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魔王、竜王に遭遇する 異世界八十六日目

予告なく修正することがあります。

 カインがニーナ達と出会ったのは、正規ルートでは裏ルートを辿った結果だった。そして、魔王城のある最深部の手前から更に、ニーナ達も知らない分岐を進んでいた。


「裏の裏が有ったのじゃ。」

「お嬢様、裏の裏は表です。」

「うにゅう、ここは正規ルートなのじゃ?」

「後で追加されたルートと言う事よ。」


 真剣な表情で考え込むニーナと冷静なミリアンに、少し呆れ気味のアデルが答えを与えた。その間、ギルスとエレン、ティアは一言も話さず、無言で前を行くカインを見詰めていた。


「カイン。ダンジョンが再起動されているの。」

「あの蜥蜴。操作が判らないなら報告しろと言ったのに。」


 カインとアデルの会話は、ニーナ達には理解出来なかったらしい。早足が駆け足になったカインとアデルを、ニーナ達は首を傾げながら追いかけた。

 一行は何の飾りも装飾も無いが、巨大な質量を持った扉の前に辿り着いた。開けば十トントラックが並んで通れそうな扉は、カインが無造作に押すとゆっくりと開いた。


「うにょっ!カインの怪力なのじゃ。」

「人間が押せば開く仕様だ。」


 音も無く開いた扉の奥は、大きな体育館の様に広かった。広い空間の中央に大人二人がやっと抱えられそうな球体があり、ドレス姿の人影がその周りを踊る様に回っていた。

 カイン達が近づくと、人影は見事な黒髪と透き通るような白い肌の女性だと判った。


 近付くカインに気付いたのか、一行を振り向いた女性。ギルスはともかくニーナ達ですら、感嘆の溜息を漏らす程の美しさ。光るような黒髪と同じ色の眉とまつ毛、透き通るような肌に天上の彫刻師が魂を込めて彫った顔立ち。美しいアデルやニーナ達とは別の美を、その人影は奇跡的に体現していた。


「綺麗なのじゃ。」

「美しいとしか表現できません。」

「ん、美。」

「美しい。ん、ギルス。しっかりしろ。」


 ニーナ達が心からの称賛を言葉にし、放心状態になったギルスにエレンが駆け寄った。そんな誰もが見惚れる女性に、カインは足音を立てて近づいた。そして、カインは硬く握った右の拳を、踊る女性に捩じり込む様に叩き込んだ。


「ええっ!」


 驚きの声を上げるニーナ達と、疲れた様な溜息を吐くアデル。空中で身体を回転させた美女は、地面を数メートル転がって立ち上がった。


「なんと酷い事をする・・・のじゃ?」

「その語尾にするのならば滅ぼす。」

「のだ?」

「それでいいでしょ。許してあげて。」


 絶世の美女の疑問が、カインの周りに黒い煙を発生させたかに見えた。慌てた様に言い直した美女を睨み付けながら剣を抜くカインを、アデルの鋭いが鈴の様な声が止めた。安堵した様に地面に座り込む美女を睨んでいたカインは、興味を失ったように背を向けて球体へと歩き出した。


「触っていたら起動させちゃって少し慌てたわ・・・のだ?」

「普通に喋った方がいいわよ。無理なキャラ付はストレスが溜まるのよ。」

「取り敢えず止めた。お前はダンジョンから出ろ。ここは作り変える。」

「作り変える?ダンジョンを。まさか、それはダンジョンコアっ!」


 世間話をするような美女とアデルを見ていたミリアンが、カインの放った一言に目を大きく見開いて呟いた。ギルスとエレンの顔にも、驚愕が貼り付いていた。


「ダンジョンコアの操作は神々ですら不可能と聞いています。」

「若い管理者は無理ね。古い連中には可能よ。そして、カインにもね。」


 アデルは驚いているミリアンの肩を叩いて、ニーナ達を伴ってダンジョンを出た。カインは一人ダンジョンに残り、球体に触れると小さな扉を開いた。

 ダンジョンから出たニーナ達は、地面が小さく揺れるのを感じた。遠くで巨大な何かが動くような地響きが聞こえ、はっきりと判る揺れがニーナ達を襲った。

 欠伸を噛み殺したアデルがダンジョンの入り口に目を向けると、疲れた様なカインを見つけて軽く肩を叩いた。


「お疲れ様。ところで、これは何かしら。」


 労いの言葉の次にアデルは、黒髪の美女を親指で示して問う。カインは溜息を吐いて、俯いていた顔を上げた。ニーナ達も興味津々なのか、半歩ほど身を乗り出してカインの言葉を待った。


