準備する二人 異世界二十三日目
予告なく修正することがあります。
二週間の時間が出来た二人は、町を拠点に周囲の探索に出掛けた。カインは最初の森へ行き、大きな岩に穴を穿った。数分後、大岩をくり貫いた秘密の部屋が出来上がった。カインはそこに無数のモニタが設置し、様々な景色を映し出し始めた。
「元の転移座標は問題なく記録されているわ。」
「こっちも大体の調査が済んだ。」
「小型の割に超高性能ね。音声も拾えるの。」
「音声はまだ無理だ。人工核を入れた擬態スライムを、各地に送り出した。様々な動物に擬態しながら、情報収集や採取をしてくる。」
カインは衛星を打ち上げ、スパイロボットを放ち、この世界を調査していた。そして、アデルは鳥や小動物を魔法で操り、同じくこの地域を調べていた。
地球と同程度の大きさを持つこの世界には、大きな大陸が南北に広がっていた。大陸は一つの国を形成しているが、貴族の他にも力有る者達が統べる地域が存在していた。
「巨大な王国だけど、盤石とはいかないようね。王位を狙う貴族、辺境には野望を持った者どもが集う。それに、人族以外も野望を持った者達がいるのね。」
「無駄な争いに巻き込まれない様にしないとな。竜種に各種魔物、ファンタジーが一杯だ。」
カインはうんざりした様に呟きながら、沢山のモニタを眺めて調査を続けた。アデルは静かにお茶を飲みながら、静かに目を閉じていた。
その後も、二人は大岩の秘密基地で世界の調査と、ファインナル周辺の散策を繰り返した。時折、狩人ギルドに向かい、簡単な採取クエストを受けて町の外へと向かった。
そして、ある日の出来事。
「貴方達は新木等級なのよ。黒金等級の魔物に遭遇したら、最優先で逃げる事を選択して言ったでしょ。」
「偶然、討伐する事が出来た。本当に偶然だ。」
「そう。偶然よね。14歳の新米狩人がハンターウルフを群れごと討伐なんて、どんな偶然が重なれば出来る事なの。」
「そう熱くならない方が良い。早く老けるよ。」
「大きなお世話よ。大体、誰のせいでこうなっていると思っているのよ。」
「偶然だよ。偶然。たまたまってやつだ。」
ハンターウルフ、狼に似た魔物。群れで行動し、知能が高く人族を襲う。二人はハンターウルフを二週間で百体以上を討伐していた。熟練の狩人でも一度に三体以上に遭遇すれば、全力で逃げ出す魔物。カインとアデルは他の狩人達が目を見張る数を討伐していた。
その後、カインとアデルがハンターウルフを狩って来る事は無かった。
「五体も出すからよ。」
「今後は一体か二体にするさ。後は兎や鹿だな。」
尚も何か言いたげなギルド職員を置き去りにして、カインとアデルは町を散策することに決めた。
ファインナルには各種ギルドがあり、沢山の店が軒を連ねていた。食材を売る店、生活道具を売る店、武器屋に防具屋があり、所々に屋台も並んでいた。屋台では食べ物の他に、野菜や食肉なども売られていた。
「武器屋や防具屋を見る限り、始まりの町と言うところね。鉄製の武器までしかなかったわね。魔法道具も見たけど、魔除けやポーションも性能が低すぎる。」
「比較的大きい町だがな、物々交換も頻繁に行われている。王都から離れているから、貨幣の流通量が少ないのだろうな。」
二人は早朝から夕方まで、町から遠くない森で採取と狩りをしていた。稼ぐためでは無く、生態系調査と言った所か。カインは獣や魔物を解体しながら、特徴やスキルをタブレットに記録していた。そして、アデルは採取した草花や鉱石を、解析しながらタブレットに記録した。カインは新木等級では狩る事が出来ない魔物を、まとめて小さな箱に入れて収納していた。
「魔法道具屋にマジックバッグが売っていたわ。デイバッグ程度の大きさで、容量がリヤカー程度ね。それで金貨三十枚だったわ。」
