21 Cティタラス地下遺跡 その四
やっと地面が見え始め、闘気を纏い壁を蹴って勢いを少し横にずらし回転するように着地した。
上を見ると恐らく8層ほど落ちたようで、大きな穴で私達が落ちた所が良く見えるが段々肉塊によって塞がっている気がする。
どうやら一緒に落ちたヒサメも無事に着地しているようだ、私が言えた事ではないがこの高さを落ちてよく無事だったなコイツ……
「……向こうの方に上に行く階段がある。着いてくる」
恐らく手に持ってる機械で周辺の地形を把握したのだろうか、そう言ってヒサメが歩き始めたので後を着いていく事にした。
────暫く歩き、辿り着いた所はやけに肉塊に覆われているが所々奇麗な水晶が生えた広いスペースだった。
しかし上に行くための階段が見当たらない。
「……ねぇ、階段はどこなの?ここは一体どこ?」
「フフ、ここは我らが神の聖域なの。同胞よ……ついに私達はここまで帰ってきたの!!……どうしたの?アナタも喜ばないの?」
そう言ってヒサメは強化服の上に羽織っていたデカいフードが付いたジャケットを脱いだ。
あの頭にあるのはまさか……
「アンタ妖精族だったの!?」
頭から生えた先端が少し丸まったような二本の触覚に背中の虫のように少し透けた小さな羽……何だか少し氷のようにも見えるけどこの特徴は確か妖精族よね?
まさかこの未来の魔力が無い世界で妖精族に出会うなんて……でも妖精族って大体手のひらサイズじゃなかったっけ?こんなに体大きくなかったような?
「お前は我ら妖精族の昔の同胞、魔角族でしょう?どうやらここは元々我等妖精族が住んでいた地下都市みたいなの、お前達の故郷ではないけれどついに我々はここまで帰ってこれたの!!」
「いや私はこんな角だけど一応聖なる龍に連なる一族なんですけど」
魔角族は確か……魔法の制御に長けた種族で魔王も確か魔角族だったハズ。
聖なる龍に連なる一族に生えてる角は頭の後方に真っ直ぐ伸びる白い角なハズなのに私の角は黒くて前に曲がっているせいで似た黒い角が生えた魔角族とよく勘違いされた。
「……何?竜?キサマまさか竜族の尖兵!?くそっ騙したの!まさか貴様ら、封印した神々すらも滅ぼすつもりなの!だがそうはさせないの!ここを知られたからにはキサマは生きて返さないの!」
「いや竜族の尖兵って何?全く身に覚えが無いんで帰ってもよろしいでしょうか……」
そもそも竜族は滅んだはずでは?
「ええい今更隠そうとしたって遅いの!仮にも神に仕える者なのにこの期に及んで嘘をつくとは許せないの!貴様を殺しここに眠る我が神の供物にしてやるの!」
……どうやらこいつも勇者同様人の話をあまり聞かないタイプのようだ、仕方ない、向かってくるのであれば容赦はしない。
ヒサメが銃を構え……詠唱だと!?まさか魔法!?
「ふふ、驚いたの?竜族の尖兵、ここには我等が神の神気が溢れているの。だから貴様等と違い私は思う存分魔術が使えるというわけなの!」
ヒサメが構えた銃の先から謎の模様が描かれた円が浮かび、大きな氷の弾丸が連射された。
銃を構えられた瞬間一気に横に走り弾を回避しながらこちらもGELを構え闘気を纏った銃弾を一発お見舞いするが、弾が見えているのか回避されてしまった。
銃弾の残りは……さっきの巨木の異形との戦いで結構撃ったからあんまり無いな……
仕方ない、元より私は魔法や銃を撃ちあう遠距離線より武器や体を使った接近戦の方が得意だし闘気も使えない人型相手なら簡単に無力化できるはず。
地面の水晶を砕く闘気を纏った脚力で一気に肉薄し、ヒサメの腹に蹴りを入れようとしたが、ヒサメもその蹴りを見切り足を上げて払いのけ、そのままいつの間にか抜いていた拳銃を構えていた。
拳銃から氷の弾丸が青い軌道を描いて発射されるが咄嗟に回避しこちらもE=N320をお見舞いする。
この至近距離でこの弾幕、流石に避けれないだろうと思ったが、ヒサメが羽を震わせたかと思うと強力な悪寒を感じ背後に飛び退く。
「ふうん?よくこれの力が分かったの。あのままだったら今頃アンタはこの銃弾と同じように氷漬けだったの」
私の判断は正しかったようでヒサメの周りの銃弾が凍ってその場に留まっていた。
あの羽、妖精族だから本人から生えてるのかと思ったけどどうやらよく見ると羽の大部分は氷で出来ているようで根本に小さな羽が見える。
恐らく特殊な魔道具の類だろうか……迷宮産の強力な魔道具で似たような物を見た気がする。
