第14話 再びの撮影
果たして何があったのか!
僕は再び記憶を辿る。あれは夜中のことだった。
藍人「ん、んん。」
時計を見ると夜中の2時。何故か僕は早く目が覚めてしまった。
藍人「(こうなったら中々眠れないんだよなぁ。)」
そう思い僕がスマホを開くと、向かい側の布団が動いた。
藍人「(あれ?あの布団は。)栞さん?」
栞「あはは、バレちゃったか。」
そう言って栞さんが布団から出てくる。
藍人「どうしたんですか、こんな遅い時間まで。」
栞「じ、実はね。怖い話聞いたら寝れなくなっちゃって。」
藍人「(ああ、そういう事か。)」
栞「ねぇ、少し雑談に付き合ってくれない?」
藍人「ええ、いいですよ。」
こちらとしても眠くなるまで暇だったので丁度いい。
栞「私ね、こういうの憧れてたんだ。友達の家に泊まって夜中に雑談するの。」
藍人「そうだったんですか。」
栞「まぁアイドルって立場になると友達と関わるだけで気をはらなきゃいけなくて。」
藍人「今は大丈夫なんですか。」
栞「まぁバレないようにしてるからね。」
藍人「それバレたら終わりなんじゃ。」
栞「大丈夫だよ。事務所側も私に青春を楽しんで欲しいって言ってたし。」
藍人「なら安心(?)ですかね。」
そこから雑談は続き、30分程したら栞さんは眠ってしまった。
藍人「僕も寝ようかな。」
そうして僕が目を瞑ろうとした時、
藍人「!?」
突然手に何かが触れた。いや、握られていた。
藍人「(まさかな...)」
恐る恐る握られてる方向を見ると、栞さんが僕の手を握っていた。
藍人「(いや!何がどうしてこうなった!)」
何とか手を離してもらおうとしたが、思ったより握る力が強かった。
藍人「(もういいや。)」
僕はそのまま眠りに落ちた。
藍人「(僕め、面倒なことを放棄しやがって。)」
過去の自分を恨みながらも現状の打開策を模索していると
栞「んん、朝?」
栞さんが目を覚ました。
栞「あ、総司くん。おはよう。」
藍人「お、おはようございます。」
僕が挨拶をすると栞さんも手に違和感を覚えたのか手の方を見る。
栞「うわぁ!な、なんで私、総司くんの手を!?」
藍人「僕にも分かりませんよ。」
栞「え、えっと。ごめんね?」
藍人「いえ、気にしないでください。」
そこから少し気まずい雰囲気が流れる。
藍人「と、とりあえず、朝ごはん作りますね。」
栞「あ、うん。お願い。」
そうして僕は部屋を後にした。
栞「......(なんで手を握ってたんだろ。)」
〜藍人料理制作中〜
藍人「出来ましたよー。」
栞「ありがと。じゃあ2人も起こさないとね。」
そうして栞さんが体を揺らしながら2人に声をかける。
栞「あれ?起きないね。」
藍人「昨日どれだけ続いたんでしょうね。」
そこからしばらく起こそうと試みたものの一向に起きる気配がなかった。
藍人「仕方ないですね。ご飯冷めちゃいますし、栞さんだけでも先に食べちゃいます?」
栞「そうしようかな。」
そう言って栞さんは下に降りていった。
藍人「さて、どうやって起こそうかな。」
栞「いただきまーす。」
今日でお泊まり会が終わってしまう。ちょっと名残惜しいけど楽しかったなぁ。
鈴「あ、栞ちゃん。おはよう。」
その時、鈴さんが降りてきた。
栞「おはようございます。鈴さん。」
鈴「あれ?総司は?」
栞「まだ起きてない2人を起こしてます。」
鈴「相変わらず、お母さんよりお母さんしてるなー。」
栞「総司くんは昔からお母さん気質なんですか?」
鈴「んーそうだね。我が家で一番のまとも枠だからね。」
栞「(まぁ総司くん真面目だもんなー。)」
鈴「ねぇ、栞ちゃん的に総司はどうなの?」
栞「どう、というのは?」
鈴「恋愛対象的にどうなのかってこと。」
栞「な、ななななにを急に!」
鈴「いやぁ、アイドルの栞ちゃんも恋愛とか興味あるのかなって。」
栞「えっと、その。(ええありますよ!そりゃありますとも!)」
私だって年頃の高校生。恋愛の一つや二つして見たいと思うに決まってる。
栞「総司くんは、よく話を聞いてくれて、料理も上手で、優しくて、普通にいい人だと思います。」
鈴「おー、そうかそうか。なるほどねー。(全く!隅に置けないなあいつも!)」
栞「だからこそ、何ですが。」
鈴「?」
栞「なんであまり関わりを持とうとしないのかなって。」