「マジックバッグはボロ袋にするか。これでも金貨30枚か。」
「知られない様にしてね。貴方の犠牲になる人間は少ない方が良いわ。」
「降りかかる火の粉は払う。俺から仕掛ける事は無い。」
「そうね。明日は入所手続きよ。今日の成果をギルドに持ち込みましょ。」
狩人ギルドでカインとアデルは狩った獲物と、採取した薬草と鉱石を換金した。出て行こうとした二人に、ギルドの受付嬢が声を掛けた。
「明日は狩人養成所に入るのでしょ。気を付けてね。妙な連中と関わらないでね。」
何の事か判らないカインとアデルは、首を傾げて受付嬢を見た。二人が判らないと察したのか、受付嬢は咳払いをしてから続けた。
「養成所に来るのは未成年だけではないの。大人も入ってくる。中には、子どもを脅して、働かせる連中もいるの。そんな連中が必ず数人はいるのよ。」
「殺していいのか?」
「駄目に決まっているでしょ。どうして、殺そうとするのよ。この前も、貴方の獲物を横取りしようとした男を半殺したでしょ。目撃者が多かったから、罪に問われなかったけど。本来なら、自警団の取り調べを受けているわ。」
「俺達に害を及ぼさなければ、傷付く事も命を落とす事も無い。敵は排除する。それが何であれ。」
カインとアデルの採取して来た獲物と薬草を掠め取ろうと、近づいた男達をカインは問答無用で腕を切り落とした事があった。斬られた男の仲間がすぐに回復ポーションをかけたため、痛みによるショック死や失血死することはなかった。
受付嬢は出て行くカインとアデルの背中を、心配そうに見送っていた。
宿に戻った二人は、食堂のテーブルに座った。二人の注文を聞き終えた宿屋の娘が、上目づかいに申し訳なさそうに口を開いた。
「明日は狩人養成所に行くのでしょ。寮に入るの。」
「授業は午後からでしょ。午前中は狩に行けるわ。私達なら午前中で、宿泊費を稼げるわ。食べられる獣はギルドより早く、持ち込むのだから値引き宜しくね。」
「お母さん。出て行かないって。離れの鍵を渡して。あっ、離れは台所も有るから、料理できるわよ。」
カインは数枚の大銀貨を渡して、アデルを見て肩を竦めた。そして、二人は宿屋の娘には聞こえない声で言葉を交わした。
「寮とか嫌だったのよね。カイン、真面目に獲物を狩るのよ。今後は私達の死活問題なのだから。」
「兎と鹿と猪だろ。見つけるのはそんなに、難しい事ではない。安定して狩ることが可能だ。」
「頼りにしている。私のガーディアン。」
宿屋の隣に建っている小屋に入ると、カインとアデルは顔を見合わせて微笑んだ。
小さいコテージの様なつくりだが、中は意外と広くなっていた。暖炉の前にフローリングが敷かれ、土間には小さいが立派な竈が有った。
カインは竈や暖炉に小さな箱を取りつけて、ゆっくりと数歩下がって見守った。
「便利な物ね。竈が魔道コンロになって、暖炉も火力調整が可能。そっちの甕は浄水器付の水甕ね。出る時に回収するのを忘れないでね。快適テントを出せばいいのに。」
「せっかくのコテージだ、有効に使わせてもらおう。それに、中にテントを張っては怪しまれる。」
「でも、ラボの箱は置くのね。私達以外は開けられないし、操作も出来ないからいいけど。」
カインの作った食事を食べたアデルは、ラボの箱の横にある細い扉を開けて消えた。
「ふっふっふ、次は妾の活躍するのじゃ。」
ア♀:まだ、学園編はスタートしないのね。
空♂:学園じゃなくて養成所。
ア♀:どちらでも一緒だと思うけど。
空♂:今回の世界は冒険者ではなく狩人。なんでも狩るのだ。
ア♀:獣から魔物まで狩るのね。
空♂:対人戦力は傭兵が担当しているのだ。
ア♀:まだまだ続きます。




