第13話 夏休み
第2章開幕!
時期がピッタリ!
藍人「んん、もう朝か。」
僕はいつもの様に支度をする為に体を起こそうとする。その時、
颯太「むにゃむにゃ。」
智穂「んん〜、お母さん、私はまだ太ってない...」
栞「zzzzzz」
藍人「....は?」
何故か友人たちが家にいるのだ。何がどうなっているんだ?
藍人「(いや待て、思い出せ。)」
僕は少し記憶を辿ることにした。
そう、あれは夏休み前に起きた出来事だった。
智穂「お泊まり会がしたい!」
藍人「そうか。楽しんでこいよー。」
智穂「待ちなさいよ。話は最後まで聞きなさい。」
そう言って僕は呼び止められる。
智穂「折角の高校生活の夏休みなのよ?楽しまなきゃ損じゃない。」
藍人「んな事僕に言われても。」
智穂「と、言うことで仲のいい4人でお泊まり会をすることにしたわ。」
藍人「いや、本人達の許可は?」
智穂「これからよ。」
じゃあなんで決まった事のように話してたんだ。
智穂「でね、総司には栞さんを誘って欲しいの。」
藍人「え?なんで。」
智穂「私達みたいなやつが誘おうとしても、断られるのがオチだけど、あんたからの頼みは受けてくれると思うの。」
藍人「なんだよその勘。」
智穂「だってあんたといる栞さんの笑顔が自然なんだもん。」
藍人「そうか?」
智穂「そうなの!とにかく、お願いね。あ、あんたの拒否権はないって颯太から聞いてるから。」
藍人「(あれってあの時だけじゃないのか?)」
こうして僕は栞さんを誘うことになった。
藍人「.....ということなんですが、どうですか?」
栞「え?お泊まり会!したいしたい!」
藍人「(意外と乗り気だ。)」
栞「私、夏休み中はスケジュールいっぱいだから息抜きしたかったんだよね。」
藍人「そうですか。(まぁ確かに、忙しいだろうなこの時期は。)」
あの番組以降、彼女は芸能会でさらに名が売れた。今では色んなところから出演依頼が出てるって噂だ。
藍人「ほんと、アイドルって大変ですね。」
栞「でも、その分やりがいもあるよ。」
藍人「辛くないんですか?」
栞「まぁ確かに、辛い時がないといえば嘘になるけど。でも、」
すると栞さんが少し間を置いて言った。
栞「こんな私のファンの為にも、期待には応えないといけないからね!」
そう彼女は満面の笑みで言った。
藍人「.....そうですか。」
栞「ところで、どこでお泊まりするの?」
藍人「僕の家だそうです。拒否権が消えてたので。」
栞「ということは、総司くんの料理が食べられるってこと!?絶対行く!」
藍人「そんなに気に入ってくれたんですか?」
栞「うん!毎日作りに来て欲しいくらい。」
藍人「それは光栄ですね。」
こうして、お泊まり会が決定したのだった。
そんなこんなで、お泊まり会当日。
心美「まさか藍人がお泊まり会をする友達を連れて来るとは。」
藍人「母さんは僕をなんだと思ってるの。」
心美「いや、親の気持ちにもなってみなさいよ。あんなことがあった後に友達ができるかなんて不安にもなるでしょう。」
藍人「まぁ、そうなのかもだけど。ところで、父さん達は?」
心美「お父さんはお仕事だけど、鈴の方は知らないわね。」
藍人「そう。」
そんな会話をしていると、玄関のインターホンが鳴る。
藍人「はーい。」
僕がそう言ってドアを開けると、
智穂「来たわよ。」
颯太「2回目だな。」
そこには智穂と颯太がいた。
藍人「あれ?栞さんは?」
智穂「私達が一緒に来るとお思い?」
藍人「あ、そうでしたね。」
そういえば前、颯太も同じようなこと言ってたなぁ。
栞「お待たせー。」
その時、栞さんが向かってくるのが見えた。
栞「今回は誘ってくれてありがとうね。」
智穂「いえ、滅相もございません。」
颯太「(やべぇ、可愛すぎる。あ、また倒れそう。)」
心美「総司ー。早く中に入れてあげなさーい。」
藍人「はーい。さ、どうぞ。」
栞・颯太・智穂「お邪魔しまーす。」
そうして3人が中に入り、リビングへ向かう。
心美「栞ちゃんに颯太くん。また会えて嬉しいわ。」
栞「ご無沙汰してます、心美さん。」
颯太「どうも。」
智穂「初めまして。3人と同じクラスの佐久間智穂です。本日はお世話になります。」
心美「こちらこそ。わざわざ来てくれてありがとうね。ご飯の支度するから少し待っててね。」
颯太「なぁ総司。お前の部屋になんかねぇの?」
藍人「それ知ってて言ってないか?」
智穂「ひとまず荷物を置かせて貰いましょう。」
栞「そうだね。」
心美「総司、料理よろしくね。」
藍人「はぁ、わかったよ。(なんで自分が作るかのように言ったんだよ。)」
〜藍人(総司)料理制作中〜
藍人「ほら、できたぞ。」
栞「わぁ、すごい!」
颯太「思ったよりしっかりしてるな。」
智穂「まぁでも問題は味だからね。」
心美「さぁ、冷めないうちに食べましょうか。」
