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魔王、説教される 異世界百十日目

予告なく修正することがあります。

 出発の支度をするニーナ達の後ろで、盗賊の五人が連れて行けと叫んでいた。ダンジョンと認識されたモンスターが徘徊する森に取り残されれば、動けたとしても危険なのに縛られたままでは死の宣告に等しかった。


「た、頼む。連れて行ってくれ。」


 必死に懇願する盗賊を、気の毒そうにニーナは見た。その視界はすぐに黒いマントに塞がれた。そこには無表情なカインが立っていた。しばしの間、カインとニーナと間で言葉が交わされ、ニーナは納得したのか頷いて馬車へ乗った。


「ねえ、カイン。モンスター避けの香って、どれくらい持つのかしら。」

「三十分程度だな。多分。」

「多分って、正確には判らないのかしら。」

「その辺の草で無理矢理に錬成したからな。どれくらい持つか全く判らん。」


 ニーナ達が立ち去ってから、五分と待たずに盗賊達はモンスターの胃袋に収まった。村に戻ってニーナ達は村長に、モンスターと盗賊の話をして村人達を驚かせた。


「トレントの変異種に盗賊だと。そんなものがいたとは。」

「町へ行って近衛騎士に申請して、狩人と傭兵ギルドにも依頼を出さねば。」

「既に討伐した。」


 村長は顔に驚きを張り付け、一言も発する事無く動きを止めた。そんな村長を無視して、カインは事の詳細を語った。正気に戻った村長は。村人の一人に町へ行くように指示を出した。


「あ奴はこの村一番の俊足じゃ。二日もあれば町へ着くじゃろ。」

「騎士が来るにはどれくらいかしら。」

「三日いや、四日はかかるかも知れんな。」


 アデルは小さな溜息を吐くと、興味を失くした様に村長の家を出た。先に出ていたニーナ達は、村の空き地にテントを準備していた。合流したアデルは夕食の支度を始めたカインの隣に立ち、上目使いで妖しい笑みを浮かべていた。


「のじゃ姫には言わなくていいの。」

「無用だろ。少し考えればダンジョンで身動きできない人間の末路は、簡単に想像できると思うがな。」

「そこまで考えていないと思うけど。ところで、今日もバーベキューかしら。」


 アデルの問いにカインが頷くと、ニーナ達が皿を持って集まった。その後ろには、興味津々に目を輝かせた子どもたちがたち、大人たちも籐巻きにニーナたちを眺めていた。バーベキューコンロなど存在しないこの世界で、コンロの炭に火を起こすカインは初めて見る人間に違いなかった。何をしているのかと村人に聞かれたアデルが説明すると、村人達は出された肉の山を見てごくりと喉を鳴らした。


「はぁ、判った。皿を持って来れば焼けた肉をやる。その代わり、野菜を貰うぞ。」

「それだけでいいのか。俺達もその肉を食べさせて貰えるのか。」

「手伝いもお願い出来るかしら。調理方法なんかは教えるから、この人数に対処してもらえるかしら。」

「はいっ!」


 夕食の準備を始めたカインを遠巻きに見ていた村人達は、小走りに家の中へ跳び込む様に消えた。再び出て来ると、手に皿と様々な野菜を抱えていた。男達はアデルの指示で手際よくかまどを作り、カインは主婦を中心に調理を指示した。家から持ち出して来たのかテーブルが並び、大きなボールに入ったサラダやスープの入った鍋が置かれた。


「おおっ!」 


 カインが肉を焼き始めると、興味津々で見ていた子ども達から歓声が上がった。かまどの前に立った男達はカインの指示を貰いながら、カインの真似をしながら肉を焼き始めた。時折、神速で移動したカインが、男達の焼く肉を裏返していた。


