魔王、脱出を試みる 魔王十六日目
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ニーナ達は数日の間、ティアの術で現在の世界を調査した。そして、判った事は人族が多の種族を差別していると言う事実だった。ニーナは寂しそうな表情を浮かべると、その身を自身の両腕で抱いた。
暫く、そのままの姿勢で動かぬニーナを、ミリアンは今にも泣き出しそうな表情で見守っていた。そんな二人を無表情に眺めるティアの眼に、決意と言う名の炎が灯ったかに見えた。
更に数日後、魔王城の一室で忙しなく動き回るニーナの歩みが止まり、ミリアンとティアがニーナに向き直った。
「うにゃあ、出られないのじゃ。」
ニーナは苛立たしそうに叫びながら、砂煙を舞い上げて地団駄を踏んだ。そんなニーナを微笑みながら眺めるミリアンが、ティーカップにお茶を優雅に注ぐ。小さなテーブルを前に、クッキーを頬張るティアが座っていた。
魔王に成ると宣言してから、ニーナ達は魔王上から出ようと試みていた。
「モンスター強過ぎ。」
「どうやら、ダンジョン機能が停止した後に、地上のモンスター達が最深部まで進入してきたようです。そして、数百年に渡る弱肉強食の戦いを経て、強力なモンスターだけが残った様です。」
壺の中にありとあらゆる毒を持つ生物を入れて戦わせ、最後の一匹には強力な力を持つ蠱毒の呪法。そんな状況が、魔王城の外で起こっていたようだ。全くの偶然の出来事だった。
「うにゅう、妾の魔力が万全であったなら、ファイヤーボルト一発で終わりなのじゃ。」
「ん、弱体化。」
「うにゅにゅう、ティア!全部、暗殺して来るのじゃ。」
「はぅっ!ミリっ!」
「私にも出来ませんっ!」
モンスターに浸食されてかつて姿を失った魔王城は、最低限の機能を残して城とは言い難い邸宅となっていた。そして、玄関である大きな扉を開けると、ニーナ達が知る世界のモンスターと異なる存在が闊歩していた。扉の前に居座るモンスターを見たニーナ達は、外に出る事を諦める以外の選択肢を持たなかった。
「うにゅう。それにしてもあ奴は何なのじゃ。あんなモンスターは見た事が無いのじゃ。」
「恐らく、キメラの亜種かと思います。」
「ん、凶悪。」
角の生えた蜥蜴の様な巨大な頭の横に、猿にた頭と鯰の様な頭を持ったモンスターが寝ていた。寝ている筈なのに蛇の様な尾が鋭い眼光を放ち、周囲には緑色の肌をした下卑た表情の鬼の様なモンスターが集まっていた。
「隠し通路を使えばあのモンスターから離れた場所へ出る事が出来ます。」
ミリアンの提案でニーナ達は調理場に向かい、食糧棚に並んだ様々な材料に挟まれた奇妙な角をひぱった。別の食糧棚が動き、青錆の浮いた扉が現れた。
扉を開けて大の大人が並んで歩ける通路を進み、何度目かの分岐をニーナ達は迷わずに進んだ。ホールの様な場所に、重厚な金属の扉が有った。ミリアンが扉の横に有った窪みに手を入れると、金属同士が嵌り込む様な音がして扉が開いた。扉の向こうに光が見える。
大量に垂れている蔦を掻き分けて、ニーナとティアが顔を覗かせた。
「うにょっ!」
「むう。」
二人は飛び退く様に後ずさり、待機していたミリアンの腕を掴んだ。そのまま、脱兎の如くミリアンを引き摺って、重厚な扉の中に戻って閉めてしまった。
「魔王様、どうなされたのですか。」
「ん、ヤバヤバ。」
「あれはヘカトンケイルなのじゃ。しかも、全身鎧を装備して、大きな剣まで持っていたのじゃ。」
ニーナとティアが出るはずだった中庭に、東屋の倍ぐらいの甲冑を着た一つ目の巨人が立っていた。二人が顔を出した蔦の方へ、首が回り巨大な眼球が動く前に戻って来たのだった。
「秘密の抜け穴に向かうのじゃ。」
ニーナ達は広間に戻り、階段を上って二階にある扉の一つを開けた。何は箒や木箱が積まれているが、一人が辛うじて通れる隙間があった。ニーナは隙間を抜けて、壁に手を当てた。すると、壁に魔法陣が浮かび上がり次の瞬間、壁にぽっかりと大人が通れる穴が開いた。
再び、三人は狭い通路を進み、重厚な扉に出会った。こちらの扉には小さな覗き窓が付いていた。三人の身長より高い所にある覗き窓に飛び付こうとするニーナを止めて、ミリアンは扉の前でしゃがみ扉の一部を横に滑らせた。そこには僅かだが隙間があり、三人は仲良くしゃがんで外を見た。
「うにゅう、何も見えないのじゃ。」
「ん、真っ暗。」
「ここは城壁の外の筈ですが、開けて見ましょう。」
ニーナ達の目の前には闇が広がっていた。ミリアンの提案で扉をゆっくりと開けると、頭が入る隙間が出来た所で何かに当たった様に止まった。三人で力一杯押してもびくともせず、少し閉じて勢いを着けても大きな音を立てて扉は止まった。
ニーナは恐る恐る手を伸ばして、闇の正体を触ろうとした。
「魔王様。上が明るくなっています。」
上を見上げていたミリアンの言葉に、ニーナとティアも揃って見上げた。数メートルどころか二十メートル以上の高さから、優しい光を放つ天井を見る事が出来た。その僅かに見える光を、何かが遮った。下から見える隙間は、数メートルも無いだろう。遮ったものが何なのかは判らない。そこに見えたのは巨大な眼球の様に見えた。
ニーナ達は一斉に首をひっこめ、扉を閉めて魔道具の封印を施した。
「隠蔽術式の発動を確認しました。」
「何なのじゃ。超大きな目玉だったのじゃ。」
「ガクブル、ガクブル。」
自身の身体を抱いて蹲るティア。ミリアンは冷静に扉の状態を確認して、ニーナは腕を組んで地面に座り込んだ。
「このデカブツは無理なのじゃ。キメラかヘカトンケイルかなのじゃ。」
「まさか、戦うつもりですか。」
「ん、ミリ!」
ミリアンとティアは目を見開いて、物騒な名前を呟くニーナを見た。二人に見詰められたニーナは、気まずそうに俯いたまま動かなくなった。
「どこも強力なモンスターが陣取っているのじゃ。こうなればここで練習をして、強くなるしかないのじゃ。幸い、食糧は沢山あるのじゃ。」
「一体、どれくらい練習すればキメラやヘカトンケイルを討伐出来るのでしょうか。」
「ん、ミリ。」
三人は揃って溜息を吐き、狭い通路を戻って広間へと至った。ニーナ達は一言も話す事は無く、ミリアンの作った料理を口に運んだ。
「うにゅう、一回飛ばしされた挙句に、とんでモンスターなのじゃ。」
ア♀:魔王サイドなのね。でも、少し空き過ぎではないのかしら。
空♂:今回は投稿縛りも無く、自由気ままに進めるのだ。
ア♀:そう。なら、これだけは守って欲しいのだけれども。
空♂:うにゅにゅ。
ア♀:二週間以内に投稿する。
空♂:うにゃ、その縛りは約束しかねるのだ。
ア♀:あら、そう。なら、酔っぱらって投稿しない。
空♂:善処します。
ア♀:はぁ、何とかまだまだ、続けさせます。




