表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/33

魔王、卒業試験に挑む 異世界九十日目

予告なく修正することがあります。

  アンジュが東の空へと飛び去った日から、ファインナルの町では数々の噂が飛び交っていた。

 曰く、黒い龍が世界を滅ぼしに来たとか。曰く、黒衣の剣士が黒い龍を撃退したとか。

 町のあちこちで囁かれる噂は、ニーナ達の耳にも届いていた。


「黒衣の剣士は二メートルを超える大男だそうだ。」

「丸太より大きな剣を振るったと私は聞いた。」

「モンスターが逃げ出す様な顔をしているとも噂されていました。」


 真剣な表情で話すギルスとエレン、無表情に語るミリアンの口元が痙攣している。そして、堪え切れなくなったニーナとティアが吹き出した。俯いたままのアデルの肩が、小刻みに震えて笑っていると判る。


「やれやれだ。それより三日後の卒業試験を受ける。相手は王国最強の白金等級パーティーだ。」

「ふふ、冒険伯と呼ばれているのよね。」

「ドラゴンを撃退したことがあるそうだ。」

「調べて来たのでしょ。」


 カインが調べた結果、三か月目の卒業試験に来る試験管は、貴族家の三男が率いるパーティーだと判明した。希少な魔法師が三人も在籍する、王国でも二つしか存在しない白金等級のパーティー。不可能と言われる数々の依頼をこなし、数多のレアモンスターを討伐して来た実績があった。


「卒業試験でその最強パーティー相手に、俺達の実力を認めさせるのだろ。」

「私達に出来るだろうか。」

「ふっ、妾と四天王がおるのじゃ。負けるはずがないのじゃ。」

「お嬢様。早すぎた復活のため我々は弱体化しています。」

「ん、よわよわ。」


 不安げなギルスとエレンを鼓舞するようなニーナは、ミリアンとティアの言葉に両手を床について項垂れた。


「ギルスとエレンは三か月、貴方達も二カ月の間、私とカインの特訓を受けたでしょ。魔人族の貴方達と住人族の二人が人族のパーティーに劣るとは思えないわ。」

「八人パーティーだが、唯人族は二人だ。リーダーと回復魔法師が唯人族で、後はドワーフにエルフ、獣人が二人に魔人族が二人だ。」

「あら、強敵じゃない。でも、パーティーで挑んで勝てばいいのでしょ。カインが一人で倒してもみんなで卒業できるわね。」

「アデルはもう少し、働こうと思って欲しいのだが。」

「疲れるのは嫌よ。第一、戦闘は貴方がメインでしょ。私、九割以上を解析に回しているの。」


アデルの言葉に明るくなったニーナは、カインの情報で再び項垂れた。カイン一人で勝てると判り、ニーナは顔を上げて笑顔になった。


「のじゃ姫の百面相は面白いわね。残りの二日はいつも通りに座学と、クエストを受注してもらうわ。」

「また、薬草採取なのじゃ。しかし、ゴブリン程度なら、倒しても良いのじゃ?」

「お嬢様、ギルス様とエレン様もです、ハンターウルフを討伐していけません。ギルドの職員さんが、遠い目になっていました。あれはお嬢様の悪戯を見つけた、私の心境に通じるものがありました。」


 悪戯を思いついた子どもの様な笑みを浮かべるニーナに、何人もの悪戯好きの子どもを見て来た様なミリアンが呟いた。

 二日間、ニーナ達はアデルの予告通りに、座学と採取を繰り返して過ごした。そして、三日目の朝、ニーナ達は離れで朝食を摂った。


「昨日、ギルドで聞いて来たの。卒業試験は筆記と実技の二種類。筆記は薬草や鉱物、モンスターの知識が試される。」

「うにゅう。」

「むう。」


 食後のお茶を飲みながら話すアデルの言葉に、ニーナとティアがあからさまに眉を寄せて唸った。その様子が面白かったのか、くすりとアデルの口から笑いが漏れる。


「筆記はよほどのことがない限り大丈夫。問題は実技よ。上級ハンターと模擬戦をして、黒金等級に相応しい実力を認めてもらう必要が有るの。」

「それは勝てなくてもいいのか。」

「勝つ必要はないそうよ。ただ、一撃も入れられなければ、合格はしないそうよ。」

「勝っても良いのだろう。なら、問題はない。」


 カインの言葉にニーナとティアの顔が綻ぶ。全員で狩人養成所に向かうと、卒業試験に挑戦する希望者たちが、掲示板を見ては項垂れて教室へと向かっていた。

 掲示板の前に来たニーナ達は張り出された紙を見て、新人狩人達が落胆していた理由を見つけられなかった。ギルスとエレンは貼り紙を見て、驚きの声を上げてニーナ達を振り向かせた。


「模擬戦の相手がスターライト騎士団だと。」

「王国に二組存在する白金等級の狩人達だ。しかも、スターライト騎士団は序列第一位。最強だぞ。」


 この世界に転生し十年以上生きて来たギルスとエレンは、スターライト騎士団が成した偉業の数々を知っていた。万能薬の材料の採取、高難易度ダンジョンの攻略、レアモンスターの討伐などなど。


