魔王、村人に感謝される 異世界百五日目
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御者台に座るカインは盗賊から奪った戦利品を仕分けし、幾つかの魔道具を何処へともなく消していた。村へは一時間程度で到着した。
到着すると二十代の女性に二人の男が近づいた。必死に何かを説明する女性を、中年の女性が見詰めていた。すると、中年女性が大きく手を振る女性の身体を、念入りに触り始めた。同じ人質になっていた初老の女性と娘が加わると、納得したのか男達は二十代の女性を抱き締めた。
「酷い目に会ったはずなのに、気にするのはそんな事なのかしら。」
「人間はエゴの塊だからな。」
ニーナとミリアンは首を傾げ、エレンが顔を曇らせた。ギルスはケッと吐き出して、近づいて来た老人を睨んだ。
「仕方がないのです。ここは辺境のモンスター避けの魔道具もない村です。皆、余裕が無いのですよ。自分の子か判らぬ子を育てる余裕はね。」
村長の言葉を聞いたミリアンは何かに気付いた様に息を吐くと、赤らめた顔を隠す様に俯いた。尚も、理解出来ていないのかニーナは再び、首を傾げて無表情に佇むティアを見た。
「ティアよ。何の事か判るのじゃ?」
「ん、ティア。賢い。」
「うにょ、判るのじゃ。教えて欲しいのじゃ。」
ニーナの問いに応えようとしたティアを見て、エレンとミリアンが慌てて近づく。ギルスがティアの口に手を伸ばすが、間に合わず可愛らしい口から言葉が放たれた。
「晩御飯は何?」
ギルスとエレンが地面に倒れると、村長の横を歩いていたカインがよろめいた。アデルが口に手を当てて、肩を激しく震わせていた。
村長の家に招かれたカインは、アデルに言われて渋々、盗賊のアジトで見つけた戦利品を並べた。村長は並べられた品々を見て、驚きの表情を作ると密かにカインを見詰めた。三十人に満たない村人が交代に、並べられたアイテムを見て手に取った。
「他のはここに持ち主が居ないのね。」
「そのようです。別の村の物でしょう。近隣の二つの村が無くなりました。」
尚も口を開きかけた村長を無視して、カインは鞄に残ったアイテムを詰め込んだ。カインとアデルを交互に見る村長に、アデルが溜息交じりに口を開いた。
「盗られたお金はどれくらいなの。置いて行ってあげる。」
村長と居合わせた数人の村人の顔に喜びが見て取れ、村人達は村長に期待の眼差しを向けた。カインの眉間にしわが現れ、ギルスとエレンの顔から表情が消えた。
「金貨五十枚ほどでしょうか。」
「一日銀貨十枚で五人家族が食べていけると聞いたわ。金貨一枚で三か月。ここは七つの家族があるのよね。一家族が二年近く食べていける。」
ゆっくりと達がるカインが、額に大粒の汗を浮かべる村長を睨んだ。既にギルスとエレンは腰の武器に手を掛け、ミリアンとティアは居合わせた村人の背後に立っていた。
「も、申し訳ございません。それだけあれば働き手を失った家族も助けられ、モンスター避けの魔具を買えると思ったのです。」
土下座して叫ぶ村長を呆れ顔で見詰めるアデルは、大きな溜息を吐いて残りの村人を見た。アデルの視線から逃げる様に、全員が力無く項垂れた。
「盗られたのは全部合わせても、金貨数枚だろう。優しそうなあんたを見て、欲が出ちまったんだ。許してくれ。」
「えっ、アデルは優しく・・・はっ!」
カインの言葉を下から切り上げられたレイピアが止めた。何が起こったのか判らない村長と村人と、鼻先数ミリでカインが躱したと理解したニーナ達は異なった驚きの表情を浮かべた。
「余計な事は言わなくていいの。斬るわよ。」
「それはレイピアを抜いて、振り抜く前に言ってくれ。」
「金貨十枚と結界の魔具?を出して。」
渋るカインに再度、アデルのレイピアが襲い掛かった。喉を貫く剣先を、痣やな後方宙返りで躱すカイン。尚もブツブツと恨み言を呟きながら、十枚の金を村長に渡して外へと出た。力無い足音と呪詛の様な恨み言と共に、村の中央に来たカインは途中で手入れた三メートル位の棒の先をロープでくくった。その上にモンスター避けの魔道具を置いて、三本の棒を調整しながら立てた。
