魔王、モンスターを討伐する 異世界百八日目
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前後左右に揺らめく様に動く少年少女達に囲まれ、ニーナ達はの思考は躊躇したまま止まっていた。襲って来るでもなく、単に揺れているだけの少年少女に敵意は感じられなかった。
「近づくなっ!」
ニーナが一歩踏み出した瞬間、鋭いカインの声が飛んで来た。ニーナは浮かした右足を、元の位置へと静かに降ろした。
カインはニーナ達の正面に、大木を挟んで立っていた。その右手には身長と変わらない、刀身を煌めかせた刀を握っている。
「調査は終わったの。」
「トレントだ。変異種のエンシェント種。再生能力は桁違いだ。」
「瞬時に再生すると言う事かしら。魔法は見せたくないのだけど。」
「小型のナパーム弾がある。」
カインとアデルの会話をニーナ達は、不思議なものを見る目で見ていた。ギルスとエレンだけは理解出来たのか、目を大きく見開いて口を開けていた。
「カイン。ナパームって・・・。どんな世界にいたんだよ。」
「まさか、戦争と言うのは本当なのか。」
「爆炎の魔法石よ。気にしない。気にしない。それより、あれを討伐しなくてはね。」
尚も聞きたそうにカインに近づくギルスとエレンを止めて、アデルはニーナ達に視線を向けた。ニーナ達は役目を理解したのか、それぞれの手にレイピアとナイフ、モーニングスターが握られていた。
カインの手に握られた刀がゆっくりと上がると、ギルスとエレンも槍と薙刀を腰だめに構えた。既にカインは走り出して、近くにいた人型に迫っていた。揺れる人型にカインの刃が無造作に振り下ろされると、人型は何の抵抗も無く左右に分かれて倒れた。
余りの呆気なさに呆けた様な表情浮かべるニーナ達と、金色の眼を光らせて見詰めるアデルは対照的だった。アデルの金色の眼が細められると同時に、倒れた人型が地面を動き左右が近づいた。切断面が下から癒着し、ゆっくりと立ち上がった。瞬時にカインの刀が、人型の首を薙いだ。ぽとりと落ちた頭部は、首の切断面から伸びたツタの様なものにからめ捕られた。ツタが首に引き込まれると、落ちた頭部が元の位置へと戻った。そして、人型はゆらゆらと妖しい動きを再開した。
「うにょ、すぐに再生するのじゃ。これでは倒すことが出来ないのじゃ。」
「自己再生ですね。しかし、再生速度が異常です。」
「むう、粉砕あるのみ。」
ニーナが腕を組んで唸るように喋ると、ミリアンが真剣な眼差しで答えた。ティアがモーニングスターを操ると、先のとげ付鉄球が地面に鈍い音を立てて落ちた。そんな三人の前にアデルが出て、手で走り出しそうなニーナ達を制した。
「面倒ね。再生速度はプラナリアの比ではないわね。逆再生レベルね。」
「あんなのどうやって倒せと言うのだ。」
「ひょっとして、カイン。ナパームか。」
「俺がやる。」
感心した様なアデルと、驚きを隠さないギルスとエレン。そんな三人を背にカインは、呟くと走り出した。揺れる人型がカインの前を塞ぐが、カインの速度に追いつくことが出来ない。見る見るうちに中央の大木に肉薄したカインに、地面から太い鞭の様なものが襲い掛かった。
十数本の胴より太い鞭を躱すカインの頭上から、緑の細い鞭が音も無く襲い掛かった。カインが身を捻って躱したタイミングで、地面から黒茶の太いが背中を打ちつけた。派手な音と共にカインは地面を転がり、アデルの足元に転がった。
「避け損なったの。三か月以上経ったのに、まだ慣れていないの。」
「反応速度が落ちている。見えている事は検証できた。補正完了。行くぞ。」
