事に僕だけがはぶられたのだった。全く、ひどい話だ。
次回
計画実行!