第16話 憧れと感謝
栞が藍人のファンの理由が判明する。
藍人「ふぅ。(やっぱり風呂はいいな。)」
僕は疲れを取るために温泉に入っていた。
颯太「あ、藍人さん。」
海斗「藍人さんも来てたんですね。」
藍人「あぁ、どうも。」
その時、丁度3人が入ってきた。
蓮「しっかし疲れたな。早く風呂に浸かりたい。」
海斗「おい、まずシャワーを浴びろ!」
藍人「(風呂くらい静かに出来ないのか?)」
でも、何故かこれくらいがいいと思ってしまってるな。
颯太「あの、藍人さん。」
藍人「ん?どうしたの?」
その時、颯太が声をかけてきた。
颯太「藍人さんは、なんで俳優やってるんですか?」
藍人「あぁ、それね。実は僕、親に言われて俳優になったんだ。」
颯太「え?そうなんですか。」
藍人「うん。実はね...」
そして僕は、自分の俳優になるまでの経緯を話た。
颯太「へぇ。そうだったんですか。」
海斗「おい、なんか楽しそうだな。その話、俺らも混ぜてくれ。」
蓮「俺も!俺も!」
藍人「(やれやれ。)」
前言撤回。やっぱりこの騒がしさには慣れないな。
そして温泉から出た僕達は、食事シーンを撮影した。
栞「これ美味しい!ほら、藍人さんも!」
藍人「え?あ、はい。」
颯太「ぐぬぬぬぬぬ。」
海斗「颯太、クールダウン。」
智穂「もっともっと!」
蓮「食いすぎじゃない?」
煌雅「いいな。学生って感じだ。」
そのまま撮影を終えた私達はそのまま大人達とご飯を食べ続けていた。
智穂「うまい!うまい!」
海斗「既視感が。」
蓮「というか、よく食べられるな。」
颯太「こいつは昔から化け物いぶくろなんだよ。」
智穂「だーれーが化け物だってー?」
颯太「あ、いやこれは、その。」
煌雅「おーい、飲んでるかー?」
海斗「うぉ!監督?僕ら学生ですよ。」
煌雅「あぁ、そうだったな!わっはっは!」
栞「監督、飲んでるんですか?」
煌雅「あぁ、今日は機嫌がよくてな!」
栞「はぁ。そうですか。」
響「わーたしも飲んでまーすよ。」
栞「えぇ。(なんで響まで。)ん?そういえば藍人さんは?」
煌雅「あぁ、あいつなら外で涼んでるぞ。」
栞「そうですか。」
響「ん〜?どこに行くんです?」
栞「私も涼みに行ってきます。」
そうして私はその部屋を出た。
栞「何処にいるかな?」
藍人さんを探していると、外で星空を見てる藍人さんがいた。
栞「藍人さん。」
藍人「ん?栞さん。どうしました?」
栞「いえ、私も涼みに。藍人さんも?」
藍人「あぁ、今日監督機嫌よかったじゃないですか。ああいう時はお酒飲んでだる絡みされるので早めに逃げてるんですよ。」
栞「流石の経験値ですね。」
しばらく沈黙が続いた。
藍人「なんか、こんなこと前にもありましたね。」
栞「そうですね。今年のことのはずなのになんか懐かしく感じます。」
藍人「まぁ最近は忙しいですからね。」
栞「でも楽しいですから!(藍人さんといれるから!)」
藍人「流石ですね。そんなにモチベーションを保てるなんて。」
栞「....それは藍人さんのおかげですよ。」
藍人「え?」
まだ私がアイドルになって間もない頃、
スタッフ「OKです。お疲れ様でした。」
栞「ふぅ(疲れた。)」
メンバー1「ねぇ、昨日のあれ見た?」
メンバー2「見た見た!やっぱりすごいよね!」
当時の私はアイドル活動に必死だったのもあり、あまりメンバーと交友することがなかった。
スタッフ「次は藍人さんが来ますけど、見学していきますか?」
メンバー1「いいんですか!?見たいです!」
栞「(藍人?誰だろ。)」
そんな疑問を持っていた時、ドアが開いた。
藍人「どうも、こんにちは。」
メンバー2「キャーー!来たよ来たよ!」
栞「(あの人が藍人さん?)」
スタッフ「では藍人さん。よろしくお願いします。」
藍人「はい。お願いします。」
そして藍人さんの撮影が始まった。
藍人「大丈夫ですか?ほら、手をどうぞ。」
栞「(あ...)」