鈴「あー、そういう事。」
栞「一応、彼の過去は少し聞きました。とても大変だったと。」
鈴「へぇ。(あいつが過去を話したなんて。流石に全部じゃないだろうけど、一部を話してるって感じか。)」
少し間を置いて鈴さんが話し出した。
鈴「あいつね。元から警戒心強いの。それが中学時代の出来事で最大化しちゃった感じかな。」
栞「そうなんですか?」
鈴「多分、家族を含めても素を見せてないんじゃないかな?」
栞「それは大分警戒してますね。」
家族にも素を見せないなんて、相当警戒してるな。
鈴「あいつ、昔はもっと笑顔が多かったんだよ。でも、中学の出来事のせいで自然に笑うことがほとんどなくなったんだ。」
栞「そうなんですか。」
鈴「だからさ。」
栞「?」
鈴「栞ちゃんさえ良ければ、総司とこれからも仲良くしてくれない?」
栞「え?」
鈴「もちろん、無理にとは言わないからさ。」
栞「あ、いえいえ。全然嫌とかではないですよ。」
むしろ、これからも仲良くして欲しいくらいだ。彼は高校生になってから初めてできた友達だ。大切にしたいと思っている。
栞「私も、彼には色々と助けられたので。」
鈴「そうなんだ。」
できる限りのことをしてあげよう。彼のためにも。
鈴「ところで、私のご飯は?」
栞「作ってないみたいですね。」
鈴「なんで!?」
颯太「じゃ、お邪魔しました。」
智穂「お世話になりました!」
心美「また来てねー。」
栞「はい!機会があればぜひ!」
颯太「じゃあ総司、またなー。」
藍人「あぁ、またなー。」
そうして3人は帰って行った。
鈴「しっかしみんないい子だったなぁ。どっかの弟と違って。」
藍人「今日のおやつは手のこったの作ろうと思ってたけど辞めようかな。」
鈴「あーー!ごめんなさいごめんなさい!甘いスイーツ食べたいです許してください!」
藍人「全く(いつもこうなるんだからいい加減学ばないのかね。)」
鈴「あ、そう言えば聞いたよ。自分の過去少し話したんだって?」
藍人「.....あぁ、栞さんにね。」
鈴「珍しいこともあるね。あんたが人に過去を話すなんて。絶対そう言うの嫌いでしょ?」
藍人「まぁそうなんだけどね。」
あの人を詳しく知って、この人になら話してもいいかなって思ったんだよな。
藍人「っと、できたよ。」
鈴「やった!」
そして夏休みが始まってから数日が経ったある日、僕は監督に呼び出されていた。
監督「おお、来たか。」
藍人「どうしました?なんか急ぎの撮影とかありましたっけ?」
忘れてるかもしれないが、僕はこれでも一応俳優である。仕事も隙間時間を見つけてこなしている。
監督「いや、そうじゃない。覚えてるだろ?草津に行ったあの撮影。」
藍人「あぁ、あの思ってたより視聴率が良かったやつですか?」
監督「ド直球にいうな。まぁいいか。前にも言ったと思うが、あの番組は視聴者にSNSでどんなペアが見たいかを募っているんだ。」
藍人「はい、知ってますけど。....って!まさか!」
監督「そのまさかだ。またお前と栞ちゃんのペアを見たいという声が続出したんだ。」
藍人「マジですか。」
なんということだ。まさかそんなに要望が多いとは。
藍人「というか、今の栞さんは色んなところから引っ張りだこです。流石にスケジュール抑えるのは厳しいんじゃ。」
監督「俺もそう思ったけど、ダメ元で電話かけたら、
栞『絶対行きます!なんなら休日返上でも!』
って言ってたぞ。」
藍人「......」
そうだった。しばらく見てないから忘れてたけど、彼女僕のファンだった。
監督「まぁそう言う事だから、今回もよろしく頼むぞ。」
藍人「...はぁ、わかりましたよ。それで、行先は決まってるんですか?」
監督「ふっふっふっ、聞いて驚け。今回の行先は静岡だ!」
前回に比べて大分遠いな。
藍人「富士山に登れと?」
監督「そゆこと。」
藍人「いいんですか?そんなベタな場所をここで使って。」
監督「別に同じ場所に行かないなんて一言も言ってないからな。ネタが尽きるわけじゃない。」
藍人「まぁ、それでいいならいいんですが。」
監督「よし!じゃあ決まりだな。」
こうして、またあの撮影が始まることに頭を悩ませることになったのだった。
次回!
撮影編
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