12 眠い帰り道、激闘の後……何も起きないはずもなく……? ※挿絵有り
───北の機械獣共は非常に大きいので体を小さくして内部から破壊するネジの外れた者もいるとは噂で聞いたことがあったが、実物は初めて見た。
コウジロが最初見た時はただのガキかと思ったが車上から遠くの魔物を一発で、特殊弾を使った事もあるが一応それなりに出来る少女かと思い、遺跡の突然変異した機械獣を倒してその腕を持ち帰ってる姿を見て完全に認識を改めた。
体のサイズを変えた全身義体か、もしくは幼い頃にナノマシン適用による身体拡張を全身に施したと思われる少女……だが冷静な立ち振る舞いから間違いなく本当は少女ではないであろうこの金色の長い髪と頭に特徴的な二本の黒い突起が生えており高性能な義眼や体にナノマシンが多く入っている者等によく見る色の紅の瞳を持ったマオウとかいう奴は、恐らく北か東部の奥の方からたまたまこっちに来たであろう高位の凄腕開拓者のハズだ。
恐らくどっちかから来て、どっちかに向かう途中なのだろうと憶測した。
こういう全身義体にするような奴は大体頭のねじが外れてて気が付いたら謎の逆鱗に触れてしまい殺される。なんて事も良くあるが大体飯を奢ってやれば許してくれるので行きの輸送車でちょっと絡んだ事はもう許されてると思いたい。
「思ったより大食いでサイフを空にされちまったが……まぁ凄腕開拓者との接点が出来たと考えれば安いもんかぁ?」
恐らく今回の遺跡の騒動の大元であろう突然変異した機械獣から腕をもぎ取って持ち帰り、すやすやと眠っているのに右手でしっかりと抱えられてるそこそこ大きな強化ダンボールの箱に詰められてると思われるあの大きな腕は、どうやら触れると爆発する能力を持った機械獣だったようで、相当性能のいい義体なのか、体にはあまり傷が見えないが爆発によってボロボロになってるジャケットや防護服からは相応の激闘であったことが容易に推測できる。
恐らく防護服の中に仕舞っていると思われるDSLからして銃は最低限の遠距離手段で、性能の良い義体による格闘で戦うタイプの開拓者なのだろう。
北部では今の技術では解明できていない未知の現象により普通の銃は大幅に飛距離が減衰するらしく、コイツのように強化された体で肉弾戦や剣や槍といった近接武器が主流だったはず。
「行きの時は呑気に外を眺めてたから他の奴が厄介な絡みをして殺される前にと思ってつい変な絡み方しちまったが、流石に大半の連中があの腕を持って帰ったのを見てるはずだし寝てるこいつをわざわざ起こすような奴はいないだろう……」
それにしても、何だか行きより出てくる機械獣が異様に少ない気がするな……そりゃ都市に近づくにつれ少なくなるもんだが、前衛拠点から出てちょっとしたくらいのここら辺なら結構機械獣が襲いに来るはずなんだが……
「何だか嫌な予感がするな……こういう時の予感はよく当たるんだよな」
杞憂で済めばいいんだがな……と思っていたら、段々車の揺れが大きく……いや、これは車が揺れてるんじゃない!!
そう思った時には俺たちはすでに、大きな衝撃と共に頑丈な輸送車もろとも宙に打ち上げられていた……
───なんで私は目が覚めたらこんな空中に投げ出されているのだろう……もしかして居眠りしてたから追い出された?
どうやらそういう訳ではないらしい、慌てて周りを見ると輸送車に乗ってたはずの他の開拓者達も宙に投げ出され大地は遥か後ろにあるし輸送車はひしゃげて空を駆けている。
この状況を作った原因は恐らくあれだ……砂漠で見かけるようなワームのような機械獣がいた。
たまに砂漠で見かけるサンドワームと呼ばれる魔物がいたが、あれよりずいぶんとデカい……未来の機械獣はどいつもこいつも大きいのか?
まぁそれは置いておいて私の睡眠を妨げた報いをこいつに受けてもらおうか……魔力は十分回復したし少し眠ってたからそこそこ疲れも取れてる。
無事に着地を決め早速銃を出して構え、銃弾を一発見舞う。
寝起きの一発だが、よ~く狙って頭の下の方の機械部分が薄そうな場所へ放たれた銃弾がワームに当たる瞬間、物凄い光を発し威力の無くなった銃弾が地面へポトリと落ちた。
「はぁ?何それ!?」
周りの突然放り出されて呆けている開拓者達が意識を取り戻し慌てふためいたり腰を抜かしている者がいる中、近くに倒れている一人、コウジロが声を上げた。
「いっつつ……一体何が起こった!?ってこいつはまさか……エレクトロワームか!?緊急依頼要請は……チッやっぱり端末機器がいかれてやがるか……まぁ結構前衛拠点から近いしそのうちギルド職員とかが気付いて応援が来るか?……って、あの状態はまずい!おい嬢ちゃん!今すぐそこから離れろ!」
後ろの声を上げた男、コウジロがそう言ってその場から大きく後ろに下がっていく。
エレクトロワームと呼ばれてるらしい機械獣の全身から幾つか立ち始めた棘からピリピリと音を立て、何か青白い光が迸る。
これは……勇者が使ってきた技に似てる。あれは範囲も広く聖剣に纏った状態で打ち合ったら手が痺れて中々面倒だった気がする。
咄嗟に後ろに大きく跳躍し、範囲から脱出したが他の取り残されていた開拓者が大きな放電に飲まれ黒焦げになった。
……まさか魔法を、それも電の魔法を使うなんて信じられないわね。
いやでも魔力も神気も感じられなかった、まさかこの世界の連中はどいつもこいつも魔法や神に頼らずに雷魔法を使ったり爆裂魔法を使うの……?どっちみち信じがたいわ……
「……北部のほうではいないか、もしくは会ってないのかは知らないが、一応説明しておくとこいつはエレクトロワームって呼ばれてる機械獣で、もうちょっと東部の奥の方にいるはずなんだが……見ての通り強力な電気を使って今のように放電したり電磁波による電磁障壁で疑似的な力場障壁のような使い方をする。あれを貫くには対力場障壁弾と呼ばれる特殊な弾が必要なんだが……くそっ!今日はあいにくそこまで奥に行く気は無いから持ってきてねぇ……!嬢ちゃんは持ってたりするか?」
驚愕の表情でエレクトロワームを見ている私に、コウジロが丁寧に説明してくれた。
もちろんそんなあんちふおーすひーるどだんなどというものはもっていない。
「そんなの持ってないわよ、でも奴に効くかもしれない一撃はあるかもしれないわね」
「ほ、本当か?詳細は効かないが、それなら俺達はこいつの注意を逸らしておくか。いくら電磁障壁で弾が効かなくとも流石に弾をいっぱい浴びたら多少は弱くなるはずだし、そしたら一発かましてやってくれ!」
まぁ効くかはわからないが、闘気を纏えばただの枝でも岩を切ったり出来たりしたわけだしこいつのその、ほおすふぃいるど?とやらも闘気を込めた銃弾なら貫けるはずだ。
効かなかったら素直に謝って頑張って逃げよう。




