第1話 普通の青春
新シリーズ開幕!
この世の人間には、必ず表と裏があるものだ。
立場の高い人間に気に入られるため。
学校で先生から好評価となるため。
自身の本性を隠すため。
例を挙げたらキリがない。当たり前だ。表裏の理由なんて人の数ほどあるのだから。
各言う僕も表と裏を使い分けている。
でないと、生きていけないからだ。
え?僕の理由だって?それは....
スタッフ「はいOK!藍人くん仕上がってるねー!いいよ!」
藍人「ありがとうございます。」
そう、俳優だからだ。僕の名は皇藍人。中学生の頃から俳優として活動している。と言っても、僕自身がやりたくて俳優になった訳では無い。
僕の両親は2人とも顔がよく、テレビにもよく出ていた。そんな2人の子供が、顔が悪い訳がなくその顔を見て俳優としてデビューさせようと決めたらしい。
全く、はた迷惑な話である。僕は今でこそこの仕事を楽しんでいるが、思春期真っ盛りの中学時代はろくに学校に行けず青春を何も知らずに育った。だから、高校では青春を経験するのが僕の目的だ。
スタッフ「OK!これで今日の分は終わったかな。」
藍人「お疲れ様でした。」
今日はドラマの撮影があり、この後はフリーとなっている。
スタッフ「そういえば、藍人くんもうすぐ高校の入学式だっけ?」
藍人「はい。来週の金曜日ですね。」
スタッフ「そっかそっか。人生で一度きりなんだから、楽しみなよ?」
....人生で一度きりか。中学もそうだったんだけどな。
監督「おお、藍人今日も良かったよ。」
藍人「ああ監督。ありがとうございます。」
監督「藍人ももう高校か。出来ることも増えるな(ニヤリ)」
なんだその顔は。嫌な予感しかしない。
監督「実は、今度新しい番組が始まるんだ。芸能人達に旅行させて見ようってやつ。そこの第1ゲストに藍人をだしたい。」
藍人「...え?」
なぜ俺なのだろうか。第一、そんな番組が本当に伸びるのか?
藍人「その番組、ホントに視聴率取れるんですか?」
監督「心配ない。最初はお前に出て貰うけど、2回目からはSNSで旅行して欲しい人を投票してもらうんだ。」
なるほど。一応視聴者の需要はあるわけか。
藍人「....まぁ、監督にはお世話になってますし、番組への出演は全然いいですよ。」
監督「おう。詳細は追って伝えるから。じゃあなー。」
そう言って監督は去っていった。簡単に引き受けてしまったが、大丈夫だろうか。
藍人「はぁ、帰ろ。」
それから1週間程がたった。いよいよ今日は高校の入学式だ。
藍人母「藍人、ご飯できたよ。」
藍人「ああ、今行くよ。」
僕はそう言って階段を降りた。リビングから味噌汁のいい匂いがする。
藍人母「おはよう。よく眠れた?」
藍人「....まぁ、そこそこかな。父さん達は?」
藍人母「お父さんはまだ寝てるわ。鈴はもうでたわよ。」
藍人「そう。いただきます。」
そんな会話をしながら僕は朝食を食べる。
藍人母「余裕もって出なさいよ。貴方はタダでさえ準備が多いんだから。」
藍人「あぁ、わかってるよ。」
僕は、俳優ということをクラスメイトに知られる訳にはいかない。だから、それなりに対策はしてある。
藍人「ご馳走様でした。」
僕は朝食を食べ終わると、洗面所へ向かい準備をする。
藍人「よし、こんなもんかな。」
30分ほどかけて僕は身だしなみを整え、学校へ行く支度を済ませた。
藍人「じゃあ、行ってくる。」
藍人母「行ってらっしゃい。私もあとから行くわね。」
僕は家のドアを開け、学校へと向かった。今日の天気は快晴。入学式をする日としては申し分ない。
藍人「(しかし、人が多いな。まぁ当たり前だけど。)」
登校中、同じ制服を着ている生徒をよく見かけた。この道は人が多いのだろうか。
そんなことを思っていると、何やら学校の方で人だかりがあるのを見た。
藍人「(何かあったのか?)」
そう思い、僕は人だかりへ向かい少し離れたところから様子を伺う。
生徒A「おい、あれって。」
生徒B「ああ、間違いない。アイドルの夢咲栞さんだ!」
夢咲栞。その名はアイドルを知らない僕でも知っている。今大人気グループ
「Forever flowers」
のリーダーだ。顔、スタイル、性格。全てにおいて完璧で、アイドルとして必要なものを全て持っているって噂だ。
藍人「(まさかそんなアイドルも僕と同じ高校へ入学するとは。)」
普通なら嬉しいのだろうが、芸能界で3年仕事をしてきた僕にとっては特に何も感じなかった。早速一つ思い出が出来た。これも青春の一つなのだろうか。
そんなことを思いながら、僕は人だかりの中をかき分けながら学校へと入った。
玄関から階段を上がり、教室へと向かう。
生徒C「ねえ、玄関の方に栞いたって!」
生徒D「まじ?見に行かないと!」
藍人「(...あの人も大変だな。)」
同じ芸能人として、同情する。そんな事を思いながら、僕は教室のドアを開ける。
教室の中には既に人がいて、皆自席で自由に過ごしている。僕も自席につき、本を読んでいた時、後ろのドアが開く。
藍人「...おいおい、冗談だろ。」
思わずそんな声が出る。なぜならそこには、
さっきまで話題となっていた、夢咲栞さんがいたのだ。
生徒達「おいマジか!」
「こんなことってあるの?」
「神は俺を見捨てなかったー!」
クラスメイトがザワつきだし、栞さんへ近づく。
藍人「はぁ。どうしたことか。」
僕の目的は普通の青春を送ること。だが、栞さんがいるとなっては、普通とは縁遠い生活が来るだろう。神様は僕には微笑んでくれなかったらしい。
先生「はーい。みんな席に着いてー。」
その時、先生が入ってきてみんなを座らせた。
先生「君たちの気持ちはわからんでもないが、今日は入学式が目的だ。」
さすが先生と言ったところだ。生徒達はすぐに言うことを聞き、大人しくなった。
藍人「(さて、普通の学校生活を学ばせて貰うか。)」
入学式が終わり、各自自由となった瞬間。栞さんの周りにはまたも大量の人がいた
入学式後で、疲れているだろうに。全く可哀想である。
藍人母「おーい。我が息子ー。」
その時、母が前からやってくる。
藍人「母さん。目立つ行動は勘弁してくれ。」
母さんは年齢に反して見た目はとても若く見える。入学式中、他の生徒が小声で話す話題になっていた。
藍人母「まぁいいじゃない。それより、さっき監督さんが来てたわよ。学校の向かいのカフェに来てくれって。」
藍人「わかった。」
僕はそれを聞いて、すぐにカフェへ向かった。
監督「よぉ、来たか。呼び出したのは、例の番組についてなんだが...」
そこで僕は耳を疑いたくなる事実を聞かされる。
監督「お前と一緒に、夢咲栞を旅行させることになった。」
そんな、頭が痛くなるような事実を...
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