入学する二人 異世界二十四日目
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そして、夜が明けた。
狩人組合で教えられた建物に、足取りの重いカインと通常運転のアデルは向かった。
高い壁に囲まれた外周に、建物があり中央に開けた空地があった。どことなく刑務所を思わせる、殺風景な場所だった。そこに百人以上が集まって、狩人養成所の入所試験の開始を待っていた。
「あら、大人もいるのね。」
「と言うより、未成年の方が少数だ。数人しかいない。」
集まっているのは首を巡らすカインの言う通り、大人が大半で子どもは数人程度で緊張しているのか怯えている様に見えた。
大人達は皆、体格も良く、精悍な顔つきをしていた。何人かは獰猛な視線を辺りへ飛ばし、何人かは値踏みするような目つきで見渡していた。一人の男が愛想笑いを張り付けて、カインとアデルに近づいて来た。
「君達もサポーター希望かな。俺達が雇っても良いけど、どうかな。君は綺麗な顔をしているね。」
「君はあたいの好みだよ。あたいらのサポーターになりなよ。悪い様にはしないからさ。」
男は欲望を隠さず遠慮なくアデルを睨め回し、後から来た女がカインを見てぐにゃりと表情を歪めた。アデルは小さな溜息を吐いてカインを見ると、カインの身体から陽炎が立ち昇った様に見えた。驚いた様に目を見開く男女を、カインは真紅の眼で睨み付けた。
「俺達は狩人になるために来た。お前達の玩具になる気はない。失せろ。」
カインの言葉に男女は静かに離れて行った。別の男が感心した様に息を吐いて、カインとアデルの横に立った。男はカインとアデルを見ず、前を向いたまま口を開いた。
「子どもだと思ったが大したものだ。一人前の戦士と言う訳か。俺は赤銅等級の狩人だ。一気に等級を上げようと、養成所に入ろうと思ったのさ。子どもがここに来るのはサポーターとして雇って貰うためが殆どだ。非力な子どもでは生きていけないからな。」
そして、男はカインとアデルに教える様に語り始めた。
狩人養成所に来るのは、等級を上げたい狩人が殆どで、黒鉄等級になれるのは四割程度だった。サポーターになろうとする子ども達は、大人達の欲望を満たす事も有ると聞かされた。カインとアデルの他に未成年は二人いたが、二人とも大人達の好奇の視線を集めていた。
「今回は君達とは別にもう一組いるな。守ってやりたいが、俺では役不足だな。」
「俺には関係の無い事だ。」
「そんな冷たい事を言うと、友達が出来ないぞ。君達の年頃は友達百人作ろう。広げよう友達の輪だ。」
「イモリかよ。」
カインの言葉に男は首を傾げながら、辺りを油断なく眺めていた。そんな中、置かれた台に初老の男が立ち、拡声器の様な物を持って話し始めた。
入所試験は獣の生態系や、薬草や鉱物の知識を確認された。カインとアデルは難なく通り、二人の子ども達も経験が有ったのか通過した。
知識の次は実技の試験が待っていた。二人の子ども達は連携を取りながら、赤銅等級の獲物とされる猪を狩って見せた。カインとアデルはそれぞれが大人すら目を見張る剣技で、出された魔物を狩って見せた。二人の子ども達とカインとアデルは、合格判定を得て養成所に入ることにり、百人以上いた希望者がその部屋には五十人程しかいなかった。
「諸君等は狩人。黒鉄等級になるに相応しい人材だと認められた。この一年、獣や魔物、薬草に鉱物の知識を得て、戦闘訓練に罠解除や偵察の技を磨いてもらう。我々が認めた者は黒鉄等級の狩人として、活躍することを願っている。」
