魔王、勝利を掴む 異世界九十日目
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装備を整えて再び、八人の狩人がニーナ達の前に立った。薄く黄金に輝く鎧の剣士が前に進み出た。ニーナ達は少し硬い表情で、静かに剣士を見詰めていた。
「待ってもらってすまなかった。まずは、改めて我々から名乗ろう。俺はスターライト騎士団のリーダー、アリオン・クロスだ。伯爵家の三男坊で狩人をやっている。巷では冒険伯などと呼ばれているがな。」
アリオンは名を告げると、もう一人の黄金鎧が一歩前へと進み出た。背はアリオンより僅かに高く、二メートルはあろうかと思われた。
「侮った非礼を詫びよう。アリオン同様、剣士のキルデス。見た通り魔人族、グルルカ族だ。蒼雷の二つ名を貰った。」
「儂はドワーフの大盾戦士、フセグルじゃ。鉄壁の二つ名で呼ばれとる。」
「あたいはトルージャ。バトルリンクス、黒豹族のスカウトさ。二つ名は疾風。」
「私はツキーセの森のエルフ、弓術師のイルネヤ。私は外さない天眼の二つ名を持っている。」
大きなタワーシールドを持った黄金鎧が名乗り終えると、黒い鎧の豹頭が進み出て名乗った。そして、プラチナブロンドに白銀に輝く軽鎧が良く似合う、大きな弓を持ったエルフが名乗りを上げた。
そして、ローブ姿の三人の順番になった。
「俺は魔法師のウツデオ。簡単な生活魔法なら使える者は多いが、攻撃や補助系の魔法は貴族以外に使えるのは魔人族ぐらいだ。ウデネ族の水刃とは俺の事だ。」
「俺は一応、女だ。フジュの森のダークエルフ、バッフィー。鼓舞姫なんて不本意な二つ名がある。」
「あっ、バッフィーさんも魔法師ですよ。補助系が得意です。そして、私も魔法師ですよ。治癒魔法が得意なのですよ。平民の出てですが、大陸聖教に席を置く僧侶なのです。何故か冷徹聖女の二つ名があるのですよ。優しい私に不思議ですよね。」
青いローブに深い青の水晶玉を埋め込んだ杖を持つウツデオと黄色いローブの褐色美女バッフィーが、ニコニコして話す白いローブの情勢を睨んだ。アリオン達も嫌な事を思い出した表情で、白ローブの女性を見た。
「彼女はナオシス。治癒魔法師だ。但し、近接戦闘も得意で、戦鎚に見えるがあれは杖なんだ。」
「あれで殴るから、先が黒くなっているのは返り血だもんな。」
「他にも鮮血天女とか虐殺聖女とか呼ばれているよな。」
「ふふふ、気のせいですよ。少し、静かにしましょうかぁ。」
名乗り忘れたナオシスを紹介したアリオンの後に、キルデスとウツデオが小声で呟いた。無表情になったナオシスの、棒読みセリフで二人の顔から血の気が引いた。
「俺はカイン。剣士だ。」
「私はアデル。同じく剣士よ。」
「ギルス。剣士だ。」
「エレン。私も剣士だ。」
「ニーナなのじゃ。うにゅ、妾も剣士なのじゃ?」
「ミリアンです。一応、剣士と言う事になるのでしょうか。」
「ん、ティア。剣士?」
「何故、疑問形っ!」
次々に名乗ったニーナ達は全員が剣士と言ったが、最後の三人が語尾を上げたせいでアリオン達だけでなく見物人からも大きな声が上がった。
「剣士だけのパーティーはバランスが悪いぞ。せめて、斥候やスカウトが必要だぞ。」
「カインが出来るし、ミリアンとティアも斥候は出来るわ。私とカインが錬成魔法を使えるから、各種ポーションもあるわ。」
「それでも、遠距離せめて、中距離からの戦力も必要だ。」
「私とカインは遠距離もいけるし、ギルスとエレンは槍も使える。それほど苦労したことは無いの。それより、お腹も減って来たから、さっさと始めましょうか。」
「そろそろ昼か。作戦を立てる時間をやろう。準備が出来たら声を掛けてくれ。」
アリオンの指摘通り剣士だけのパーティーはバランスが悪い。モンスターを狩ることがメインの狩人と言えど、追跡や探索をする斥候や遠距離から援護、狙撃する弓術師が必要とされていた。治癒魔法師は大陸聖教に多く在籍しているため、引く手あまたの職になっていた。
