22 Cティタラス地下遺跡 その五
反射された弾丸の弾幕を回避すると間髪入れずに纏った氷のドレスのような強化服から冷気を放ち空気を凍らせながらヒサメが滑ってくる。
近づかれてはまずいと感じたが、早すぎるので逃げられないと悟り奴の蹴りとの間にE=N320のアンダーバレルアタッチメントである擲弾発射器用の爆発する丸い弾を挟み銃に闘気を纏い身を守り、爆風で吹き飛ぶ事で奴の凍り付く領域から逃げる。
「くっ小癪な真似をするの」
どうやら爆発で出来た煙も凍って少し奴を足止め出来たようだ。
しかし飛び退いたのとヒサメの足の部分は冷気による外装が薄かったお陰で吹き飛ばされて奴の空気を凍らせる領域には長居せずに済んだが、少し居ただけで防御したほうの手に持ってたE=N320は氷結してしまった……ただ氷結が体まで伸びる事は無さそうなのでこのまま長い銃身に闘気を纏って剣のように使う事にしよう。
飛んできた氷柱を二本回避し最後の一本をGELで打ち抜きそのままヒサメに……は当たらずにやはり周りで反射を繰り返している。
此方に放つ際の速度を上げる為にすぐに反射してこちらに返すことは無いようなので、今のうちに弾丸を装填して……闘気じゃなくて神滅闘気でなら奴のあの反射を搔い潜って弾を当てられるだろうか?
まぁでも神滅闘気を使うのは結構集中力がいるのでこの高速戦闘の合間に練るのは少し厳しい、何か手は無いか……
「返してあげるの」
反射を繰り返して加速して返された銃弾は今までよりかなり早く、少し考え事をしていたのもあって避けきれずに氷の弾丸が頬を掠め傷口が凍り付く。
一応纏った闘気のお陰でそこまで大したダメージではないが……正直かなりまずい。そろそろ体の魔力が無くなる……この前神滅闘気を使った時から少し思っていたがもしかしたら角に溜まっている竜気をそのまま体に流して魔力の代わりに出来るような気もするが魔力と回し合わせた神滅闘気でさえ少し銃に流すだけで頭痛と腕の痺れが凄まじいのだから竜気を直に体に流したらどうなるか想像もつかない。
新調した拳銃のGELもかなりの威力ではあるが奴の凍り付く領域の外から弾を撃っても反射されてしまうし速度は無理して同じ位なので背後から狙うのは少し難しい……何か打開策は無いものか……
「これで終わりなの……「神なる氷翼の舞」!!!」
全身の領域が薄くなりチャンスかと思ったがその代わりに背中の六本の氷剣と纏った氷のドレスがほんのりと青白く光り急加速して接近してきたヒサメが背中の氷剣を掴みそのまま二本同時に斜め十字切りを放ち、避け、外したや否やそのままクロスしたを腕戻すように振り払い氷剣を投げそのまま後ろの氷剣を掴み投げ、回転してる事により不規則な軌道を描きながら、しかしちゃんと私を狙って放たれたそれを三本は無事に回避したが一本避けきれず……しかし強化服の性能と闘気に物を言わせた強引な姿勢制御で最後の一本を蹴り砕いた。
「中々楽しめたの。じゃあね尖兵」
その間にまた急接近したヒサメが手を振るいながら背中に残った二本の氷剣を右から同時にぶっ叩かれて壁まで吹き飛ばされた。
「っかハ……!」
凄まじい切れ味で闘気を限界まで使い強化したおかげで何とか体がバラバラにならずに済んだが防御に使った氷漬けのE=N320は砕け魔力を使い果たして闘気を纏わずに吹き飛ばされて中々のダメージを受けてしまった。
「……まだ倒れないの?しぶといの」
昔からよく絶体絶命の時に全く関係ない事が頭の中に流れる……ふと思ったが、ここには魔力のような強大な力を秘めた水晶があるはずなのに角による生体探知が一切阻害されてる感じがしない。
つまりここの魔力は神の力の残滓ではなく別の物か……神気そのものの可能性がある……神気が籠った水晶は昔見た事がある。もしかしたら別の神の神気が籠ってるせいでいまいちわからなかったがこの場所の至る所に生えてる水晶はあの時見た水晶と同じようなもやもやがうっすらと水晶の中でうねっているのが見える。
一か八か、試すしかないか……?
