魔王、復活する 魔王一日目
予告なく修正することがあります。
ダンジョン、それは凶暴なモンスターが巣食い、天上の宝が、至高の逸品が、恐ろしく希少なものが見つかる場所。ある者はソロで、ある者はパーティーを組んで挑み、熟練、達人と呼ばれる猛者達ですら命を落とす場所。
ここはとあるダンジョンの最奥部。闇一色に染められた生命の気配も、風すら動きを止めた暗黒の世界。そんな暗闇に紫の光が二つ灯った。同時に、小さな爆発音が連続して響き、音の発生源に松明の明かりが揺らめいた。
紫の光を中心に松明が勢いを増すと、そこに黒い人影がいると判る。人影はゆっくりと立ち上げると、紫の眼で辺りを見渡した。次に更に明るくなった灯りの助けを借りて、人影は自身の身体を確認するかのように見た。
そこには釣り気味の大きな目が、猫の様な印象を抱かせる濃い紫の髪の少女が立っていた。大きすぎる服を引き摺った少女は、ゆっくりと右腕を上へ伸ばした。
「我、ふっかぁぁぁぁっつ!なのじゃ。」
少女は高く良く通る声で、誰にともなく大きく宣言をした。
「ふっはっは!我が?私?にゅう、妾?にょっ、妾なのじゃ。このニーナリーアが世界を再び支配するのじゃ。」
まだ、定まっていなかった一人称が妾に決まった瞬間であった。
離れた場所から、衣摺りと慌ただしい足音が、一人の少女を連れて来た。サイズの合わないメイド服を着た、眼鏡を掛けさせたくなるような知的な美少女。灰黒色の髪が少し乱れているのは、慌てて大きすぎる服を引き摺ったせいか。
「お嬢・・・魔王様、はしたないです。」
「にょっ、ミリアンなのじゃ。うにゃ、縮んでおるのじゃ。」
「お、魔王様もです。」
「うにゃあ、道理で服がぶかぶかだと思ったのじゃ。」
それから、二人は暫くお互いの身体を確認し、辺りの様子を見まわる事にした。
疲れたのか、元の場所に戻った二人は、地面に崩れ落ちる様に座り込んだ。
「うにゅう、ここは魔王城ではなかったのじゃ?しかし、縮んだ原因は何なのじゃ。」
「恐らく、充分な魔力が戻る前に復活したための魔力不足ではないかと。」
「三分が待てずに蓋を開けたら、バリバリの硬麺だったのじゃ?」
「はい、後三百年程はに必要だったかと。少し、お召し物のサイズ直しが必要ですね。」
ニーナの言葉に無表情なミリアンが地面に両手を付けると、ニーナの足元に魔法陣が広がった。魔法陣が紫色に光ると、ニーナの服が風も無いのに波打ち始めた。
「みょきょっ!」
「いけません。小さくし過ぎました。」
ニーナが絞められた鶏の様な声を上げると、ミリアンは集中するかのように目を閉じた。光が収まり魔法陣が消えると、真紅のドレスに身を包んだニーナがいた。
ミリアンは自身の足元に魔法陣を広げ、黒が基調のグレーのエプロンを着けた様なメイド服を自身の身体に合わせた。
「ふう、これで一安心なのじゃ。うにゅう、ここにはミリアンだけなのじゃ?」
「さあ、ギルス様、エレン様、ティア。」
「にんにん。」
二人と同じぐらいの身長の黒装束が、音も無く名を呼ぶ二人の背後に立っていた。独特の呟きに二人が慌てて振り向くと、黒装束は頭部に巻いていた布を取った。濃い緑係った髪をした儚げな印象の、半眼になった眼が一層、気だるげ見える少女が立っていた。
「ギルス、エレン、いない。」
「ふっふっふ、四天王の二人が居れば勝てるのじゃ。」
「誰に勝つのですか?」
「誰に勝つ・・・のじゃ?」
悪い顔で呟くニーナの言葉に、ミリアンが疑問を投げかけた。そして、三人は揃って首を傾げた。
「あれからどれくらい経ったのじゃ?」
「あれが何時か判りませんが、眠りに就いて七百年程になります。正確には・・・。」
「うにょ、正確はいらないのじゃ。うにゅう、何かとんでもない事が起こった様な気がするのじゃ。」
「ん、大災厄。悪魔王襲来。」
「うにょっ!それなのじゃ。四天王と一緒に戦ったのじゃ。そして、魔力を使い果たして黄泉眠りに就いたのじゃ。千年掛かる筈が、途中で起きたから縮んだのじゃ。」
三人は頭を寄せて、記憶の摺合せを始めた。
かつて、ニーナは突如、現れた悪魔王と戦いを繰り広げ、自身の力を使い果たして眠りに就いたのだった。しかし、三人には勝敗の記憶が無かった。
「勝ったのか、負けたのか記憶が無いのじゃ。」
「負けていれば消滅させられているでしょうから、我々の勝利で終わったと推測します。」
「ん、腹減り減り~。」
冷静なミリアンの言葉に、空気を読まないティアの言葉が続いた。同時に、ニーナの腹の虫が遠慮なく、大きな音を立てた。優しい笑顔になったミリアンの提案で更に、周辺を探索して食糧を得る事になった。
「魔王城の筈なのじゃ。時間停止の保管庫が有る筈なのじゃ。」
「ん、絶対、見つける。」
飢えた二匹の獣になった二人の後を、若干引き気味のミリアンが付いて行く。探索するにつれ、三人がいた場所は大広間の様な場所で、寝るには十分すぎる個室や、武器や防具の保管庫を見つけた。
「ん、すっか、すか。」
「武器も防具も殆どなくなっておるのじゃ。」
「それだけ、悪魔王との戦いが激しかったのでしょう。」
「ん、匂い感知。」
「うにゅにゅ、妾も感知したのじゃ。」
「時間停止状態の臭いを感知するなんて、魔王様もティアもどんな嗅覚ですか。」
一時間近く歩き回った三人は、やっと厨房を発見することが出来た。大きな観音開きの扉を開けると、隙間なく並べられた食材が現れた。
ミリアンが数種類の野菜を選び、手際よく切って皿に盛りつける。ティアが鍋で湯を沸かすと、ミリアンが切った野菜を入れる。そして、ニーナとティアが目を輝かせる前で、ミリアンは分厚い肉を焼き上げた。
「魔王様、サラダからお食べ下さい。」
「うにゅう、ミリアンは何時も同じことを言うのじゃ。」
「ん、学習するる。肉っ!」
先にステーキに挑むニーナを、ミリアンの厳しめの口調の言葉が止めた。あっと言う間に、サラダを平らげたティアが、美味しい湯気を上げるステーキに挑みかかった。
充分に食べた三人はミリアンが淹れたお茶を飲みながら、これからの事を話し合った。
「外の世界がどうなっているかを知る必要があります。」
「ティア、魔王城の外を調べて欲しいのじゃ。」
「ん、お任せ。」
ティアは左の人差し指を右手で掴み、有名な印を作って目を閉じた。小さな魔法陣が手に浮かぶと、ちゅうと鳴き声がして、大量の鼠が走り去る気配がした。
「うにゅう、ギルスとエレンは何処へ行ったのじゃ。」
ア♀:のじゃ姫登場ね。もう少し、後の予定だったのでは?
空♂:何となくジト目のニーナがいる様な気がして・・・
ア♀:妄想が感じる程度には、調子が良いと言う事ね。
空♂:うにゅう、何となくディスられている気が・・・
ア♀:妄想が見え出すとヤバいから、その時は病院に行くのよ。
空♂:にゅう、まだまだ続きます。