「ギルスとエレンでキルデスを押さえて。のじゃ姫とティアでスカウトの豹頭を、ミリアンは魔法職を押さえられるかしら。」
「承知しました。」
「うにゅ、弓術師はどうするのじゃ。」
「貴方達が狙われれば私が対処する。カインは放置で大丈夫。彼に矢は当たらない。」
「充分だ。さて、行こうか。王国最強。スターライト騎士団。」
アデルの指示で簡単な打ち合わせを終えると、カインが良く通る声で準備が出来た事を告げた。アリオンが立会人の一人に目で合図を送ると、良く通る声で試験開始の号令が放たれた。
カインの前を走るギルスとエレンは、キルデスに向かって仕掛けた。ギルスの振り下ろした剣を、片足を引いて最小限の動きで避けるキルデス。背後から襲い掛かるエレンの剣激を、振り向きもせずに背中に回した剣で受け止めた。
豹頭のトルージャはイラついていた。不規則なステップを踏みながら、レイピアで鋭い突きを仕掛けるニーナ。その突きを躱した所をティアのフレイルが、絶妙のタイミングで襲い掛かる。
「魔法師の三人にはあのお嬢ちゃん一人で相手するのかい。並みのパーティーなら出来たかも知れないね。だけど、あたい達は白金等級さね。ナオシスが唯の治癒魔法師と思うなって事さ。」
トルージャの言葉が終わると、ミリアンの牽制に無反応だったナオシスが顔を上げた。推しのアイドルに出会ったファンの様な、恍惚とした笑顔が貼り付いていた。ウツデオとバッフィーにナイフを向けながら、ナオシスの気配から逃げる様にミリアンは位置を変えた。
「あと少しなのじゃ。ティア、ミリアンに加勢するのじゃ。」
「ん、御意。」
ニーナの言葉に小さく頷いたティアが、振り下ろされたナオシスのメイスを盾で受け止めた。
アデルの口元に笑みが浮かび、カインの行く手をフセグルのタワーシールドが阻む。
「天眼のイルネヤはノーマークかい。見くびられたものね。君はアリオン狙いね。悪いけど、狙い撃たせてもらう。」
イルネヤは三本の矢を連続で射る妙技を見せた。矢がカインの無防備な背中に迫った瞬間、マントに切れ込みが入ると触手の様に矢を叩き落とした。
「テンタクルマント。自動迎撃付だけど、少しグロいわね。」
マントの性能を信じているのか、カインの疾走は止まる事が無かった。立ち塞がるタワーシールドにカインは、直前で身を捻り見事な後ろ回し蹴りを放った。
華奢に見えるカインの蹴りが、重厚なタワーシールドを吹き飛ばす。誰が想像できただろうか。中学生の様なカインが、重戦車の様なフセグルを吹き飛ばす未来を。
「敏捷アップに攻撃力アップ。エンチャントマシマシね。」
「嘘だろ。」
一瞬、驚いたアリオンの表情が戦士のそれに変わり、一直線に突っ込んでくるカインを睨み付けた。アリオンにとって絶妙のタイミングと言えた。疾走するカインの速度と、アリオンの最大限の速度で振り下ろす木剣。スターライト騎士団はアリオンの勝利を確信していた。カインの姿が消えるまでは。
アリオンの会心一撃がカインを切り裂くと、幻の様にカインの姿が掻き消えた。
「残像だ。」
「なっ、そっちか。」
神速で回避したカインに、アリオンも神速で反応して見せた。ギルスとエレンも、スターライト騎士団からも感嘆の溜息が漏れた。
「流石ね。白金等級。でも、覇王の一撃は躱せない。」
誰もが視認できない程の速度での攻防をまるで、見えているかの様に語るアデル。そのアデルの眼が大きく見開かれた。
「カインっ!」
「ちいぃ。俺は急に止まれないって言っているだろ。」
カインの木刀の切先は、アリオンの顔面の数ミリ手前で止まっていた。目を見開いて動かないアリオンは、状況を理解したのか大きな溜息を吐いた。
「にゃは、妾達の勝ちなのじゃ。」
空♂:スターライト騎士団撃破なのだ。
ア♀:やっと、旅に出るのね。
空♂:次回は養成所卒業とギルドでのランクアップなのだ。
ア♀:もう少し、ペースを上げないかしら。
空♂:頑張ります。まだまだ、続きます。




