第12話 誰かのために
最終種目でトラブルが!?
栞さんからの報告を受けて、僕は急いで保健室へ向かった。
藍人「海斗くん!大丈夫?」
海斗「あはは、やられちゃった。」
藍人「やられたって...まさか他クラスのやつが?」
海斗「うん。廊下歩いてたら急に襲われてね。そのせいで足を捻っちゃったんだ。」
栞「何それ!?ちょっと私探してくる。」
海斗「その必要はないよ。颯太と智穂が今先生に報告してる。」
その時、保健室のドアが勢いよく開いた。
?「海斗!大丈夫か?」
海斗「おお、蓮。来てくれたのか。」
蓮「当たり前だ!聞いたぞ、他クラスからの襲撃で足をやられたって。」
海斗「あぁ、悪いがリレーは出れそうにない。」
蓮「そうか。」
そう言う蓮くんの拳は強く握られていた。
海斗「2人とも、こいつは俺のライバルの桐ヶ谷蓮だ。」
蓮「あ、ごめん。自己紹介もせずに。」
栞「いえいえ、気にしないでください。」
蓮「しししし栞さん!?海斗!てめぇ栞さんとどういう関係だ!?」
そう言って蓮くんが海斗くんの肩を掴み体を揺らす。
海斗「おおお、落ち着け!クラス対抗リレーで一緒に走るからってだけだ。」
蓮「なんだ、そういう事か。」
そう言って蓮くんは手を離した。
蓮「それで、君は誰かな?」
藍人「初めまして、2人と同じクラスの月下総司です。」
海斗「借り物競争で栞さんを連れてたやつだよ。」
蓮「ああ、あの。周りからすごい目で見られてたな。」
藍人「あ、あはは。(見られたくてやったんじゃないんだけどなぁ。)」
蓮「で、クラス対抗リレーの穴埋めはどうするつもりだ?」
海斗「あぁ、それなんだがな。」
次の瞬間、海斗くんが驚きの言葉を放つ。
海斗「総司くん。代わりに走ってくれない?」
藍人「....え?」
突然言われた言葉に頭が混乱する。
藍人「ちょ、ちょっと待ってよ。なんで僕なの?僕より速い人はいっぱいいるよ?」
海斗「確かにそうかもしれない。でも、それでも僕は君に頼みたいんだ。」
藍人「い、いや。」
蓮「海斗がそこまで言うなら俺も賛成するぜ。」
栞「私もいいと思う。連れていかれた身だけどすごく速かったし。」
藍人「.......はぁ、わかったよ。(僕って押しに弱いよなぁ。)」
海斗「ありがとう。頼むね。」
藍人「できる限り頑張るよ。」
こうして、突如クラス対抗リレーに出ることになったのだった。
颯太「代走者ってお前かよ!」
智穂「言われた時びっくりしたわよ。」
藍人「あ、あはは。」
あの後、先生への報告を終えた2人に合流し、事の顛末を知らせた。
栞「ま、まぁ海斗くんが決めた人だし、何とかなるでしょ。」
颯太「はい!そうですね!」
智穂「同感だね。」
藍人「お前らなぁ(態度変わりすぎだろ。)」
そんな事を話していた時、観客席で人が特定の場所で集まってるのが見えた。
藍人「人があんなに集まるなんて。何かあったのか?」
颯太「ん?お、おい!あそこにいる人って。」
智穂「え?あ!ほんとだ!こうしちゃいれないね。」
そう言って2人が走り出す。
藍人「?誰がいるの?」
栞「あ、あの人....」
人混みの中で僕は誰がいるのか覗いた。
監督「はいはい、皆さん。落ち着いてください。後でいくらでもサイン会はしますから。」
藍人「..........(いやなんでここに!?)」
そこに居たのは、いつもお世話になってる監督だった。
栞「あの監督、あんなに人気だったんだ。」
藍人「そうだったんですね。とりあえず、2人とも呼び戻しますか。」