「おお、カインが消えたのじゃ。」

「速神天の瞬。一瞬で最高速から動く。料理で使う御業ではないわね。」


 次々と焼き上がった肉がテーブルに運ばれると、村長がワインが一杯に注がれたコップを持って立ち上がった。


「森の脅威はエルノワールが討伐してくれた。そして、この恵みをもたらしてくれた。エルノワールと神に感謝を。乾杯っ!」


 村長の音頭に村人達は一斉にコップを掲げて、乾杯と叫ぶと一気に飲み干した。そして、子ども達は待ち兼ねていた料理に手を出して、その味に満面の笑みを浮かべた。大量の肉の山を信じられない速度で口へ運ぶニーナ達に、カインも凄まじい速度で肉を焼いて対抗していた。

 ニーナ達がカインの料理に満足し、ミリアンが食後のお茶を並べた。村人達も満足したのか、片付けるとそれぞれの家へと戻った。

 そこに一羽の梟にそっくりな鳥が舞い降りた。村長はゆっくりと近づいて、鳥の足についていた筒を取り外した。小さな筒の中から紙を取り出して、中身を呼んだ村長の眼が大きく見開かれた。そして、村長はニーナ達を見て目を細めると、お茶を飲むニーナ達の元へとやって来た。


「早馬で到着した者からの報告が来た。そなた達は盗賊を放置して来たのか。」

「うにゅ、ここまで連れて来るのが大変だったのじゃ。」

「モンスターの徘徊するあの森に、盗賊達を放置してきたのじゃな。」

「うにゅにゅ、放置はしていないのじゃ。木に縛り付けて逃げられない様にしてきたのじゃ。」


 無表情に問いかける村長の言葉に、無邪気に答えるニーナ。村長が大きな溜息を吐いて、ニーナを真っ直ぐに見詰めた。


「ニーナよ。あの森はダンジョンじゃ。モンスターが徘徊する場所じゃ。」

「うにゅう、知っておるのじゃ。」

「ならば、そんな場所で身動きが出来ない者はどうなるか判るか。」

「うにゅ、モンスターに襲われるのじゃ。うにょ、死んでしまうのじゃ。」


 村長に言われて初めて気が付いたのか、ニーナは口に手を当てて小さく叫ぶ様に言った。再び村長は大きな溜息を吐き、ギルスとエレンは疲れを払うかのように首を横に振った。


「それは自分の手で人を殺したと同じ意味を持つ。」


 村長の言葉に項垂れるニーナ。そんなニーナの肩に村長は優しく手を置いた。ゆっくりとニーナが顔を上げると、釣り気味の大きな目が潤んでいた。


「まっ、他人を襲わせて金品を盗む輩じゃ。モンスターの胃袋に収まればよかろう。連行するのが面倒な時は、動けなくして放置して来ればよかろう。」

「別にダンジョンでなら始末しても問題あるまい。むしろ、ダンジョン以外での処理方法を考えろ。」

「うにゃ、カインは物騒なのじゃ。しかし、ダンジョン以外で殺すと罰が付くのじゃ。」

「ほっほっほ、ダンジョン以外なら動けなくするのは有効じゃぞ。町中では素手でやる必要があるがの。」

「問題ない。明日からは体術の訓練もメニューに追加しよう。」


カインの言葉を聞いたギルスとエレンが、目を大きく見開いてから項垂れた。アデルに肩を叩かれても二人は顔を上げる事が無かった。三人の後ろで飛び跳ねるティアを、ミリアンが大きな声でいさめていた。


「明日は町に到着するのじゃ。ふっふっふ、出て来るが良いのじゃ。妾は何時でも何処でも戦うのじゃ。」




空♂:中々に進まん。

ア♀:単にサボっているからでは?

空♂:前回はのじゃ姫達が勝手に動いてくれたのに。

ア♀:制御が出来なかった時も有ったわね。

空♂:こ、これがスランプか。

ア♀:ミスター、スランプの出来上がり?

空♂:まだまだ、続けます?

ア♀:続きますっ!でしょっ!

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