魔王、美味しいを食す 異世界九十四日目
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夕食を終えたニーナ達は簡単に、昼間の出来事をカインに伝えた。所々、カインの眉間にしわが刻まれたが、アデルの一睨みでカインの追及は無かった。少し怪訝そうな表情を浮かべたミリアンとティアも、一言も無く自室に戻って眠りに就いた。
二人になったアデルが、カインに何か言いた気な視線を向けた。
「のじゃ姫達のいた城の魔法陣はアンジュが解除した。あの城自体が巨大な魔道具になっていたようだ。」
「先代の魔王の仕業かしら。」
「判らん。それより、リトルワールドが増えた。」
「はあっ!何個あると思っているの。」
「色々と製造出来て便利だ・・・よ?」
「何故、疑問形?」
不可解な会話が続いたのち、カインは事の詳細を語った。ニーナ達が居た城には複数の結界魔法が施されており、千年以上維持できるように魔力燃料も置かれていた。複雑な結界を一つずつアンジュが解除したが、どうしても解除できない数個の術式が残ったと説明した。
「無理矢理、魔力供給を切ろうとしたら、リトルワールドになったのね。」
「その通りだ。恐らく、一種の防御機構が働いたのだと思う。」
「それでその世界の広さと状況は?」
「地球の三分の一程度?面白いのは、半分の地区が四角い陸地が百メートル位の川で碁盤の目の様に並んでいて、もう半分は逆に百メートル程の通路で仕切られている。」
「その陸地や仕切られた池が二十キロ四方と言う訳ね。もはや、何者かの意図を疑いたくなる事案ね。」
カインが淡々と語る状況を、アデルは眉間にしわを寄せて聞いていた。そして、目を閉じて数秒後に、何かを思いついたように見開いた。
「無人なのよね。」
「無人だな。」
「牧場と畑に養殖よ。特化したドローンを作って管理させて。のじゃ姫達が狩った牛に豚に鶏は、とっても美味しかったの。あれを育てるのよ。」
「あれはモンスターでは無いので、育てる事は可能だと思うが。」
「やるのよ。野菜の他に薬草類も育ててね。ここの野菜は美味しいわ。適度な気候が保たれているせいね。名前が違うだけで、どの世界でも同じでしょ。さて、池はどうするかが問題ね。」
「不思議な事に汲み上げると真水になって、塩が完全に分離される。」
カインが水路や巨大池の水を汲み上げたところ、足元に白い小山が瞬時に出来た。舐めて見るとカインが想像した通り塩だった。話を聞いていたアデルが、興奮した様に顔をカインに近づけた。唾を飛ばして様々な指示を出すアデルと、慣れているのか涼しい顔で頷くカイン。アデルの息継ぎが聞こえる様になるまで、カインは時折、相槌を打ちながら静かに聞いていた。
「理解した。陸地で牛、豚、鶏に野菜と薬草、池に各種魚を放流だな。二十キロ四方だ。クジラだって放流できるぞ。」
「クジラね。それ程、重要ではないわね。別のリトルワールドで大量に育っているでしょ。絶滅種や絶滅危惧種も大量に育っているでしょ。」
「外に出せないのが残念だ。まあ、この世界の絶滅するかも知れない種を、色々と育てるとするよ。」
「お願いね。食は生命維持活動の基本だからね。」
大きく頷くアデルを見たカインは、健やかな寝息を立てるニーナ達が居る方向を見た。
翌日、カインはギルスとエレンを伴って、ダンジョンの入り口に立っていた。早朝訓練が終わり朝食を終えると二人は、無言でカインにダンジョンに連れられて来たのだった。
「どうしてダンジョンなんだ。」
「私に聞かれても判らないよ。ギルスと一緒に問答無用で連れて来られた。」
「設定調査だ。二人がメインでダンジョンアタックしてもらう。」
「はあっ。」
「潜れ。」
カインの言葉にギルスとエレンは抗議の声を上げた。しかし、間髪入れずにカインと、何時の間にか立っていたアンジュに却下された。渋々顔でダンジョンへと向かう二人の後を、カインとアンジュがゆっくりと追い駆けた。
スライムとゴブリンを難無く討伐して進むギルスとエレンを見て、カインとアンジュは顔を突き合わせて話し始めた。
