19 Cティタラス地下遺跡 その二
黒ずんだ枯れ木のような肉塊の感染獣から放たれた触手を余裕をもって躱しながら本体に向かってGELを打ち込んだ。
今回初めて打つので闘気を込めずに試し打ちのつもりだったが、黒枯れ木に当たった銃弾は狙いが少し逸れて端の方ではあったが肉塊を抉り抜けた。
反動もそこそこデカいが、少量の闘気を纏った状態のDSLより反動が少ない割に同じくらいの威力だった。
ちなみに今の所購入した銃のGELとE=N320のうちGELの方が使用頻度が高いのは単純にGELの方が小型で狙いやすく一発の威力が高いからだ。
「お、銃変えたのか?GELじゃねえか。俺もたまに使ってるぜそれ」
そう言いながらコウジロが銃を撃つ、コウジロは見た感じ追い剝ぎ連中が使ってたDARのようだが少し見た目が違う大きい銃と大きいバレルが付いた短くマガジンがでかい私が買ったE=N320と同じシャーラム製の銃を両手に一本ずつ持っている。
隊の中で一番ランクも高く、エレクトロワーム戦でも車から投げ出された時の立ち直りが早かった気がするし地面が崩壊した時に受け身を取れてたり電磁砲の使用法を知っていたりと、いい動きをしていただけあってやはりコウジロは他の隊の二人と比べても別格の強さだった。
私と違い大型の銃で弾幕に物を言わせて向かってくる触手を薙ぎ払いながら余裕そうな表情で話しかけてきた。
「他の二人はちと心配だが、お前は大丈夫そうだな。最初は見慣れない感染獣で驚いたがただ触手を適当に伸ばしてくるだけだし大して本数もないからこのまま適当に薙ぎ払ってるだけで片付けられそうだが」
そう思っていたら、肉壁の方からも少し太い触手が伸びて襲ってきた。
本数は大分増えたが壁から伸びる触手は太いからか本体の触手よりは早くないので気を付けていれば当たらなさそう。
思ったより大した脅威ではないと感じてさくっと片付けて突破しようと思い、闘気を纏わせたGELの一撃で黒枯れ木を吹き飛ばした。
しかし壁から出てくる触手は一向に止まない所か段々本数が増えている気もする。
「もしかして奴の核はあの肉塊から肉壁に移ったのか?だとしたら少し面倒なことになったな……」
コウジロが言うにはC型汚染地域の感染獣は肉塊同士で争う事も多く、争いの中で強力になった個体は争いで負けた方の肉塊を吸収し大きい体を持ち心臓部分である核を移動させ小型の肉塊になって逃げたりする事もあるとか。
つまり今の黒枯れ木は肉壁に侵食しその中に核を移動させここの部屋丸ごと乗っ取ったという事だ。
とするとこの肉壁のどこかに奴の核があるわけで……探すのが滅茶苦茶面倒だなこれは。
唯一の救いは床は肉塊で覆われてないという事か。
流石に左右の触手と合わせて地面からも伸びてきていたらかなりの苦戦を強いられていただろう。
闘気を纏わせたGELを試しに壁に打ち込んだが、僅かに削れるものの大したダメージでは無さそうだ。
「……仕方ない、少し値が張るがとっておきを使うか。全員伏せろ!爆風に気を付けろよ」
コウジロはそう言って両手の銃を腰にかけ代わりに別の大きな銃を背中から取り出した。
とっておきと呼んだそれは円形の大きなマガジンが付いたバレルの大きな銃で、打ち出された弾は大きく普通の銃の弾に比べると非常に遅く放物線を少し描き壁に当たる。
その瞬間大きな爆発を起こし肉壁を大きく剥がした。
「どんどん打つぞ!」
続けざまにばら撒かれたその爆発弾によって肉壁がどんどん消えてゆく。
部屋の半分以上の肉壁を消し飛ばした頃、触手の動きが無くなった。
恐らく爆発によって核が消し飛んだのだろう。
「よし、倒したか?……しかし中々に手痛い出費だなこりゃ、とっておきのゾラーワンの銃を使う羽目になるし飛び散った破片に当たっちまったから治癒薬も使わなきゃならない……はぁ。この先に良い遺物がなきゃ大損だな」
憂鬱そうな顔でコウジロが治癒薬を取り出し飲んだ。
他の二人も無事そうだがキリベエの方は大分しんどそうだった。
「よし、全員大丈夫そうだし先に進もう」
階段へ向かおうとしたその瞬間、再び上から先ほどより少し小さめな肉塊が落ちて来てまたしても階段の前に張り付いた。
しかし今回は一体だけではなく複数の肉塊がどんどん落ちて来て、部屋を黒ずんだ枯れ木のような肉塊共で埋め尽くした。
「冗談だろ!?どんだけいるんだ!!」
「……いや違うわね、こいつらは本体じゃない!多分あの管が本体!」
そう言って上から肉塊が落ちてくる管目掛けてGELで撃ち抜く。
当たる直前に管から伸びた触手が弾を弾き管と思っていた肉塊がズボッと天井を抜けて落ちてくる。
落ちてきた管だと思っていた肉塊は落ちてくる最中に回転し、蹄が付いた四本の脚で着地しこちらの方へ巨大な赤黒い樹木のような肉塊が先の方から徐々に左右に裂けたと思ったらそこからは幾つもの牙が見え無数の小枝のような触手を出した。
更に裂けたのはその一部分だけではなく肉塊の至る所に小さな口のような裂け目がありそのあまりにも悍ましい見た目に一同は驚愕を受けた。
「な、なんだこの悍ましい感染獣は……こんなの見た事も聞いた事もねえ!!」
「ヒ……ハはヒあハハアはハああハハハハハ!!」
突然エレクトロワームの時にいた重症三人組の一人キリベエが周りに銃を乱射し始めた。
どうやらこの悍ましい怪物を見て気をやってしまったようだ。
「な!?おいキリベエ!落ち着け!」
コウジロが呼びかけても一切聞こえていないようでそのまま狂気に飲まれたキリベエは周りの小さな枯れ木達に押しつぶされ……笑い声は聞こえなくなった。
辺りに小さな枯れ木達が大量に出てきたせいで分断されてフードで顔が見えない女の開拓者は分からないが、どうやらコウジロは少々驚いたものの取り乱してはいなかった。
……今目の前に見える巨大な木が裂けたような異形の怪物は似たような物を見た覚えがある。
たしか大昔人族に仇なすとされ滅ぼされた邪神の力の残滓を取り込んで生き物が進化した魔物の一つ、いや魔族の一種……魔木族だ。
いやしかし古城の民の魔木族は普通の木のような見た目だった、少なくともこんな風に幹が裂けたり牙があったり枝は……いや枝は伸ばせたな。
まさかこの遥か未来では魔族が進化しているのか!?いやでも此奴等は感染獣って言われてるらしいし違うか……じゃあ一体何なんだ。
考えても答えが出そうにないので、とりあえず目の前の感染獣、巨木の異形を倒す事に専念しよう。




