第11話 アクシデント
ついに開催!
藍人が取るお題とは。
颯太「総司、お前、覚悟はできてるな。」
藍人「あんなの偶然居合わせただけだ。そんなに怒らないでよ。」
颯太「いや、許さん!」
智穂「そこら辺にしなさいよ。時間がもったいない。」
颯太「でも!こいつは」
智穂「男子のテンションにはついていけないの。ほら、早く来て。」
颯太「くっ!命拾いしたな、総司」
そう言って颯太は連れていかれた。
藍人「何とか助かったか。」
病み上がりから体力作りのためにランニングなんてしてたから大丈夫かと思って来たらまさかこうなるとは。
藍人「(まぁでも、何とか支えられて良かった。)」
頑張るのはいいが、参加出来ないのは可哀想だからな。せっかくの高校生での体育祭なのだから参加すべきだ。
栞「(......今日は長めに休んどこ。)」
それから何日か体育祭練習があった。栞さんの体調も良くなった。そしてとうとう、本番当日となった。
体育祭委員「よっしゃあ!絶対勝つぞ!」
生徒達「おーー!」
藍人「(うるさいし暑い。)」
なんで皆こんなやる気があるのか知りたいくらいだ。と思っていたが、その理由はすぐわかった。
生徒達
「栞さん、見ててください!」
「私達が優勝に導きます!」
栞「うん。よろしくね、皆!」
颯太「ぐはぁ!」
智穂「颯太!?」
生徒達の中心には栞さんがいた。恐らくほとんどの生徒が栞さんにいい所を見せようと、躍起になってるのだろう。ちなみに僕らは白組だ。
放送「では、これより開会式を始めます。」
こうして、体育祭が始まった。
放送「では、第1種目の綱引きを始めます。」
颯太「よし、ちょっと休憩に」
藍人「早すぎだろ。」
自分の番ではないからとそそくさと涼みに行こうとする颯太を引き止める。
藍人「クラスメイトの応援とかしろよ。」
颯太「だって暑いじゃん。」
藍人「さっきのやる気はどうしたんだよ。」
僕らがそんな会話をしてると、栞さんが話しかけてきた。
栞「やっほー、2人とも。」
颯太「し、栞さん!」
藍人「どうしました?」
栞「いやぁ、さっきから囲まれるからちょっと逃げてきちゃった。」
藍人「(まぁ、あんなに囲まれてたらな。)」
颯太「にしても、綱引き頑張ってるな。でも、ちょっと負けてるなぁ」
藍人「(......あ、そうだ。)」
それを聞いて僕は1つの案を思いつく。
藍人「栞さん。こんなのどうでしょう。コソコソ」
栞「え?いいけど、そんなので上手くいくかなぁ。」
一方綱引き組は、
生徒達
「くっ!(このままじゃ負けるな。)」
「はぁ、はぁ。」
「も、もう限界。」
その時、観客席から声が聞こえる。
栞「皆ーがんばれー!」
その言葉を聞いた瞬間、全員のやる気が上がった。
綱引き組「うぉぉぉぉぉ!」
やる気が出たからか勢いで綱を引き、そのまま勝利した。
綱引き組「おっしゃぁぁぁ!」
栞「....ほんとに勝っちゃったよ。」
藍人「提案しといてなんですけど、皆単純過ぎですね。」
颯太「よし!このまま勝つぞ!」
放送「次は借り物競争です。選手の方は準備してください。」
颯太「ほら、行ってこい。」
栞「頑張ってね。」
藍人「まぁ、やれるだけやってきます。」
そうして僕は校庭の中央までやってきた。
藍人「(ん?なんか視線が痛いな。)」
周りを見ると、何人もの生徒が僕の方を睨んでいた。
栞「なんか、すごく睨まれてるね。」
颯太「多分体育祭練習中のことが噂になったんでしょうね。」
栞「....なんか君も睨んでない?」
颯太「気のせいです。」
藍人「(全く。勘弁してくれ。)」
そう思っていると借り物競争が始まった。
生徒達
「誰かメガネ貸して!」
「こっちにはヘアピンを!」