全員「いただきまーす。」
そう言って4人が料理を口に運ぶ。
颯太「な、なんだこれ!?うめぇ!」
智穂「見た目はなんの変哲もない焼き鮭なのに!」
栞「ん〜〜♪(やっぱりこの味だよねー。)」
心美「昔から料理の手伝いをお願いすることがあってね。そこで才能が開花したらしいのよ。」
颯太「そうなんですね。」
栞「心美さんが料理教えたんですか?」
心美「いや、私はほとんど何も言ってないわよ。」
智穂「まさかよ独学!すご。」
藍人「慣れだよ。やってりゃ誰でも上手くなるって。」
智穂「それ、煽りのつもり?」
藍人「なんでだよ。」
などと会話していると、
?「ただいまー。」
誰かが帰ってきた声がした。
心美「あら、意外と早かったわね。」
藍人「おかえり、姉さん。」
颯太・智穂・栞「姉さん!?」
そこにいたのは僕の姉である、皇鈴だった。現在は大学生で、心理学などを中心に学んでいる。
鈴「あれ?この子達は?」
心美「総司のお友達よ。」
鈴「(総司?ああ、そういう事ね。)そうなんだ。初めまして、月下鈴です。気軽に鈴さんって呼んでね。」
姉さんは昔から状況把握能力が高いのだ。
栞「初めまして、夢咲栞です。」
智穂「佐久間智穂です。」
颯太「久遠颯太です。」
鈴「え?アイドル!?総司にアイドルの友達!?」
藍人「失礼じゃない?」
鈴「いやだって友達なんて作れなさそうなのに。」
藍人「姉さん。お腹いっぱいなら早く言ってくれればいいのに。ご飯は抜きで良さそうだね。」
鈴「あーーー、嘘嘘!ごめんなさい!謝るからご飯なしは許して〜。」
颯太「...これは平常運転ですか?」
心美「そうだよー。よくある流れの1つだし。」
智穂「随分賑やかなんですね。」
栞「あ、あはは。」
結局あの後、姉さんの分の料理をしっかり作ったのだった。
颯太「結構いい時間だな。」
時刻は夜の11時。全員、風呂も歯磨きも済ませ、良い子は寝る時間である。
智穂「なら、布団を引きましょうか。」
我が家は母と父の部屋、姉の部屋、僕の部屋の3つしかなく、親の部屋には行かせられないし、姉の部屋はと言うと
鈴「あ、あはは。」
藍人「....なんでこんなになるまでほっといたの。」
そこには目も当てられないほど悲惨な現場があった。姉さんは大学生に入った頃
鈴「私が部屋の管理もするから勝手に入らないで。」
と言っていたので、頑張っているのだろうと思っていたが、現実はこうである。
藍人「自分で片してよね。」
鈴「手伝ってくれないの!?」
藍人「自分の部屋も管理するんでしょ?」
そう言って僕は姉部屋を後にした。
藍人「せめて姉の部屋がしっかりしてれば。」
栞「ま、まぁ仕方ないよ。急だったんだし。」
そういうわけで4人で布団を敷いて寝ることになった。ちなみに僕がベットで寝ないのは、
颯太「折角なんだから全員布団で寝ようぜ。」
と、言われたからである。
智穂「さて、じゃあ怖い話をしましょうか。」
颯太「やっぱりそうなるのか。」
栞「こ、怖い話か。」
藍人「修学旅行みたいなことするじゃん。」
智穂「まず私からね。」
そうして怖い話が始まった。僕は幽霊とかそういう類は大丈夫な方である。だが、
栞「ガクガクガクガク」
颯太「オロオロオロオロ」
藍人「(めっちゃ怖がるじゃん)」
2人はそうではないらしい。
智穂「っと、これで私のは終わりかな。」
智穂が話し終えた頃にはすっかり2人とも意気消沈していた。
智穂「おーい、生きてるかー。」
颯太「な、なんでそんな話思いつくんだよ。」
藍人「大丈夫ですか?栞さん。」
栞「うぅ、怖かったよ。」
こりゃ続行は無理だな。
颯太「な、なんか別のやつやろうぜ!トランプとか。」
栞「い、いいね。そうしようか」
僕らはその後、カードゲームで遊んだ。UNOやトランプくらいなら僕の部屋にもある。
そして気づけば夜の1時になっていた。
智穂「あー!もう!なんでないのよ!」
颯太「そりゃ俺のセリフだ。総司!山札補給してくれ!」
総司「はいはい。」
あれからしばらくこの調子だ。僕と栞さんはもう上がっているが、この2人が上がる気配が全くない。
栞「随分と長丁場になったね。」
藍人「2人の性格的に勝ち負けがつくまで続きますよ。」
栞「じゃあ先に寝ちゃおうかな。」
そう言って僕らは先に寝る準備をした。
栞「じゃあおやすみ。今日はありがとうね。」
藍人「いえ、こちらこそ。おやすみなさい。」
そうして僕らは眠りに着いたのだった。
藍人「(そういえばそうだった様な気がする。)」
記憶から戻ってきた僕は冷静に周りを見渡す。
藍人「ん?」
すると、手に何か違和感を覚えた。
藍人「え?」
その手はがっちりと栞さんによってつかまれていたのだ。
藍人「(いや、どうしてこうなった。)」
僕は咄嗟に、もう一度記憶の中に入り込むことにした。
次回!
再び始まる...