就職する二人 異世界十日目
予告なく修正することがあります。
カインとアデルは拠点となる宿屋を探して、部屋を借りて一階の食堂で遅めの昼食を頼んだ。
二人が選んだ宿屋は無口な主人が料理を作り、愛想のいい女将が十歳前後の娘と切り盛りしていた。料理を運んで来た娘は、旅姿のカインとアデルに興味津々に見えた。
「仕事を探しているなら、狩人組合が良いと思うよ。旅の途中で狩った魔物や獣の素材を売ることが出来るよ。」
「冒険者と言う職業は無いのか。ダンジョンや遺跡を調査するのだが。」
「聞かないね。ダンジョンや遺跡の調査は、必ずパーティーを組んで向かうのさ。狩人に盗賊、傭兵組合からは数人の戦士が参加するさね。難易度によっては国から魔法師様が派遣される事もあると聞くよ。」
時間がずれたせいか客が少なく、手すきになった女将と娘が話しかけてきた。二人の話からこの世界には魔法が存在し、人族で魔力を持つのは貴族だけだと言う。他にもエルフ族やドワーフ族、魔人族と一部の獣人族が魔法を使う事が出来た。そして、貴族以外の魔法師達は、国が運営する魔法師組合に所属するよう義務付けられていた。それは戦力の確保と流出を防ぐ意味合いが強い様だった。
他にも狩猟を生業とし、獣だけでなくモンスターも狩る狩人組合。罠探知から諜報活動まで幅広い盗賊組合に、屋台から大商会まで属する商人組合、戦士を有する傭兵組合など各種職業ごとに組合があった。
ダンジョンや遺跡調査には女将の言った通り、各種組合から難易度に見合った人材が派遣される。
「どうやら、この世界のダンジョンは危険度が高い様だな。」
「全てがレイドレベルってことね。」
娘は二人の言葉の意味が判らなかったらしく、首を傾げて料理が出来たと告げた主人の元に戻った。
カインとアデルの話題は、所属する組合選びにへと移った。旅をする事から何処でも仕事が出来て、戦闘能力を持っていても怪しまれない職業を選択することで方針が決まった。
「戦闘職なら傭兵か狩人か。自由がきくのは狩人と行商人だな。」
「あの子の言う様に狩人が良いわね。旅をしていても問題ないでしょうし、商人と並行登録が可能よ。」
「アデルは魔法を使わないのか。」
「使うと厄介な事になりそうだから使わない。それに、九割を解析に回しているよ。大した威力も出ないわ。」
「アデルが九割を解析に回して、未だ術式が判らずか。面倒な事をしていくれたものだ。見つけ出して必ず滅ぼしてやる。何処にいても俺は、必ず獲物を狩る。逃がしはしない。」
「相手に同情するわ。食べ終えたら狩人組合に行きましょ。」
昼食を食べ終えた二人は狩人組合に向かい、登録するために詰所で作った仮の身分証を渡した。二人のステータスを見た受付の女性は目を見開いて、金属で出来た登録用のプレートを差し出した。
「十四歳でこのステータスは凄いわね。でも、新木等級から始めるしかないの。」
「飛ばして見合った等級に登録は出来ないのか。」
「昔は出来たのよ。でも、事故で命を落とすことが多くて、確実に実績を積んで等級を上げる必要があるの。その丸印に貴方の血を一滴、垂らして下さいね。」
カインが指先を針で突き、一滴の血を絞り出すとプレートの上に落ちた。僅かに輝いたプレートにカインの名が刻み込まれ、性別と年齢、職業と各種ステータスが表示された。アデルも同じように血を垂らし、プレートに情報を刻み込んだ。
「名前と年齢、性別にステータス。職業が剣士になっているわね。偽装が問題なく発動中。」
「犯罪も記録されるのか。はあ、フレンドリーリストにパーティーチャットってなんだ。」
「ここの管理者も中々に自重を知らないのかしら。」
受付嬢から狩人組合の規則やプレートの説明を聞いた二人は、何処か疲れた様な表情を浮かべた。
受付嬢の話では、職業証明書と呼ばれるギルドカードには、持つ主の情報を始め様々なデータが記録されるとのことだった。体力、魔力、防御力等の各種ステータスや魔物の討伐記録、犯罪歴も記録され、銀行も兼ねている組合の通帳の役割も果たした。更に、フレンドを登録することが可能で、簡単なテキストメッセージの送受信も出来た。カインが眉間に皺を寄せたのは、パーティー間では音声チャットが可能と説明された時だった。
「はあ、証明書の機能は理解した。後、例えば、偶然、上の等級の魔物と遭遇して、運良く討伐しても駄目なのか。」
「それは問題ないわ。でも、ステータスが高くても上の等級の魔物に遭遇したら、逃げる事を最優先して。運良く討伐出来ても、何時も出来るとは限らないでしょ。私のお勧めは養成所に行くことね。一年間、勉強すれば赤銅等級、青銅等級を飛ばして、黒鉄等級での登録が可能になるの。一年で卒業するのは四割程度だけどね。貴方達なら出来ると思うわ。」
カインとアデルは受付嬢から、組合の大まかな規則と養成所について話を聞いた。受付嬢は二人の出身地や町まで来た経緯を聞き取り、電話帳程のプレートに入力して溜息を洩らした。
「ねえ、あれってタブレットかしら。」
「ここの管理者は隠す気が無いのか、面倒な事は力押のタイプかも知れんな。」
中世程度の世界には相応しくないオーバーテクノロジーのアイテムは、どこから持たされたのだろう。そんな二人の呟きを聞こえなかったのか、受付嬢は笑みを浮かべて養成所の説明を始めた。
「それに、三か月毎に飛び級があるのよ。高位の固定パーティーが、有能だと認めるとその時点で卒業。黒鉄等級に登録されるわ。」
受付嬢の言葉にカインとアデルは顔を見合わせて、悪巧みを思い付いた子どもの様な笑みを浮かべた。幸いなことにこの辺境の町、ファインナルにも養成所が有った。早速、二人は狩人養成所に向かった。
「悪いな。次の入所は来月だ。二週間後にまた来てくれ。」
二人は毎月初めに入所手続きがあり、来月まで入所出来ないと説明された。養成所での授業は必須ではなく、それぞれの科目で合格すれば卒業できるとも説明された。即ち、薬草等の採取の知識、狩の知識と技術の三種類。合格できるのであれば、授業に出る必要はないとの説明に、カインの口元に不敵な笑みが浮かんだ。
「次は妾の出番なのじゃ。」
空♂:学園入学イベントが少し先に延びてしまった。
ア♀:どうせ、因縁を吹っ掛けた三下狩人が半殺しにされるのでしょ。
空♂:お・や・く・そ・く。
ア♀:ぶっ飛ばされたいのかしら。
空♂:うにゃ、まだまだ続きます。