「刀とか誰が持ってんだよ!?」
藍人「(あの人、外れすぎるな。)」
そして僕の番が回ってきた。
「よーい、ドン!」
その言葉と共に僕らははしりだす。
藍人「(さて、お題は?)」
そうして僕が紙に書かれた内容を見る。
藍人「.....は?」
そこに書いてあった内容に僕は驚いた。
藍人「(いや、なんで!?最近僕こういうの多くない?)」
てか、このお題作った人、絶対あの人連れていかせる気で書いたよな。
藍人「(はぁ。また睨まれるな。)」
栞「総司くん、どうしたんだろ。」
颯太「ははっ、なんかとんでもない内容だったんでしょう。」
智穂「何やってるのよ。」
そんな風に話していると、総司くんが駆け寄ってきた。
総司「すみません、栞さん。とりあえず来てください。」
栞「え?私!?」
颯太「おい、総司。貴様...」
智穂「颯太、落ち着きなさい。抑えるのよ。」
総司「行きますよ。」
栞「え、えぇーー!?」
そのまま私は総司くんに連れていかれた。
「ゴール!1位は白組だぁー!」
総司「はぁ、何とかゴール出来ました。」
栞「う、うん。それで、お題は何?」
総司「これです。」
そう言って彼が見せた紙には『学校の人気者』と書いてあった。
栞「あ、そういう事。」
総司「全く、誰が書いたんですかねこんなの。」
栞「(私を人気者って思ってるんだ。)」
なんか嬉しいかも。
颯太「総司?お前は罪を重ねすぎた。」
藍人「今回に関しては僕も被害者だから!」
借り物競争が終わった後、僕は皆から詰められていた。
智穂「1位でゴールしたとはいえ、それとこれとは話が別。別に他に人気者はいるでしょ。」
颯太「よし、ギルティ。」
藍人「待て待て!」
止めて欲しい栞さんもいないし、どうしたものかと思っていると
体育祭委員「まぁみんなそんなに責めなくても。」
体育祭委員が止めに入ってくれたのだ。
体育祭委員「彼も悪気があった訳では無いんだからさ。」
颯太「まぁ、そこまで言うなら。」
他の生徒もその言葉に納得したのか次々と解散していく。
藍人「た、助かったよ。」
体育祭委員「災難だったね。てか総司くんってそんな声なんだ。あんまり話してるところ見たことないから知らなかったよ。」
そういえば、栞さんや颯太、智穂以外とは関わりなかったかな。
体育祭委員「俺は成瀬海斗。よろしくね。」
藍人「よ、よろしく。」
海斗「にしても、栞さんを連れても1位を取るなんて。総司くん足速いんだね。」
藍人「そんなでもないよ。」
あの監督、何故かアクション系をやらせてくること多かったから身体能力が上がったんだよな。
海斗「クラス対抗リレーとか出なくてよかったの?」
藍人「何となく余ってたの選んだだけだから。海斗くんは何の種目なの?」
海斗「俺はクラス対抗リレーだよ。これでも陸上部だからさ。」
藍人「そうなんだ。」
うちのクラス、陸上部多くね?
海斗「ライバルもいるから負けられないんだ。」
藍人「そっか。頑張ってね。」
海斗「うん。ありがとう。」
そう言って海斗くんは去っていった。
海斗「さて、飲み物でも買うか。」
そう思い廊下を歩いていると、
生徒「おい、そこのお前。」
何人かの生徒が海斗くんを囲った。
海斗「なんだよ。」
生徒「すまないが、お前らばかりにいい思いをさせる訳にはいかないんだ。」
海斗「くっ!」
その後の競技も順調に結果を残していき、いよいよ最後のクラス対抗リレーが始まる時間が迫った。
藍人「暑いなぁ。」
そんな事を思っていたら
栞「総司くん!大変!」
栞さんが慌てた様子で駆け寄ってきた。
藍人「どうしました?」
栞「クラス対抗リレーに出る予定の海斗くんが、怪我して走れないって!」
次回!
1章最終話!