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魔王、理不尽に遭遇する 異世界、魔王三十一日目

予告なく修正することがあります。

 夜、アデルと別れたカインは単身でダンジョンに来ていた。ダンジョンの前にある詰所には狩人組合の職員が数人、深夜にも関わらず長い槍を持って立っていた。


「おい、小僧。夜中に一人でダンジョンに入るのは危険だぞ。」

「そうだぞ、夜になるとモンスターの種類が変わる。昼に入った四人組がまだ戻っていないしな。」

「自己責任だろ。判っているよ。」


 声を掛けた職員に片手で合図を送りながら、カインは暗い夜よりも昏いダンジョンへと消えた。

 昼間、カイン達は三階層まで進み、ダンジョンボスのオークをギルスとエレンで討伐していた。再び、三階層に到達したカインは、昼間と変わらず横たわるオークを見つけた。


「やはり、死体が残っている。こいつ等はダンジョンのモンスターではないか、ダンジョンが機能していないかだな。」


 小さな体育館程のボス部屋を歩き回るカインは、二階層から降りて来た場所で足を止めた。上を見上げると人間が入るには充分すぎる穴が開いていた。それは良く目を凝らさないと視認することは難しそうな、周りの色に混ざり込んで存在していた。


「隠し通路は壁か床だが、天上は盲点だな。降りて来て上を見上げる奴は少ない。」


 カインはダンジョンの壁をまるで、ヤモリの様に上って穴の奥へと進んだ。穴は大人が立って歩ける高さはあったが、二人が並べる幅は無かった。恐らく、ボス部屋を越えた辺りから、通路は下へと下り密になっていた。カインの足取りに迷いはなく、まるで事前に知っているかのように進む。


「多分、十階層だな。崩れているが城の一部を見つけた。」

「帰ったら驚きの事実を教えてあげる。」

「並行世界に日本がある事よりもか。」

「そうね。それよりも面白い事かもね。パーティーチャットは便利ね。」

「絵文字まであるのか。自重を知らない管理者は、手におえないな。」


 カインの目の前には城の様な建物が有り、周囲に凶悪な見た目のモンスター達がいた。モンスター達はドーム球場程の広さに、一定の距離を取って動く気配が無かった。


「ん、別の気配。」

「どうしたのですか。ティア。」

「ん、侵入者。」

「しかし、外は凶悪なモンスターが居ます。まだ、モンスターが増えると言うのですか。」

「違う。人間?」

「何故、疑問形なのです。」


 城の一際高い塔の一室で外を見ていたティアが、この階層に降りて来たカインを見つけた。気配を消しているのか、モンスター達はカインに気付いた様子も無く動かない。何気なく外を眺めていたティアが、音も無く侵入してきたカインを見つけたのは偶然だと言えた。

 ティアが指差す方向に、望遠鏡を向けたミリアンは小さな声を上げた。


「人間です。しかし、全く気配を感じません。あの距離なら魔力を感知出来るはずです。」

「ん、偶然。見ていたらいた。」

「モンスター達も気付いていない様です。あっ、あれは死霊系でしょうか。気付きましたね。」

「ん、絶体絶命。」


 自身の背丈ほどの瓦礫に身を隠しているカインの頭上から、半透明のローブ姿の骸骨が静かに降りて来た。大きな鎌を持つその姿は、死神のイメージそのもの。ゆっくりと大きな鎌を振りかぶると、カイン目掛けて振り下ろした。ティアは目を見開き、ミリアンは目を閉じて小さな悲鳴を漏らした。


「ピキーィィィィィィィィィン!」


 金属音が鳴り響き、半透明のモンスターが二つになって消えた。想像していた未来が異なり、声も無く立ち竦む二人。


「むう、死霊系を斬った。」

「はっ、魔王様に知らせねば。」


 死神の様な魔物を斬ったカインは再び、瓦礫に身を隠してスマホの様なギルドカードを操った。辺りに鳴り響いた金属に気付いたモンスター達が、ゆっくりと首だけを巡らして音の主を探していた。