こうして2人を呼び戻し、クラス対抗リレーの準備をした。
颯太「よし!勝つぞ!」
智穂「当たり前よ!」
?「足を引っ張らないように頑張るぜ。」
彼は水無瀬翔太郎。残り1枠のリレーの走者だ。
栞「総司くん。よろしくね。」
藍人「はい、頑張ります。」
先生「第1走者、準備しろー。」
そうして各々配置についた。
先生「よーい、ドン!(発砲音。)」
颯太「しゃああ!独走してやる!」
藍人「気合い入ってんなぁ。」
翔太郎「総司、お前50m走どれくらいだ?」
藍人「だいたい6.9とかかな。」
翔太郎「速くね?運動部だっけ?」
藍人「いや、帰宅部だ。」
翔太郎「マジかよ。」
そうこうしてる間に、第1走者が走り終えていた。
颯太「このリード、維持してくれよ。」
智穂「わかってるわよ。」
第2走者の智穂がバトンを受け取り、トップのまま走り出した。
智穂「(よし、このまま!)」
女子生徒「悪いけど、私も負けられないの。」
だが、他クラスの生徒が追いついてきた。
智穂「くっ!(速い!でも、追い抜かれてたまるか!)」
そのまま並走が続き、翔太郎くんの番になった。
翔太郎「じゃあ行ってくるわ。」
翔太郎くんがバトンを受け取ると、再び他クラスと間がひらいた。
藍人「おお、速いな。」
栞「すごい!あんなに速いなんて!」
先生「次の走者、準備してください。」
栞「よし!(練習の成果を見せる!)」
翔太郎「栞さん!お願いします!」
そうして栞さんが走り出した。他の走者との間がひらく。
生徒達
「きゃー栞さん素敵!」
「うぉぉ!頑張れー!」
栞「(よし!このまま!)」
そうしてもう少しでバトンパスという時、
栞「きゃ!」
栞さんの足元が狂い、転んでしまった。足元には空のペットボトルがあった。
颯太「栞さん!」
智穂「くっ!あのペットボトルどこから。」
それ見逃しに他の生徒が栞さんを抜いていく。
栞「(このままじゃ!)」
栞さんが再び立ち上がろうとした時、
栞「痛!(あ、足が。)」
蓮「ありゃりゃ、足を捻っちゃったか。」
藍人「栞さん...」
蓮「残念だけど、先に行くよ。」
栞「(....どうしよう。このままじゃ最下位になっちゃう。折角みんなが繋いだのに!)」
海斗「栞さん...」
どうなるかとクラス全員が困惑していた時、
藍人「栞さん!」
栞「え?」
僕は栞さんのすぐそばまで来ていた。
栞「(総司くん?なんでここまで)」
藍人「バトンを!」
栞「!お願い!」
最終走者は他の走者と違い、1周しなければならない。今から追いつくのは難しいだろう。だが、そんな事関係ない!ここまでしっかり練習してきた彼女がこんなところで終わってしまうのは絶対にダメだ。
藍人「(久々に本気出すか。)」
次の瞬間、僕は全力で走り出す。
颯太「うぇ!?マジかよ。あいつあんなに速いのか!?」
智穂「嘘....」
翔太郎「ははっ!やべえなあいつ。」
栞「....凄い!」
海斗「総司くん....」
僕は次々と走者を抜いていく。ウィッグがズレようがなんだろうがこのリレーで勝つために全力を出した。
蓮「うぉ、まじか!?」
後ろを振り向いた蓮くんがこちらに気づく。
藍人「1位は貰うよ!」
蓮「負けるかぁ!」
そこから僕らの並走が始まる。
クラスメイト
「うぉぉぉ!行けぇぇぇ!」
「負けるなぁぁぁぁ!」
監督「あいつ...(あんなにマジになるのはいつ以来だ?)」
颯太「行けぇぇぇ!総司!」
智穂「頑張れー!」
