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ダンジョンに入る四人 異世界三十日目

予告なく修正することがあります。

 カインが大人の狩人を殺しかけた事を知らないのか、四人の男達は厭らしい眼をアデルとエレンに向けていた。


「そこそこやる様だが、あの女達を手に入れてやる。」

「楽しんだ後は貴族様に売るか。良い金になりそうだ。」

「やるのはダンジョンに入った時だ。あそこはギルドの眼も届かない。」

「奴隷の首輪はもう少しで手に入る。」


 何とも危ない会話がされていることに、ダンジョンについて話すカイン達は知る由も無かった。

 養成所の授業や訓練が不要と判断したカインとアデルは、ギルスとエレンを伴って近隣の森へ採取に通った。時折、カインが高ランクのモンスターを狩って、ギルド職員からかなぎり声で注意を受けた。各種薬草採取クエストはカイン達がトップの達成率になっていた。


「そろそろダンジョンに潜ろうか。近くのダンジョンは三階層で、ボスはホブゴブリンらしい。」

「ギルスとエレンの訓練に丁度いいわね。」


 何時もの様に薬草を採取しながら、森の奥へとカイン達は入って行った。岩壁に開いた大きな穴の前で、カインは穴を見上げるギルスに振り向いた。


「ダンジョンだ。」

「ダンジョンね。」

「こんな所に有ったのか。」

「大きな洞窟みたいね。」


 岩壁に開いた穴は10トントラックが並んで入れそうだ。奥は闇色に塗りつぶされ、どれほど続いているのか外からでは判らない。近くのダンジョンに到着した四人は、カインを先頭に中へと入った。四人がダンジョンに入って暫くして、別の四人組がカイン達の後を追った。


「ギルドカードには行動をトレースする機能も付いているの。」

「このカード凄いよな。まるで、スマホだよ。ランクやジョブ、ステータスにフレンド登録。パーティーチャットに討伐記録や賞罰まで見られる。」

「まるでゲームみたいね。」


 アデルの言葉にギルスが言うと、エレンも感心した様に呟いた。カインは空を見上げて、小さな溜息を吐いた。事実、ギルドカードはスマホの様に表面を触る事で、様々な情報を見る事が出来た。身分証明にもなるため、名前や性別、種族、職業と所属パーティー、ギルドでのランクが表示され、ギルドからの連絡事項も表示される。そして、お互いのギルドカードを突き合わせると、フレンド登録が可能で相互に通信も出来た。文明レベルに似つかわしくない、ハイテクと言うよりオーバーテクノロジーのアイテムであった。


「町や街道で罪を犯せば、カードに罪が記録されるのは知っているわね。」

「だから、最上級の身分証明になるのだろう。」

「そうよ。少し抜け穴があるの。町や街道で武器を用いての殺人は罪になるけど、素手で殺した場合と、相手が殺人者や野盗などの場合は罪にならないの。」

「そして、現在地がダンジョンになると、何をしても記録されない。」


 アデルの説明に続いたカインの言葉に、ギルスとエレンは何かに気づいた様に顔を上げた。そして、カードを触ると、真剣な目で見詰め始めた。


「ファインナル東の森と表示されていても、森の奥へ行くとダンジョンと表示される。当然、ダンジョンに入ると、同じように表示が変わる。」

「罪の記録がされないと言う事は・・・。」

「何をしても許されると言う事。」

「それって・・・。」

「法は一つだけだ。即ち、弱肉強食。」


 アデルの言葉にギルスとエレンは真剣な表情になり、カインの言葉に驚いた様にお互いを見詰めた。そして、カインは着いて来る者がいる事を二人に告げた。首を廻らして辺りを見渡すギルスとエレンを促して、カイン達はダンジョンの奥へと進んだ。


「罠が発動した状態になっている。これなら罠に掛かる心配はないね。」

「そうね。でも、カイン。これって何か変じゃない。」

「始まりの町にあるダンジョンには似つかわしくないな。」

「どういう事だ。」


 通路の至る所に罠が発動した状態で、隠されることなく設置されていた。設置されている罠は隠されていれば、カインにも見つける事は困難だと説明した。二階層に到着すると、アデルが感心した様な溜息を洩らした。


「この階層全体に広がっているのは、微弱ダメージを与える床よ。魔力が通れば継続ダメージが入るわ。こんなの初級ダンジョンに有り得ないわ。」

「その辺りの事は後で調べるとして、金魚のフンを片付けるかな。」


 カインは小部屋へと入ると、入り口近くに陣取った。アデルはギルスとエレンを小部屋の奥へと促して、入り口を静かに見詰めた。ほどなくして、四人の男が足音を立てて入って来て、アデル達を厭らしい目で睨み付けた。


