魔王、初めてクエストを受ける 異世界百八日目
予告なく修正することがあります。
辺境の村を後にしたニーナ達は野営をはさみ、次の辺境に有りがちな小さな村へと辿り着いた。前回の村と違い、その村では人影が異様に少なかった。よく見ると、村人達は家の中にいた。
時折、窓の板を押し上げてニーナ達の様子を窺い、近づくと板を下ろす乾いた音が響いた。
「うにゅう、誰も出て来ないのじゃ。」
「何かを警戒している様ね。盗賊かしら。」
村に到着すると先頭を歩くカインがペースを落として、ニーナとアデルのすぐ後ろを進んでいた。真紅の眼は鋭い光を放っていた。
ニーナ達の前に三人の人影が現れた。ギルスとエレンは素早くニーナの前に移動すると、武器に手を掛けて腰を落とした。ミリアンとティアは両脇の少し後ろに立った。
「うにゅっ、何者なのじゃ。」
「儂等よりお前達が何者なのじゃ。武装して村へ入って来たら、盗賊だと疑われても仕方なかろう。お前さん達は狩人か。」
「うにゅう、真似っこなのじゃ。妾達は狩人なのじゃ。旅をしていてこの村に立ち寄ったのじゃ。」
「空き家か空き地を使わせて欲しいのだけれども。」
不機嫌そうに頬を膨らませるニーナの言葉を、笑いを噛み殺しながらアデルが引き継いだ。
ある程度の規模の町以上にしか宿屋はなく、小さな村では空き家を借りるか、空き地で野営することが常だった。街道沿いで野営をすれば、モンスターや盗賊への警戒が必要になる。モンスター対策の結界がある村でも、盗賊を警戒する必要があった。盗賊団の村で泊まれば、朝までに身ぐるみを剥される程度なら軽傷で、奴隷落ちや命を落とす事も。だが、村にとっても盗賊の斥候かと疑わなければ、厳しい辺境区を生き抜く事が出来なかった。
「ギルドカードを見せて貰おう。」
老人の言葉にニーナ達は大人しくギルドカードを見せた。暫くの沈黙が続くと、困り顔になった老人が叫んだ。
「早く、スワイプして赤いボタンをタップするのじゃ。」
「なっ!」
老人の言葉にギルスとエレンだけでなく、カインとアデルも目を見開いて口を開けた。ニーナ達は言われた通りにすると、ギルドカードから無機質だが銀鈴の様な声が鳴り響いた。
「会員ナンバー☆※〇◆。ニーナリーア。白銀等級。」
「にょあぁ。カードが喋ったのじゃ。」
驚きの声をあげるニーナ達と、眉間に手を当てて俯くカイン。そんなニーナ達を見て、不思議そうな表情を浮かべる老人達。
「呆れたわい。ギルドカードの使い方を知らなかったのか。」
「貰った時に説明を受けたのだけれど、舞い上がって説明は聞いていなかったのかしら。」
「しかし、この機能はオーバーテクノロジーと言うより、やり過ぎと思うのは俺だけか。」
ニーナ達が狩人だと判り、老人は村の長老だと名乗った。空が茜色に染まる頃、ニーナ達は村の片隅にテントを張り終えた。
何時の間にか居なくなったカインが、大きな猪を引き摺って帰って来た。素早く解体して切り分けると、コンロを出して夕食を作り始めた。料理を作るカインを横目に、アデルは村人達と交渉を始めた。猪の牙と皮と残りの肉を対価に、村で採れた野菜を手に入れサラダが追加された。
夕食の後、長老がやって来て村の事情を放し始めた。
「こんな辺境には盗賊すら出んよ。」
「それにしては警戒レベルが高いと思うけど。」
「盗賊は出んが、モンスターが出るのじゃ。それは人を囮にするのじゃ。」
そして、長老が話し始めたモンスターは、人間を操り別の人間を捕食するらしいと。囮について行った村人は森へと消え、二度と会う事がなかった。そして、森を恐れた村人達は、森に入る事を止めた。狩が出来なくなり、村では肉が貴重品となった。
「それであんなに肉を喜んでいたのね。」