「あれはスペクターか。生体活動に反応したのか。死んでから来ればよかった。」

「死霊系を斬るなんて貴方ぐらいだと思うわ。」

「そんな事はないよ、武術には実体の無いものへの対処法を持っている流派も多い、そんな事より、城?に人間がいるな。気付かれた。」

「貴方に気付くなんて凄いわね。そこは魔王城だって。魔王かその関係者ね。」

「じゃあ、スルーでいいか。城の周囲にはエルダードラゴンクラスがうじゃうじゃいるし、中にはエンシェント種に匹敵しそうなやつまでいる。あれでは出て来れないだろう。」

「依頼よ。救出して。」

「はぁ、アイアイマム。」


 ギルドカードに向かって、大きな溜息を吐いたカインが立ち上がる。右手に身長程の優美な反りがついた、薄紫の妖しい光を放つ刀を持って姿を見せた。近くにいた三本の角を持つトリケラトプスの様なモンスターが、瞬時に加速して立っているカインに突進した。カインは大きく振り被った刀を無造作に振り下ろす。吹き飛ばされるカインを想像していた観察者が、驚きの声を上げると同時に、恐竜が縦に裂けた。


「うにゃ、竜種を斬ったのじゃ。」


 ミリアンに呼ばれて来たニーナが、土煙を上げて倒れる恐竜を見て叫んだ。窓に三人が頭を並べて、ゆっくりと歩き出したカインを見守った。

 三メートルはあろうかと思える巨体を持ったゴリラは、金属の鎧を着て大きなタワーシールドとカインより大きなハルバートを持ってカインへと向かった。同時に、獅子の頭と山羊の頭を持つ双頭のモンスターが、大蛇の尻尾を振りながら何事かと近づく。塔の近くにいた長い首を持った城と同じ大きさを持つ恐竜が、カインを無機質な何の感情も無い目で眺めている。


「フル装備のウォリアビースト。ゴリラ種は厄介だし、キメラの変異種みたいなのもいる。ヘカトンケイルもフル装備って何の冗談だ。」

「救出できる。」

「面倒だ。」

「(笑)無理とは言わないのね。お願いね。」


 カインに向かって象程の巨体を持つ狼の様なモンスターが走り出す。同じく走り出したカインが振るう刃が、複数の狼を二つにして真紅の眼が塔にいる三人を見た。後ろから近づいていた巨大な蟷螂を、振り返らずに切り捨てたカインはゴリラを睨んだ。


「凄いのじゃ。ヘルハウンドを瞬殺したのじゃ。」

「昆虫系を見ないで斬りました。気配察知でしょうか。」

「むう、強い。」


 超人的な戦闘能力を見せるカインを見て、ニーナ達は驚きの声を上げていた。尚も、迫るモンスターを一刀の元に切り捨てるカイン。そんなカインを見ていたニーナが、最高の一手を見つけた棋士の様な顔で頷いた。


「はっ、あの者に助けてもらうのじゃ。」

「駄目です。もし、あの者が勇者なら、魔王様が討伐されてしまいます。」

「ん、確実。」

「にゅお、そうなのじゃ。勇者ならば妾が危ないのじゃ。」


 ゴリラ戦士を盾と鎧ごと二つにしたカインが、キメラに風の様に近づくと二つ首が宙へと舞った。巨人の振るった剣の上を駆け抜けたカインの刃が、分厚いヘルムに覆われた首を切断して見せた。目玉のモンスターも巨大蠍や巨大蜘蛛も、一陣の風の様に疾走するカインの速度を落とす事すら出来ない。

 塔の側にいた首長竜の無機質な目に、感情の色が灯ってカインを見た。城の壁の僅かな突起を足場に、壁を疾走するカインの口元が笑みの形を作る。口の端に見えるは純白の牙か。


「俺はお前の餌じゃない。」


 壁を蹴って空中に飛び出したカインは、大きく振り被った刀を神速で振り下ろす。大きな音を立てて着したカインの足元に、無数の亀裂が走り小さなクレーターを作った。別の場所で巨大な頭が落ちで、大きなクレーターを作る。

 その一部始終を見ていたニーナ達は、声を出す事も息をする事すら忘れた様に動かない。三人は目を見開いたまま、無数の死骸を眺めているだけだった。


「凄いのじゃ。」



ア♀:やっと、合流するのね。

空♂:長かった。

ア♀:途中で方針を変えるから。

空♂:うにゅ、そのせいで前半が大幅修正になったのだ。

ア♀:ほぼ、書き直し。

空♂:うにゃ、まだまだ、続きます。

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