ていうかよく考えたらこの世界には強化服があるから明らかに強力そうな強化服を着てるこのヒサメとかいう女と近接戦闘はちょっと分が悪いか?闘気を込めた蹴りをすんなり見切られて受け流されたしどうしたものか……やっぱり転生前と違って少し体が幼いせいであの足の強化服の装甲をぶち抜く位強い闘気が一瞬位しか纏えないのが厳しい。
「隙だらけなの!」
色々考えてたらヒサメがまた銃から氷の弾丸を連射してきた。
この氷の弾丸は少し魔力を感じるので恐らく魔法によって生成された
この場にはどうやら魔力が充満しているようなのだが相手は使えるのに私は魔法を使えない、この場の魔力は転生する前の魔力と性質が少し違うせいでうまく扱えない。
「尖兵だけあって中々やるじゃないの。私も少し本気を出そうかしら……ついてこいの!!」
ヒサメの強化服の脚部が少し光を放ち、急加速したヒサメの蹴りを寸前の所で防御する。
くっ思ったより蹴りが重い……この前のムキムキ狼の最初の不意打ちより少し強めか?だがあの時より頑丈な強化服を着ているのと少し多めに纏った闘気のおかげで大したダメージでは無さそうだ。しかし手に持っていたE=N320は落としてしまった。
防御した瞬間、蹴った奴の脚から衝撃と熱風が発生しそのまま回転をして反対側から更に加速した蹴りを放たれたが、危機一髪回避して踵が鼻先を掠めたが蹴りを受け止めて熱風を直に食らった右手
「ふん、躱したの。運のいい奴……精々その幸運が続く事を祈るの!」
そう言って赤と青の混じった軌道を描き宙を舞うヒサメが高速で周りを飛び跳ねながら時々近づいて蹴りを入れたり銃を撃ってくる。
ちなみに髪飾りによる力場障壁はいつの間にかバッテリーが切れていたようで今は機能していない。
まぁ頭の後ろ側しか守ってくれないし衝撃を音と光に変換するせいでビカビカうるさかったしバッテリーが切れてよかったかも……
「あははは!どう?これがイスタック社の強化服を改造した、その名もM式改造SL型強化服改め「宙蜥蜴墜」!!脚部の|姿勢制御補助用噴射装置の出力を大幅に上げ強力な噴出力によって人体改造者顔負けの超加速を生む!少々熱が強すぎるのが難点だが今の私であれば即座に冷却する事が可能なの!!」
放たれる氷の銃弾を弾いて防ごうとすると一瞬で弾いた部位が凍り付く為回避をするしかないが合間合間に突っ込んできて蹴りを入れてくるのが少し面倒なくらいだが、しかしどれだけ高速で動いても敵は一人、此方へ撃つ銃は一つしかないので銃弾が来る方向はある程度分かるので暫く避けて相手が疲れた所に一発決めてやれば良いだけだ。
この程度の超加速勇者の稲妻のような身のこなしに比べれば大したことは無い。
ただこちらの銃弾も相手に当たらないし相手が近づいてくるタイミングで反撃しようとしても中々上手く決まらない、こうなりゃ持久戦に持ち込んで疲れた所をやるしかないわ。
私は持久力にはかなり自信があるから余裕で耐えきって見せる!と思った次の瞬間、上から撃たれた氷の銃弾が地面に当たりそこから氷柱が現れた。
咄嗟に回避したものの、避けきれずに右肩を氷柱が掠める。
「危なっ!でも強化服着ててよかったわ……」
強化服が結構頑丈なお陰で上の防護ジャケットは貫かれたが体は無傷だ。
やはり強化服を買っておいて正解だったわね……買ってなかったら今ので負けてた可能性もあるわ。
「中々良い強化服着てるの!よく見たらそれもイスタック製じゃないの!ただ見た感じ一切改良してない一番安めの奴なの!!そんなんじゃ私の動きにはついてこれないの!!!」
どんどん加速していくヒサメの前に、ただ弾を躱す事しか出来ずにいる。
しかしさっきから一瞬だけほんの少し遅くなるタイミング、軌道が一瞬青紫になる瞬間を私は見逃さなかった。
「!?こ、こいつまさかこの短時間でオーバーヒート寸前の冷却時間を暴いたというの!?」
GELで狙うにはタイミングが難しいので何とか回収したE=N320で着地の瞬間を適当に、しかし的確に狙う。
闘気を纏って放たれた銃弾はGELには威力が大きく劣るがそれでも人を撃ち抜く程度ならば問題ないはずだったが、突然急激に寒くなり気が付くと奴に打ち込んだ銃弾が飛び回って……いやこの音はまさか、何かに当たって奴の周りで銃弾が反射している……!?
「これを使わせるとは少々お前を甘く見ていたの……これはとっておきの私の魔術「氷葬帰郷」……ここから先は一瞬で終わらせるの」
背中の羽が先ほどまでの妖精族の羽の見た目では無く六本の剣のようにも見える氷柱へと変化し冷気を纏って更に大きな半透明の強化服を着たような状態になっていた。
そしてヒサメがこちらに手をかざすと周りを跳ねる弾が一斉にコチラに跳んできた。