恐らく今の技は相応に反動もあったのだろう、ヒサメの背中の氷剣は再度生成されているが先程より小さくなっており強化服の足の部分からはオーバーヒートしているのか湯気が上がっており走れないようでゆっくり近づいてくるのが見える。
「まだ何かする気なの?どうやらその強化服出力を大分強化改造してるみたいだけど、所詮安物なの。出力を上げてる分バッテリーの消費も早くなるの。もう僅かじゃないの?大人しくしてれば苦しみも無く終わらせてあげるの。私達は貴様等竜族ほど残虐じゃないの……って何してるの!?」
水晶に覆われた壁にめり込むほど吹き飛ばされたおかげで周りには砕けた水晶が幾つも転がっている。
昔龍族の地を追い出された後か前か神気が籠った水晶を見た時は確か……砕けた破片が口にたまたま入って体の調子がとっても良くなったと思ったら少し時間が経って体中が痛くなって暫く立てなかった。
あの頃は良く分からなかったけど、この角に溜まった竜気を扱うようになった今ならわかる。
私は竜族ではなく聖なる龍に連なる一族……そしてこの角は他の神の力を吸収し竜気に変換する力がありあの時少し口に入った水晶の神気は無意識のうちに竜気に変換されて元気になったりしたのかもしれない。
聖龍を作った神は神の力を聖龍に吸収させていたのだろうか、竜族に関する遺跡は幾つか巡ったが神気を吸収するような力は無かったはずなのよね……もしくは竜族では無く他の神を倒す為に龍は作られたのか……どちらにせよ今の私にはそんな事は知った事では無い。
その辺に落ちている神気が籠った水晶を口に入れ飲み込むとどんどん神気が溢れ体が破裂しそうになるがその前に魔力を扱うように体と角を巡回させ竜気へと変換する。
昔から魔力の扱いはかなり自信があったが角の竜気を扱うようになってからこういうのを扱うのが比べ物にならないほど上手くなった気がするわね。
体外魔力を使い魔法にしたり闘気にする為の自分の生命力である体内魔力は無くなれば気を失うと言われるが、本当は半分ほど使うとで体が危険と判断し結果気を失うのだ。
しかし私は長旅の過程で気を失わずに無くなる限界ギリギリまで魔力を使う術を身に着けたので今残っているのは本当に極僅かで、体の方に竜気を移しても全然反発せず全身に染み渡っていく。
……竜気は角の中に留めておく分に一切問題なかったけど、体に流すと凄まじい力の奔流を感じるし魔力とは反発してうまく使えないからそれを緩和する為に回して神滅闘気にしていたのかもしれない。
今は体に魔力が無いお陰で反発せず角で変換された竜気が体を巡り溢れた竜気が雷のように体から漏れる。
その力は凄まじく……所詮魔力は神の力の残滓なわけで当然ながら純粋な神力やそれに対抗していた竜気にはかなり劣る物だったと今理解した。
「今の私なら勇者にだって負けないわ!」
神滅闘気のように包まれた闘気から少しだけピリッとするような雷ではなく全身から放電しているかのように荒れ狂う竜気で強化された足で床を蹴りそのままヒサメに蹴りを見舞う。
突然の超加速で私の意識すら置き去りにした稲妻のような轟音と共にに放たれた蹴りはしかし強化服による強力な補正機能によりヒサメの腹を撃ち抜いた。
どうやら強化服にも竜気が入り謎に強化されているのかも。みらいのぎじゅつす……いやこれはどっちだ????
「ぐか……くっ!まさか異常ナノマシン!?竜族は尖兵すら捨て駒なの!!」
どうやらこの状態なら奴の空気すら凍り付く領域の中でも何とかなるみたいね、今蹴った時全然凍らなかったもの。少しヒンヤリしたけど。
「くっ「結氷扇」!!!」
ヒサメがまるで扇のように脚に固められた氷剣で回りながらの蹴りを放った。すると空気を凍てつかせる突風が吹き荒れそれを追うようにヒサメが接近してくる。
全身に竜気を纏った私は奴へ思いっきり蹴りを放つ、本来なら届かないであろう距離だが溢れんばかりの竜気を脚に込めて蹴る事で衝撃が生まれ奴の生み出した突風を跳ね返し氷剣を砕き、奴を壁まで弾き飛ばした。
奥の大きな水晶で出来た壁を砕きガラガラと音を立てて水晶が崩れていく。
そして崩れた水晶が突然グラリ揺れると段々水晶が赤黒く変化していった。
「ああ……我らが神なの!!」
もしかしてあいつの血で目覚めてしまった感じ?
部屋全体が大きく揺れヒサメがめり込んだ水晶がバキとかメキとかミシとか……何か凄い音を出して割れ、段々どす黒くなっていく水晶が突然弾け光の粒子となりヒサメの背後から大きな黒い肉塊で出来た手が現れた。
手が現れた位置が位置だったので、ヒサメは弾き飛ばされ反対側の入り口付近まで吹き飛ばされ、中から現れたのは先程上で戦った巨木の親玉的な感じだろうか……複数生えてる黒い脚からは巨木同様幾つもの口があき……上の方には枝分かれした捩れた角のような物が付いたにやけたような五つの口が並ぶ足が多く生えた鹿のような化物がそこには居た。
「これまた随分愛嬌の無い神が現れたわね……」
竜気を体に纏った今の状態はさっきまでと比べものにならない力だがその分体への負担が凄まじく少しでも気を抜いたら四肢が弾けて首が飛びそうになるのでさっさと片付けて休みたい!!!!
一鳴き、いや口が五つあるし五泣き?した鹿がそのまま体を……丸めて転がってきた!?
「いやそれはちょっと流石に予想外ーーーーー!!!」