少し呆れ気味のアデルを見上げながら、カインは無機質な声で答えた。跳ね上がったカインの足が地面に着いた瞬間、砂煙を上げて姿を消した。ギルスとエレンがカインの姿を探している間に、大木の前にその姿を現した。左肩に構えた刀が神速の動きを見せて、大木を斜め下へと銀光を閃かせた。大木が僅かにずれ、倒れるかに見えた。僅かに開いた切断面から白く細い筋が無数に伸び、倒れようとする上部の切断面を捕えた。倒れ掛かった上部は、すぐに元通りになった。
大木の表面が波打つと、二か所に洞が開き、下に大きな洞が横に広がった。それは邪悪な表情を浮かべた獣の様に見えた。
「むう、邪悪。」
「うにゃ、モンスターだったのじゃ。」
「カイン様がトレントと言われていました。」
「本性を現したわね。」
地面と大木の上から、無数の鞭がカインに襲い掛かった。カインを包み込む無数の鞭から、逃れる術は無い様に見えた。カインの右手が消えると同時に、無数の鞭が数か所で切断されて雨の様に地面に落ちた。カインの左手から小さなパイナップルの様な型をした、黒い塊が飛び出して大木の口の様な洞に入った。大きくカインが後ろへと飛び去り、構えていた刀を下ろして自然体で立った。
「終わりだ。」
カインが短く呟いたと同時に、大木から大きな火柱が上がった。火柱は大木を灰すら残さず、一瞬で燃やし尽くした。その光景を口をあんぐり開けて見ているニーナ達。
「ナパーム弾ってあんな威力があるものなのか。」
「俺も警官だったから、知識はあるがあれは別物だろ。」
「色々と魔改造したのよ。半径二メートルに結界を張って、燃焼温度は六千度。太陽の表面温度に匹敵して、タングステンすら気化するのよ。出鱈目にも程があるわね。」
驚くギルスとエレンがアデルの説明を受けている後ろで、カインとティアが焼跡で話し込んでいた。大きな溜息を吐いたニーナが、無言で俯くミリアンと力無く歩いて来た。ギルスとエレンが不思議そうな顔を向けると、ニーナとミリアンは再び溜息を吐いた。
「駄目なのじゃ。駄目駄目なのじゃ。」
「どうかしたの。」
「カイン様とティアはあの魔道具の更なる強化方法思いついたのです。」
「そうなのじゃ。あの威力でも出鱈目なのじゃ。ティアの案でカインが十倍の範囲を、半分の威力で広げる事が出るのじゃ。」
「もはや、広域殲滅術式です。クリムゾン・ノヴァに匹敵します。そんな威力の魔道具が・・・。」
「魔法を使えない者まで使えるのじゃ。これは戦争を一変させるのじゃ。」
この世界に火薬は無く、戦争は大勢の人間が参加するが、局部的には一対一の戦いだった。剣で、槍で、鈍器で攻撃する。ツーマンセル、スリーマンセルと複数で組んで攻撃しても、相手も同じように複数になる為、一対一にならざる得なかった。
唯一、広範囲に攻撃できるのが魔法であった。それでも、一度に数人、広範囲でも十人程度を攻撃するのが、この世界における魔法の威力だった。
「人前での使用は禁止。この世界を激変させる可能性があるの。」
「むう、不服。」
「上手く行けば、半径百メートル位まで広げられそうなのだ。」
「ん、虐殺魔道具。」
「禁止なのじゃっ!」
「絶対に駄目よ。」
鼻を膨らませて仁王立ちのニーナと、金色の瞳を光らせるアデルの圧力と気配にカインとティアは沈黙した。後ろで安堵の吐息を漏らしたのは、ギルスとエレンとガッツポーズのミリアンだった。
「クエスト達成なのじゃ。」
空♂:新年、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。
ア♀:遅ればせながら、新年、明けましておめでとうございます。
空♂:では、まだまだ・・・(ピキーィィィィィィィィィン!)
ア♀:グッジョブ、カイン。遅いと思わないの?
空♂:ひぃぃっ!仕方ないのだ。正月休み明けの五連勤は辛いのだ。
ア♀:三が日は許せど、十日近く経っているのよ。
空♂:まだ、九日なのだ。
(-_-メ)ピッキィィィィィィン!ε=ε=ε=(ノ^∇^)ノ
ア♀:久しぶりに見たわ。まだまだ、続けさせます。本年も宜しくお願いします。