「へっへっへ、行き止まり。運が悪かったね。」

「もう一人は何処へ行った。まあいい。女達を置いて行け。」


 ギルスとエレンは四人の男の後ろに立つカインを見て、驚いた表情を浮かべてアデルを見た。アデルは微笑を浮かべて、そっと人差し指を唇に当てた。


「貴方達は覚悟が出来るまで、対人戦闘はしないでね。私とカインで相手をするから。」

「それって人を殺す覚悟ってこと。」

「それもだけど、殺される覚悟が必要と言う事。カイン、殺さないで。」

「善処する。」


 カインの声は四人組の背後から聞こえ、振り返った男達は木刀を持ったカインを見た。四人の男もゆっくりと剣を抜いて、獰猛な笑みを浮かべて声を上げた。


「ダンジョンの中はギルドカードの監視から外れる。この中は・・・。」

「弱肉強食。」


 男の言葉を続けたカインの木刀が、近くにいた男の膝を砕いた。アデル達を睨んでいる男達は、仲間が既に倒されたと気付いていない。カインが目にも止まらない横薙ぎを放つと、腕が嫌な音をたてて有り得ない方向へ曲がる。一人目が崩れ落ちたところでアデルに近づいていた男が振り向き、腕を折られた男の膝を踏み抜くカインを見た。状況に思考が追い着いていないのか、振り向いた男の眼が徐々に見開かれた。ギルスとエレンも目の前の状況に思考が追い着いていないのか、口を開けたまま呆けた表情を浮かべていた。


「な、何をした。」

「弱肉強食。お前達が挑んだ結果だ。」


 男が剣向けた瞬間、カインが神速の踏込を見せた。防具の無い太腿に木刀が叩き付けられ、骨の折れる嫌な音がギルス達の耳に届く。最後の一人の背後に回ったカインは、情容赦なく腰に前蹴りを食らわした。骨の砕ける音と同時に、男は壁に激突して倒れた。


「僕も村で人が殺されたのを見た事がある。」

「私も見た事があります。でも、転生前は見た事が無かったよ。もしかして、殺したのですか。」

「殺してはいない、アデルの希望でな。殺す方が簡単なのにな。」


 ギルスとエレンが転生したのは、亜人種のコミュニティだった。この世界では目立って種族差別はないが、種族間の差別が無いわけでは無かった。亜人種の中で高い魔力を持つエルフ族、強力な武器や防具を造り出すドワーフ族、強靭な肉体と高い身体能力を持つ獣人族、桁外れの肉体と力を持つ巨人族は自治区を作り、それぞれが小国家の様相を呈していた。各地には小国に所属しない種族が存在し、小さなコミュニティを作っていた。そんな小さなコミュニティは、野盗の格好の的になっていた。襲って来た野盗を殺し、殺される事はそれほど珍しい事では無かった。


「二人は転移者だろ。人を殺した事があるのか。」

「平和な世界で殺人はニュースの中。そんな日常もあるけど、人間が簡単に死ぬ環境もあるでしょ。例えば、戦争なんかが良い例ね。彼は私を守護する為に、何度も実戦訓練を重ねたの。」

「今回は彼女の要望を叶えた。次は判っているな。」


 アデルとカインの言葉に、ギルスとエレンは口を開けたまま動かなくなった。カインはアデルの守護者だと言った。そして、カインは守護者となるため、あらゆる状況を想定して練習をしていた。最初は一対一に始まり、一対多数になり、数人から数十人、数万、百万以上の人間を相手に、カインは戦い勝利を収めと語った。


「百万って。」

「カインにとっては作業の一つなの。」

「蚊を叩き潰す。人間を斬る。同じ作業だ。手加減は難易度が跳ね上がる。」

「作業?手加減って、それは違うと思うのですが。」


 さらりと言うアデルとカインに、困惑した様な表情を浮かべるエレンが呟いた。カインとアデルは同じだと、綺麗にハモッて断言した。

 その後、三階層に到達したカインは、帰還すると機械的に告げた。まだ余裕のあったギルスとエレンは、釈然としない表情を浮かべ帰路に就いた。宿に帰ったカイン達は、ダンジョンで手に入れた魔石やアイテムをギルドで換金し、四人で均等に分けてから解散となった。


「回収しなかったわね。」

「回復ポーションがあるだろう。骨折していても、その気になれば腕は動く。死体も無かったろ。」

「頑張って脱出したか、モンスターの胃袋の中か。」


 呆れた様に言うアデルの言葉に、カインは無言で肩を竦めた。アデルにお茶を注いだカインは、一人でダンジョンへ向かうと告げた。


「うにゅう、出られないのは問題なのじゃ。」

ア♀:今回は誰も死んでないのね。

空♂:今回はソフトに行くのだ。

ア♀:倒された四人組は脱出したのかしら。

空♂:ダンジョンでというより、危険なジャングルでも動けない人間は獣の餌にしかならんのだ。

ア♀:ソフト路線は何処に行ったのよ。

空♂:うにゃ、まだまだ、続きます。

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