魔王、旅に出る 異世界百日目
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数日の間、ハンターギルドからの依頼も採取から討伐がメインになり、ファインナル周辺のモンスターがニーナ達によって大量に討伐された。時折、珍しいモンスターが混じり、ギルドの受付嬢が目を剥く事があった。
「北東に向かうと海があるそうだ。」
「そろそろお肉にも飽きて来たわね。」
カインの言葉にアデルの眼が輝く。海と聞いてギルスとエレンの顔もほころぶ。
「海とは大きな湖なのじゃ。向こう岸が見えないほど広いのじゃ」
「ん、しょっぱい。」
「巨大な蛇や山の様なモンスターが生息する危険地帯と聞きます。」
ニーナ達はここ、ファインナル周辺にいた為、海を見た事がなかった。地球もどきに転生していたギルスとエレンは海を知っていて、魚や海老、蟹や貝などの料理も知っていた。
「刺身が最高なんだな。ああ、寿司も食いたい。」
「刺身も良いけど、塩焼きも良いな。白いご飯が・・・。」
かつての記憶を思い出して、美味しい食事を思い浮かべるギルスとエレン。エレンの言葉に二人は米が無い事に気付いてしまった。
「心配ない。米はあるぞ。この辺りはたまたま、小麦の生産が主流だっただけだ。周辺の集落には米を主食にしているところもあった。」
「時々、食事にも出てたと思うけど。肉が強烈すぎて、記憶に残っていないのかしら。」
翌日、ニーナ達は旅の準備に取り掛かった。カインは七人で移動するため、馬車を買うべく商人ギルドに向かった。ニーナ達も食料と薬の他に、矢や投擲用ナイフなどの消耗品を買いに行った。
商人ギルドに行ったカインは、幌馬車を購入して馬を選んでいた。
「競走馬の様な馬か農耕馬しかいないのか。軍馬の様な訓練された馬はいないのか。」
「そんな馬はいないよ。貴族様の乗る見た目のいい馬か、体力一番の馬しかいないよ。」
「丈夫で速い馬はいないか。」
「そんな馬がいたら引っ張りだこさ。おっ、居るぞ。確か、南に半日ほど行った所に草原がある。そこに竜馬の群れがいると聞いた。竜馬は凄いぞ。普通の馬の何倍も速く走るし、三日ぐらいなら走り続けるぞ。ただ、もの凄く凶暴だ。雑食だが肉を好み、低ランクのモンスターすら捕食する。捕まえるとなると高ランクの狩人が・・・って、どこ行った。あの坊主。」
馬を扱っている商人が話している間に、カインは南の草原を目指した。二トントラック程の幌馬車を引っ張りながら、二時間程度で走破して見せた。暫く、馬車を触っていると、遠くに馬のいななきが聞こえた。カインは顔を上げていななきの聞こえる方向を見た。
「馬・・・なのか。ユニコーンか。」
カインの呟きは至極当然と言えた。拳大に見える姿は競走馬と変わらないシルエットを持っていたが、よく見ると毛の代わりに鱗に覆われていた。額には天を指す角が生えており、一本のものや二本のものがいた。カインは馬車を置いて、ゆっくりと竜馬の群れに近づいた。
買い物を終えたニーナ達は、アデルからマジックバッグを貰っていた。腰に着けるポーチ型と、背中に背負うバックパック型のマジックバッグだ。
「そのポーチには予備武器と防具を入れて、通常のポーチには各種ポーションを準備。バックパックには食料と着替えに一人用テント入れて。]
「このテントはワンタッチで設営できるのか。」
「カインが作った特別製よ。対物理、対魔法の結界が付いてて、耐熱、耐寒、耐水、風も防ぐ、全環境対応型の小型トーチカよ。まっ、緊急用だから。」
「こんな物が作れる彼は何者だ。」
「趣味の人よ。今頃、馬車も魔改造している筈よ。」
ニーナとティアは十数本の並べられたナイフの中から、真剣な表情で自分達に合ったナイフを選んでいた。ミリアンはすぐに選び終え、両足と腰裏に四本のナイフを装備した。手に取ったナイフを振り回すニーナとティアが、エレンに怒られて正座させられるまで続いた。
扉が開き疲れ切った表情のカインが入って来た。その姿にニーナ達は無言で見詰める事しか出来なかった。
カインのマントは焼け焦げ、膝裏まであった丈は首筋のすぐ下にあった、何かの革で出来たであろうシャツには、無数の引っ掻き傷と焼け焦げが見て取れた。
「うにゃ、カインが大変なのじゃ。」
「あら、大変だったみたいね。」