「中でも、王都近くに襲来したドラゴンを撃退した事で、リーダーのアリオンは男爵位を貰ったんだ。」

「パーティーメンバー全員が二つ名を持っている。中でも、凄いのが剣士の蒼雷ことキルデスと、鉄壁ことドワーフの重戦士フセグルだな。強力な剣と盾だ。」

「エレンの言う通りだ。他にも弓術師の天眼のイルネヤ。盗賊の疾風トルージャ。弓の遠距離攻撃と中距離からの投擲も厄介だ。」

「そうね。水刃ウツデオの攻撃魔法と、冷徹聖女ナオシスの治癒魔法に、鼓舞姫バフィーの補助魔法。この三人の魔法も厄介極まりない。」


 ギルスとエレンの話にニーナとティアの表情が曇り、二人が話し終えた時には項垂れていた。


「倒せば合格だろ。相手は俺達が子どもだと侮る筈だ。隙だらけだろうから難しくはないだろう。」


 カインの言葉に目を輝かせたニーナとティアを先頭に、筆記試験が行われる部屋に入った。そこにはニーナ達だけで。他の生徒の姿は無かった。

 そして、筆記試験が終わり、点数が掛かれた答案用紙が配られた。


「ふっはっは、合格したのじゃ。」

「ん、合格。よゆー。」

「のじゃ姫は四十一点でティアは四十点じゃない。合格ぎりぎりよ。ミリアンは八十七点、エレンが七十八点。二人は良く勉強しているわね。ギルスは六十二点でもう少し勉強が必要ね。」


 合格を喜ぶニーナとティアは、アデルの指摘に肩を落として静かになった。カインの答案を見たニーナとティアは、瞬時に笑顔になって立ち上がった。


「カインも四十点なのじゃ。」

「ん、同志。」

「良く見て。カインは四十点になった所で、回答するのを止めているでしょ。」


 よく見ると、カインの答案は回答したところに丸がつき、それ以外は空白のままだった。少し驚いた様な視線をカインに向けるニーナとティア。


「彼は必要最小限しか働かない。平均点が八十でも十でも、貴方は五十点だけを取っていたわね。」

「はあ、次は模擬戦だ。防具はいつものレザーアーマーを装備して行くぞ。」


 アデルの言葉と視線を躱す様に、カインはニーナ達に告げると外へと向かった。

 直径二十メートル位の円の中央に、ロングソード型の木剣を持った男が立っていた。白いシャツとチノパン姿の男の肌は薄い緑色で、耳の上に黒く光る小さな角があった。


「見た目が気になるよな。俺は魔人族。剣士のキルデス。俺一人で相手をしてやるよ。」


 不安や期待、好奇心。様々な感情が出ては消えていたニーナ達の表情が変わった。ギルスとエレンの表情も硬い。本能がキルデスを強敵だと認識したのか。


「いいのか。」


 カインの一言でアデルが白い歯を見せた。そして、キルデスの後ろに立っている数名が、自然体で立っているカインに視線を向けた。


「勿論だ。少年少女の相手は俺だけでいいだろう。」

「本当に、いいのか。」


 軽く答えたキルデスと数名の男女が、カインの発した短い言葉に緊張を走らせた。次の瞬間、カインから見えない何かが放たれた様に、その場の空気が突然質量を持ったかの様に固まる。ギルスとエレンの吐く息は白く、ニーナとティアの歯が鳴っているのは気温のせいか。


「いいんだな。」


 それは問いではなかった。言葉と同時に、カインの身体が沈み、まるで発射寸前の弓矢の様に見えた。


「待てっ!やはり、全員で相手をする。お前等、対竜装備に換装だ。但し、武器は木剣か練習用杖だ。」

「お、おい。アリオン。」

「ああ、判っている。キルデスも鎧を装備しろ。」

「今のは、あれは。成人前の子ども殺気かよ。」

「ささ、さっさと鎧を装備じゃ。待たせると悪いでな。ほっほ、ドラゴン以上とは、恐れ入った。」

「ああ、俺達も敵認定されてたな。」


 キルデスの後ろに立っていた七人の男女が、アリオン率いるスターライト騎士団だったらしい。咄嗟に止めたアリオンの指示に、八人の男女が建物に消えて暫くして出て来た。

 薄い金色に輝く鎧を装備した三人と、漆黒の軽鎧の横に白銀の軽鎧と淡い青く輝く鎧の弓術師。純白のローブと青、黄のローブは一目でレアな一点物だと判る魔法師の三人。


「うにょにょ、凄い装備なのじゃ。はっ、妾も出番なのじゃ。」

空♂:少し長くなったのだ。

ア♀:さっさと卒業できないの?

空♂:せっかく、アリオンのスターライト騎士団に名前が付いたのに?

ア♀:そう言えば、名前は無かったわね。

空♂:ふっふっふ、こっちでも回収するのだ。

ア♀:貴方と言う人間は・・・。

空♂:まだまだ、続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