「屑魔石なら十日、低級なら三十日毎に換えるのよ。ミスリルクラスのモンスターまで防ぐ事が出来るわ。魔石を途切れさせないように管理して。これは簡易的な置物だから、別の頑丈な台を作る事。そうそう、高さあの位置にする事ね。守られない家が出来るから。」
その日は村の空地へテントを張って泊まる事になった。テントの中には誰も居らず、ニーナ達は馬車の拡張された自室へと引き上げた。カインだけがテント横に気に背中を預けて、トラベラーズハットの鍔を下ろした。
翌日、ニーナ達が朝練を終えた頃、数人の村人が出て行った。朝食を食べていると、村の子ども達が珍しそうに舐めていた。
「お前達も食べるのじゃ。カイン、追加なのじゃ。」
子ども達の顔に喜びが浮かび上がるのを見て、カインは開きかけた口を閉じて人数分のベーコンエッグを焼いた。子ども達の親らしい女性から感謝を言葉を受けたカインは、猪の肉をと数種類の野菜との交換を依頼した。女性たちは満面の笑みを浮かべて、村で採れる種類の少ない野菜を大量にカインに渡した。
「うにゅう、ジャガなのじゃ。あまり美味しくないのじゃ。」
「むう、ピーマ。苦い。」
「あら、カインに料理してもらえば、とっても美味しくなるわよ。」
露骨に顔をしかめるニーナとティアに、アデルが笑顔で答えてカインに視線を送った。小さく頷いたカインは、ジャガイモに酷似したジャがの皮を剥いて拍子切りにした。小麦粉を軽くつけて熱した油に入れると、ピーマンに良く似たピーマを半分に切り始めた。中に細かく切った肉や、野菜を混ぜた肉を詰めて焼き始めた。揚がったジャガを皿に盛り付けると、劇でも演じているかのような仕草で塩を振った。焼き上がったピーマも皿に盛られ、こちらは村にあるソースが掛けられた。
カインは無言でニーナの前にジャガの皿を置いた。食って見ろと無言のカインから読み取るのは容易い。少し怒ったようなニーナが一切れのジャガ摘まんで、ゆっくりと結果は判っていると言いたげな視線で口に入れた。村の誰もが気の毒そうに眺める中、ギルスとエレンだけはそわそわとしていた。ニーナの眼が限界まで見開かれ、立ち上がって拳を天に突き挙げた。
「美味しいのじゃ!」
ニーナの叫びを聞いたミリアンとティアが、ジャガを摘まんで口に運ぶと関電でもしたか様に動きを止めた。ギルスとエレンも待ち切れなかったのか、満面の笑みを浮かべてジャガを口に入れた。
「お嬢、これはフライドポテトと言うのだ。」
「絶妙な塩加減。あっ、食べ過ぎると太るから注意が必要だ。ピーマンの肉詰めも楽しみ。」
ピーマの肉詰めを食べたニーナが動かなくなったので、ミリアンとティアも口入れると石化した様に動きを止めた。ギルスとエレンは数個の肉詰めを、村人が瞬きしている間に胃袋に収めた。
「感動しすぎだ。」
「ふふっ、シンプルだけど美味しいのよね。貴方達の分もあるから試食してみて。」
両手にフライドポテトとピーマンの肉詰めの刺さったフォークを持って、フルマラソンをトップで走り切ったランナーの様な表情を浮かべるニーナ。少し驚いた様なカインの言葉を、アデルの鈴の様な声が響き渡った。大量に皿に盛られた不人気野菜を、信じられないと言う表情で村人達はゆっくりと口に運んだ。そして、村の時間が止まった。
「感動し過ぎって言ったぞ。」
カインとギルスの叫びが見事にハモッた瞬間だった。アデルjとエレンはd\別のソースをかけて、味変を楽しむのに忙しそうにしていた。
カインが村人達にレシピを教えると、村長は秘密にすることを誓った。レシピは料理人のスキルと言えるため、財産と見做されているためだった。
「ここから七日ほどで、大きな町があります。そこでr商人ギルドに登録された方が良いでしょう。」
「大したレシピじゃないのよ。」
意外な村長の反応に驚いたアデルは、引き攣った笑顔で答えた。新しい味を知った村人から口々に、美味しかったの感想と感謝の言葉をニーナ達は受け取った。
「にゃはっ、妾は少し恥ずかしいのじゃ。」
ア♀:もう少し、インターバルを縮めて。
空♂:今回は自由に投稿しようと決めたのだ。
ア♀:自由って聞こえは良いけど、サボっているだけでしょ。
空♂:いや、練っているのだ。考えているのだ。
ア♀:行き当たりばったりの貴方が?
空♂:にゅう、まだまだ続きます。