「竜種だ。正確には、星の龍。神格も持っている。」

「ええっ!」

「アンジュちゃんで~す。めきょっ!」


 カインの言葉に驚くニーナ達と、能天気にブイサインを出したアンジュ。その瞬間にカインの裏拳を喰らって倒れるアンジュを見て、ニーナ達は二度目の驚きを叫んだ。


「説明を要求するわ。」

「ん、説明するる。」


 呆れた様に眉間に指を当てたアデルと、無表情に腰に手を当てたティアがカインに詰め寄った。驚きの表情を張り付けたままのニーナとギルスは、ミリアンとエレンが倒れないように支えていた。

 カインは面倒臭そうに、これまでの経緯を語り始めた。ニーナ達を救出した後、カインは裏ボスを探す為に単独でダンジョンに潜った。隠し通路を辿ってニーナ達のいた城の階層で、更なる隠し通路を見つけて進みアンジュに出会った。ダンジョンコアが置かれた部屋で寝ていたアンジュを、カインは文字通り叩き起こして事情を聴いた。千年近く前、機能を底止した魔王城を調査に来たアンジュは、問題が無い事を確認して眠りに就いた。眠りに就いたアンジュがまとう魔力を元に、周囲の環境が変革されダンジョンが形成されたと。


「神格を持った星の龍が放つ、龍気から作られたダンジョンだ。高難易度になるのは当然だ。」

「ダンジョン機能が停止して、初級ダンジョンだと勘違いされていたの?」

「多分な。千年近くの間、初心者ダンジョンだと思われていたのだろう。」

「それで起こしたら本来のダンジョンにしようとしたのかしら。」


 カインとアデルの会話に、アンジュは恥ずかしそうに俯いた。ニーナ達は口を開けたまま、微動だにせず聞いている。


「初心者のスタート地点にあるダンジョンではないわね。どうしたのかしら。」

「作り変えた。全三階層で、隠し通路無。最深部のダンジョンボスはホブゴブリン三体。黒金等級は無理だが、青銅等級なら攻略が可能だ。」

「貴方の基準では不安しかないわね。後で、ギルスとエレンで攻略してもらいましょ。」

「あの~、ところで、私はどうなるのでしょう・・・のだ?」


 ニーナ達が唖然としたまま動かずに聞いているカインとアデルの会話に、少し空気を読んだ様なアンジュが控えめに聞いた。

 神速で振り向いた無表情のアデルと、背中の柄に手を掛けカイン。一瞬で石化した様に硬直したアンジュは、意外な助っ人を得る。


「駄目なのじゃ。二人とも落ち着くのじゃ。アンジュ様に悪気は無かったのじゃ。」

「神格持ちはやらかす奴等が多い。ここで滅ぼしておく方がいい。」

「にょわぁぁ、止めるのじゃ。剣を抜いては駄目なのじゃ。」

「ん、滅ぼす。」

「話をややこしくしないの。」


 物騒な言葉と同時に背中の柄に手を掛けるカインを、大きく手降って慌てて止めるニーナ。もう一人、無表情にモーニングスターを構えるティアは、呆れた様な表情を浮かべるアデルの拳骨を頭に喰らった。軽く小突かれただけに見えたティアは、両手で頭を押さえて転がりながら呻き声を上げていた。

 そんなティアに手を合わしたニーナは、蹲って震えているアンジュの肩に優しく手を置いた。


「アンジュ様は星龍様なのじゃ。きっと、大事な仕事が有る筈なのじゃ。」

「はっ!そうです。私には魔力異常や人間では対処不可能なモンスターの処理という仕事があります。部下の天竜はどうしているでしょう。」

「エンシェント種なら東の国に確認したぞ。」

「そう言えば、国を作るとかなんとか・・・行かねばなりません・・・のだ?」


 龍の細長い身体と言っても間近に見れば、タンクローリーより太い身体が宙に舞う。上を見上げていたニーナ達は、龍の姿になったアンジュが豆の様に小さくなってカインを見た。ちょうど、振り下ろした刀を背に納めて、立ち上がった所だった。


「脅し程度だったとはいえ、貴方の刀で傷一つ付かないなんて。」

「本気でやり合えば無傷とはいかんな。」

「倒せないとは言わないのね。」


 アンジュが去った方向と逆の空が茜色に染まり、町に戻ったニーナ達はカインとアデルが泊まる離れに集まった。


「今日の晩御飯は何なのじゃ。カインのご飯はとっても美味しいのじゃ。」

空♂:暑くなって今日は35°。

ア♀:梅雨だけど夏の到来ね。

空♂:世界が私を抹殺し始めたのだ。

ア♀:毎年、夏になると言っている様な。

空♂:簡単に殺られる我ではないのだ。

ア♀:頑張って、まだまだ続けます。

空♂:ふうはっはっはっは。

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