「そなた達が狩人ならば、森を調べてくれんか。そして、モンスターを討伐して欲しいのじゃ。」
悲痛な表情を浮かべる老人を見るアデルの表情には、何の感情も見てとれない。アデルの横で話を聞いていたニーナが、ドンとテーブルを叩いて立ち上がった。
「このクエスト、エルノワールが受けるのじゃ。うにゃにゃ。」
勢いよく胸を叩くニーナの口を、音も無く背後に立ったカインが手で塞いだ。口だけでなく鼻まで塞がれたニーナが、苦しくなってカインの腕の中で暴れはじめる。
「カイン。窒息するわよ。報酬を聞いてからね。」
「ぶはっ!そうなのじゃ。報酬を聞いて危険度を考慮するのじゃ。」
「辺境の村では銀貨十枚がやっとじゃ。」
報酬を聞いたニーナ達は、あからさまに落胆の溜息を吐いた。村の長老が提示した金額も、辺境では仕方ない額だった。辺境の村では物々交換が主流で、貨幣の流通量が少ないのが当たり前だった。
黙って話を聞いていたカインが動くと、ニーナが警戒した猫の様に息を吐いた。カインは畑横に生える雑草を引き抜いて、根元の白い塊を目の高さに掲げた。アデルは少し感心した様な表情を浮かべると、カインを不思議そうに眺める老人を見た。
「あの草はこの村に必要なのかしら。」
「あれは雑草じゃ。喰って見た事はあるが、とてつもなく臭いぞ。」
「あの草をあるだけ収穫して。根は天日干しをお願いするわ。そうしてくれたら、銀貨五枚でこのクエストを受けてあげる。」
「そりゃ、願っても無い。皆であの草を収穫するとしよう。」
そして、夜が明けた。
数人の村人がニーナ達の朝練を見物し、朝食を見て口元を拭った。そして、ニーナ達は森へと足を踏み入れた。途中でカインが何度か地面に手を当て、進むべき方向を探った。そして、太陽が真上に着た頃、一人の少女が現れた。フラフラと近づいて来る少女は、ニーナが近づくと踵を返して森の奥へと向かった。
「フラフラとゾンビみたいだな。」
「まるで、操り人形の様だ。」
少女を追い駆けるニーナの両横にギルスとエレンが位置し、前をティアが進み、ミリアンは後に位置した。優しい笑みを浮かべたアデルが最後尾に位置していたが、どこにもカインの姿はなかった。
少女を追い駆けて森の奥へと分け入り、十数分の後にニーナ達の前に開けた円形の広場へと辿り着いた。中心に大人が数人でも抱えきれない大木がある以外、脛ぐらいの草が生い茂茂っているだけだった。
「うにゅう、明らかに怪しい木が立っておるのじゃ。」
「ティア。下がれ。」
腕を組んで呟くニーナに続いて、ギルスが緊張を孕んだ声でティアを呼んだ。ティアも何かを感じたのか、視線は大木に固定しながら数歩下がった。
操り人形の様な少女が大木の前に立ち、ゆらゆらと手招きを始めた。俯いているためその表情は判らない。そして、周りの木の陰から同じくぎこちない動きの、少年少女達が集まり始めた。
「うにょ、今まで気配は無かったのじゃ。」
「お嬢、私の気配察知にもなかった。」
驚きの声をあげるニーナに、エレンは応じると薙刀を出して腰だめに構えた。ギルスもロングスピアを持って自然体で立ち、ティアはフレイルのとげ付きの玉を地面に落とした。既に、ニーナはレイピアを右手に下げて、ミリアンは両手にナイフを持っていた。
「うにゅう、戦いの予感なのじゃ。」
ア♀:今回は色々と言いたいことがあるのだけど。
空♂:まぁ、なる様になるのだ。
ア♀;ギルスとエレンの武器が違うのは何故?
空♂;臨機応変に対応するのがハンターなのだ。
ア♀:刀も弓の活躍していないわよ。
空♂:何れ活躍の機会があるのだ。今回は広い場所なので薙刀と槍になったのだ。
ア♀:それにサボっていたでしょ。
空♂:自由にマイペース。まだまだ続きます。