その時、私は今まで感じたことのない感覚に襲われた。心臓の鼓動が早くなり、顔が熱くなった。
栞「(かっこいいな...)」
顔もないとは言わないが、それ以上に彼の演技に惹かれたのだ。彼の演技はそのセリフや動作の一つ一つに感情がこもっていて、本当にその場面に居合わせるようだった。
スタッフ「OKです!お疲れ様です!」
藍人「お疲れ様です。」
そのまま見とれていたら、いつの間にか撮影は終わっていた。
栞「(凄かったなぁ。)」
そこから私は藍人さんのファンになった。それは同時に、私の憧れにもなった。
栞「(私もいつか、あんな演技してみたいな。)」
アイドルなのに、そんな風に思ったのだ。
それからしばらく経ち、ミュージックビデオを撮影している時だった。
栞「あっ!」
スタッフ「栞ちゃん。大丈夫?」
栞「は、はい。すいません。」
スタッフ「無理は禁物だよ。少し休憩しておいで。」
栞「わ、分かりました。」
そうして私が少し休んでいる時だった。
藍人「お疲れ様です。」
栞「え?あ、どうも。」
そこには藍人さんがいた。なんでも、たまたま近くで撮影があって休憩がてらに少し寄ったとの事だった。
藍人「しかし凄いですね。流石今人気のアイドルです。」
栞「い、いえ。それほどでも。(どうしよう。何話せば。)」
私がそんな風に戸惑っていると、
藍人「栞さんは、アイドル活動は楽しいですか?」
栞「え?」
急にそんなことを聞かれてしまい、私は少し戸惑った。
栞「まぁ、楽しくやれてると思います。」
藍人「そうですか。それはいい事ですね。」
すると藍人さんが少し近づいてきた。
藍人「やっぱり仕事は楽しむに限ります。無理せずやりたいことをやるのがおすすめですよ。」
栞「は、はい。」
藍人「では、僕はこれで。」
そう言って藍人さんは去っていった。
栞「(いい人だなぁ。)」
メンバー1「しーおーりー?」
メンバー2「ちょっと話をしましょうか?」
栞「え?」
そのまま色々話を聞かれたが、そうしていく内に打ち解けていき、今ではファン仲間となった。
栞「私のメンバーとの関係も、藍人さんのおかげで良くなりましたし、今こうして楽しめているのはやりたい事をやるようになったからですよ。」
もしあの時、あの言葉を言われなかったら、私は親に認められるためにどんなに嫌なことでもやろうとしただろう。
藍人「そうだったんですか。(そういえばそんなこともあったような。)」
栞「だから、今の私が楽しみながら仕事を出来ているのは藍人さんのおかげなんです。本当に感謝してますよ。」
藍人「いえ、僕は大したことは。」
栞「私にとっては大した事なんですよ。(まぁ、そんな謙遜するところも素敵なんだけどね!)」
その時、スマホが鳴った。
栞「はい。」
海斗「栞さん!早く戻ってきて!皆がテンション高すぎて収集つかないの!」
栞「わ、わかったよ。」
藍人「その反応は、何か面倒な事になってますね?」
栞「お察しの通りですよ。」
藍人「なら、僕も行きましょう。監督の相手くらいなら引き受けますよ。」
栞「そうして頂けると助かります。」
もっと話したかったけど、仕方がない。そう思いながら戻ろうとした時、
藍人「あ、そうだ。栞さん。」
栞「?どうしました?」
藍人「ありがとうございます。こんな僕のファンになってくれて。これはほんの気持ちです。もし良かったら。」
そう言って彼はどこからかサイン用紙を取り出し、自身のサインを書いて私に渡してきた。
栞「!!!!!!!」
藍人「あれ?栞さん?もしもーし。」
栞「.......(サインだ。まさか貰えるなんて....)」
次の瞬間、私の脳みそはオーバーヒートし後ろに倒れそうになる。
藍人「ちょちょちょ!」
藍人さんがギリギリでそれを支える。
藍人「大丈夫ですか?」
栞「.....」
私はあまりのことに何も言えずにいた。
藍人「(全く、しょうがない人だ。)」
私はそのまま、藍人さんにお姫様だっこされながら部屋に連れていかれたのだった。
次回!
次なるイベントが!?