「二人とも、出口へと向かえ。」
「えっ、まだ二階層だろ。」
「戻るの。」
突然、カインとアンジュはギルスとエレンに、外に出る様に命じた。釈然としないギルスとエレンが地上へと向かうと、カインとアンジュはダンジョンの奥へと消えた。地上へ出たギルスとエレンが少し待っていると、ダンジョンの入り口にアンジュが現れた。
「はい、ダンジョンアタック再開。」
「今度は潜るのか。」
スライムとゴブリンを倒しながら進むギルスとエレンが急に立ち止まった。馬車がゆっくりと擦れ違えそうな広さの通路に、スライムとゴブリンが隊列を組んで向かってきていた。見える通路の奥まで、大量のモンスターが埋め尽くされていた。
「もはや、モンスターハウスだろ。」
「幾ら最弱と言えど、この数は脅威だ。」
「だから、言ったのだ。数の暴力は心が折れるのだ。」
「その語尾は止めろ。アデルに相談だな。」
宿屋に戻ったカインはダンジョンの調整をアデルに話した。大きな溜息を吐いたアデルが、眉間を指で押さえながら話し始めた。真剣な面持ちでアデルの話を聞く、カインとアンジュは所々頷きながら、感嘆の溜息を漏らしていた。
「最強種の星龍と人外の貴方じゃ、ろくなことにならないと思っていたけど。」
「他の人間の強さが今一、理解出来んな。アデルの言う通り、ホブゴブリンを増やそう。」
「エンカウント率三十パーセント。ホブは五パーセント以下。ボスはハンターウルフを五体まで。ダンジョンボスはリーダークラスを用意して。」
その後、ダンジョンに向かったギルスとエレンが、ハードな運動をこなした後の笑顔で戻って来た。離れのテーブルにはニーナとティアが座り、ミリアンが二人の後ろに静かに立っていた。
ギルスとエレンが席に着くと、カインとミリアンが大皿を並べ始めた。
「うにゅう、匂いだけで美味しいと判るのじゃ。」
「ん、待ち切れない。」
「牛に豚に鶏。あれらを狩ることが出来る貴方達は実質、青銀等級の実力を持っていると言う事。」
「うにょ、やはり強いモンスターだったのじゃ。」
「ん、ヤバヤバ。」
「味の方もやばいわよ。ミリアンも席に着いて。いただきます。」
アデルの唱和で大皿に乗ったステーキや唐揚げ、肉じゃがに八宝菜や酢豚などがニーナ達の口へと消えた。自分達で狩って来た獲物が、今まで見た事も無い料理になっている。この世界の料理は、焼くか煮るかの選択肢が無かった。カインが作る料理は、ニーナ達には宝物の様に見えたのかも知れない。
「お嬢。料理ってのは、色々な種類があるんだぜ。」
「その通りだ。私も沢山の料理を見て、食べて来たのだぞ。」
「それで、お二人は料理が出来るのでしょうか。」
異世界の料理を語るギルスとエレンの輝いていた眼から、ミリアンの放った一言は全ての光を奪った。何かを察したニーナは、作り笑いを浮かべて黙り込んだ二人を見た。無言で料理を口に運んでいたティアの眼にも、雨に濡れる捨てられた子犬を見る様な眼差しがあった。
「お、俺は食べる専門だから、料理は出来ない・・・かな。あっ、カップラーメンは得意だぞ。」
「私は料理教室にも通ったのだ。レシピ通りに作ったはずなのに・・・うっ、」
「これ以上は聞いてはいけないみたいね。私も作りはするけど、カインの様に美味しくとはいかないの。ミリアンは興味があるなら、カインに教えてもらえばいいわ。」
カインは俯いているギルスとエレンの肩に、優しく手を置いて小さな声で呟いた。
「カップラーメンを舐めるな。」
はっとして顔を上げる二人と、カインの呟きが聞こえたのか溜息を吐くアデル。ニーナ達も興味を失くした様に料理へと戻った。
「美味しい料理が食べられるのは、とっても幸せな事なのじゃ。」
ア♀:時間が開いているけど。
空♂:つい、懐かしいリメイクゲームを買ったのだ。
ア♀:夢中で遊んで、投稿を忘れたのかしら。
空♂:書く事すら忘れて遊んでしまったのだ。最近は寝不足なのだ。
ア♀:子どもか!貴方という・・・。
空♂:わぁぁ、まだまだ、続きます。