初老の老人が仰々しく演説をして、五十人は一つの部屋に集められた。そして、それぞれにパーティーを組むことが言い渡された。パーティーに人数の上限は無く、最少人数は二人で構成されると説明が有った。大人数になれば連携や報酬の分配が難しくなり、統制も取りづらくなるため大半が四から八人のパーティ構成になっていた。ドロップアイテムを集める専門部隊もあり、狩人や傭兵になりたての子ども達で構成されていた。
当然、カインとアデルは二人でパーティーを組み、パーティー名をエルノワールに決めて登録した。子ども達は二人でパーティーを組んで、他の大人からの誘いを頑なに拒んでいた。
カインとアデルに最初に声を掛けた男が五人の男女を伴って再び、下卑た笑みを張り付けて近づいて来た。溜息を吐くアデルと、目を細めて男達を睨むカイン。
「二人じゃ心細いだろ。俺達は六人だ。パーティーに入れてやるよ。楽しくやろうぜ。」
「失せろと言った。」
「へえ、餓鬼のくせに何て威圧を放ちやがる。俺が相手をしてやろう。」
男の後ろから二メートル近い男が、獰猛な笑みを浮かべてカインを睨んだ。他の男女はこれから起こるであろう、趣味の悪いショーを想像したらしく舌なめずりをしている。
「あんた、教師か。身に掛かる火の粉は払って良いのか。」
「当然、構わない。しかし、ここは狩人養成所だ。助けを求める事も出来る。」
カインが教官らしき男に声を掛けると、物騒な返事と頼もしい言葉が帰って来た。大男の笑みは消えず、後ろの仲間も笑みを張り付けたままだった。
「こいつは戦闘士だ。上級騎士を素手で伸してしまうほどのな。」
大男はカインの周りをゆっくりと回りながら、軽くジャブを放って牽制し始めた。カインは身体を僅かにずらして、大男の拳から数ミリだけ遠ざかった。その間、カインは瞬きもせずに相手を睨み、アデルは上を仰いで大きな溜息を吐いた。
「ほう、中々に良い目をしているな。さて、そろそろ皆も待ちくたびれた頃だろう。おねんねの時間だ。」
「カイン。駄目よ。」
大男が言い放つと同時に、今までより速く拳を振るった。それと同時に、アデルの叱責がカインに突き刺さった。カインは少し俯きながら、アデルを振り返った。
「もう少し、早く言ってくれないかな。」
アデルに軽やかにウィンクをして、悪戯を見つけられた少年の笑みを浮かべるカインの後ろで、大男の首に半ばまで食い込むカインのナイフがあった。教官らしき男が大慌てで、ポーションを降り掛けていた。
「火の粉を振り払っても良いと言っていたぞ。」
「それは殺しても良いと言う事では無いの。貴方はすぐに人間を殺してしまう。何故、懲らしめるだけに留める事が出来ないの。」
「死ねば二度と煩わせられる事はないだろ。それにあんな人間は生きている必要はないだろ。」
「もう。貴方、教官かしら。こんな状況で殺しても罪にならないのかしら。」
「殺しては駄目だ。絶対に人を殺してはいけない。駄目なんだよ。」
突然、アデルの声を掛けられた教官は、驚いた様に姿勢を正した。そして、上ずった声で、叫ぶ様に言い放った。その後ろで回復した大男が起き上がり、カインの前蹴りを喰らって地面に沈んだ。
「今回は運がいいな。次は狩る。」
カインが大男の首を斬った所を誰も見てはいなかった。いや、誰の目にも見える事は無かった。
神速で抜かれたナイフが大男を襲ったのを視認出来たのはアデル、ただ一人のみ。
「うにゃ!一回抜かしなのじゃ!」
ア♀:学園シーンには在り来たりのエピソードね。
空♂:これもお約束なのだ。
ア♀:のじゃ姫を飛ばして良かったのかしら。
空♂:うにゅ、仕方ないのだ。交互に進めるなんて難しいのだ。
ア♀:だったら、しなければ良いでしょう。
空♂:うにゅ、ニーナが早く出せと・・・。
ア♀:一度、病院に行った方がいいわよ。
空♂:にゃ~。まだまだ、続きます。