翔太郎「ぶち抜けぇぇぇ!」
栞「総司くん!勝って!」
藍人「うぉぉぉぉぉ!」
蓮「な!(まだ速くなるのかよ!やばい!これ以上は...)....ははっ、負けたよ。」
その瞬間、ゴールテープが切られた。
放送「ゴール!大逆転を制したのは白組だぁぁぁ!」
その瞬間、会場が湧き上がった。
クラスメイト
「うぉぉぉ!すげぇぇぇ!」
「やったぁぁぁ!」
海斗「まさか蓮に勝つとは。」
颯太「あいつ!やりやがった!」
智穂「やった!勝った!勝った!」
翔太郎「ほんと、すげぇな。」
藍人「はぁ、はぁ。(つ、疲れた。)」
僕がその場に仰向きに倒れ込む。
蓮「いやぁ、凄かったよ。まさか負けるとは。」
藍人「蓮くん。」
蓮「蓮でいいよ。これから仲良くしてくれ。」
そう言って彼が手を伸ばした。
藍人「...うん。よろしくね!蓮!」
僕はその手を取り、立ち上がる。
栞「総司くん!」
その時、後ろから栞さんの声がした。
藍人「栞さん。って、うわぁ!」
その瞬間、急に栞さんが抱きついてきた。
栞「ありがとう、ほんとにありがとう....」
栞さんはそう言いながら涙を流していた。
藍人「.....お役に立てて何よりです。」
監督「....ふっ。(いい表情じゃねぇか。カメラで撮りたいくらいだ。)」
こうして、今年の体育祭は白組の優勝で終わった。
海斗「それじゃあ、体育祭優勝に乾杯!」
クラスメイト「乾杯!」
その日の放課後、僕らは体育祭の打ち上げに来ていた。
颯太「いやぁ、まさか勝てるとは思っなかったぜ。やるな総司。」
藍人「ははっ。まぁ任されたからね。」
智穂「にしても速かったわね。陸上部入る気ない?」
藍人「いや、遠慮しとくよ。(しかし、相変わらずだなぁ。疲れが溜まりそう。)」
僕がの目線には人に囲まれている栞さんがいた。
藍人「(ほんと、大変な人だなぁ。)」
海斗「やっほー、お疲れ様。」
藍人「海斗くん。足大丈夫?」
海斗「まだ少し痛いけど、何とかなってるよ。」
藍人「それはよかった。そういえば、襲撃した奴らはどうなったんだ?」
颯太「ああ、あの後もれなく全員判明して先生にこっぴどく叱られてたよ。」
智穂「当然よ。スポーツマンシップに反するのだから。」
海斗「まぁこれに懲りてもうあんなことしないことを願うけどな。」
智穂「寛大だなぁ。」
その時、栞さんが近寄ってきた。
栞「やっほー、皆おつかれー。」
颯太「栞さん!お疲れ様です!」
智穂「よく抜け出せましたね。」
栞「話したい人達がいるって言ったらみんなが道を開けてくれたよ。」
海斗「流石だなぁ。」
栞「それより、皆もっと食べなよ!」
そう言って栞さんがお皿に肉を置いていく。
颯太「あ、ありがとうございます!」
智穂「いただきま〜す」
海斗「智穂は栞さんが見てないだけでめっちゃ食べてるよ」
栞「はい、総司くんも。」
藍人「あ、ありがとうございます。」
栞「こっちこそ。今日はありがとう。かっこよかったよ!」
そう彼女は満面の笑みで言った。
藍人「(...そんな笑顔見れるなら頑張った甲斐があるかな。)」
颯太「そーうーじー?」
藍人「な、なんだよ。」
颯太「優勝したから抱きつかれたのは見逃したが、もう見過ごせねぇなぁ?」
海斗「お、落ち着いて!颯太くん!」
智穂「私は止める気ないけどね。」
海斗「智穂!?」
栞「ははっ!」
藍人「...はぁ(全く。)」
これも僕の青春になるなぁ、と思いながら僕はご飯を食べるのだった。
次回!
第2章開幕!