「ブレスがあるとは聞いてない。竜馬って危険なモンスターだな。」
「坂本さんは偉人なのにね。」
竜馬と聞いてギルスとエレンが顔を突き合わせて、今にも掴みかからん勢いで激しく口論していた。ミリアンとティアが口論の原因も内容も判らずに、二人揃って首を傾げていた。
「竜馬は初めてアメリカのスパイになった人だろ。」
「違う!土佐城を建てた人。」
「土佐城?安芸城の間違いでは。」
「土佐城で初めて鰹のたたきを発明したの。」
「なんか、色々と複雑ね。高知城よね。」
「言わない方が良いと思うよ。」
見ていたアデルの呟きにカインが答えて、ニーナ達は激しく言い合っている二人を放置して旅の準備を続けた。
準備を終えたニーナ達は、尚もそっぽを向いているギルスをエレンと馬車に積み込みに来た。幌に覆われた荷台に入ると四枚の扉がある事に驚いた。
「うにょ、扉があるのじゃ。」
「幌の内側に何故?デザインでしょうか。」
「カイン。説明をお願い。」
「了解。各自の寝室。シャワールームとトイレ完備に、キッチンとダイニング。大浴場は男女別にしてある。各種マシーンを揃えたトレーニングルームもある。」
扉を開けて中を覗いたニーナ達は悲鳴に近い歓声を上げて、跳び込む様に扉の向こうへと消えて行った。暫く、各々が四つの扉を行き来して、疲れたのか荒い息を吐きながら幌の荷台へと戻った。ニーナとティアは初めて遊園地に来た子どもの様に、ギルスとエレンは抱えていた不安が消えた様な晴れやかな顔をしていた。
「凄いのじゃ。ふかふかベッドに雨が降る部屋があるのじゃ。」
「トイレ、臭くない。」
「キッチンでしょうか。見た事もない様な魔道具の数々。」
「水洗にウォシュレットまであった。」
「シャンプーとコンディショナーにボディソープ。どれほど望んでいた事か。」
はしゃぐニーナ達をカインとアデルは、年長者の眼差しで眺めていた。買って来た食料はキッチンの棚に入れ、各種道具類は多目的室の中にトレーニングマシンと共に置いた。
カインは宿屋の離れに置いた各種魔道具を片付ける前に、宿屋での最後の夕食の準備に取り掛かった。何時もの様に料理をしていると、何時もの様に宿屋の娘が覗いていた。気付いているはずのカインもアデルも、気付いていない振りをしていた。気付いていないはずのカインが宿屋の娘を見詰め、有ろうことか手招きまでして見せた。何時も気付かれていないと思っていた宿屋の娘は驚きながらも、悪戯を見つけられた子どもらしい表情でカインの招きに応じた。姿を見せた宿屋の娘にカインもアデルも何も言わず、まだ十歳ぐらいの娘はスカートを摘まんでモジモジとしていた。
「明日。出て行くんだよね。」
「暫くの間、世話になった。」
「少し、お願いがあるの。」
「出来ることなら。」
今にも泣き出しそうな表情の娘を見かねたのか、アデルはカインと話す娘から目を背けた。娘は暫くの沈黙の後、申し訳なさそうに小さな声で呟いた。
「その魔道具の幾つかを置いて行ってくだしゃい。」
「噛んだ?」
「はあっ!」
冷静に分析するカインと、娘がした要求に驚くアデル。異なる反応を見せる二人を、知ってか知らずにか娘は続けた。
「いっぱいの魔道具は使い方が判らないけど、その火が付く魔道具は凄く欲しいのですよ。」
「判った。これをあげるよ。君がお婆さんになっても火は付くよ。」
どんな表情をしていいのか判らないアデルを放置して、少女のささやかな望みをカインが叶えた。何時もは感情の読み取れられないカインを、アデルは何時もより優しい目で見守っていた。
宿屋の娘が安堵と一緒にライターを持ち帰った頃、ニーナ達は追加の食材に加え、薪や布きれの消耗品を大量に購入して帰って来た。
カインの作った大量の料理が、少女達の胃袋に消えて行った。ニーナ達が部屋に戻った頃、カインは数種類のレシピを宿屋の主人に渡していた。
「明日は出発なのじゃ。魔王は旅に出るのじゃ。」
ア♀:色々と言いたい事があるのだけど。
空♂:ゲームと趣味だな。サボっていたわけではないのだ。
ア♀:それは理解しているけど、この間は許容値を越えているけど。
空♂:ごもっとも。次回は頑張るのだ。
ア♀:無性に原子に分解したいのだけど。
空♂:うにゃっ!まだまだ、続きます。続けられる?
ア♀:続けなさい。終わるまで。出ないと・・・。
空♂:うにゃぁぁ、続きますっ!




