10 不穏な遺跡 後編
まるで拳闘士のような大きなガントレットを装着しているような上半身が異常に発達した二足歩行のムキムキ虎は、地面が割れる程の力で踏み込みこちらに突っ込んでくる。
すれすれで避けたガントレットが服を掠め、その瞬間ガントレットが光を放ち嫌な予感がして咄嗟に全身の闘気を全開にして防御した。
至近距離での爆発を食らい、闘気を纏っていたが腕の防護服が爆発によって弾けた。
「コイツ爆発する籠手を着けてるなんて中々面倒ね……」
しかも爆発に耐性があるのか虎には全く傷がついてないし……爪も大分長いし接近戦はかなり不利、かといって遠くから銃を撃ってもボス鹿同様弾かれて終わりだろうしどうしたものか……
考えている間にムキムキ虎が素早く近づき手を振り回してくる。
殴った際や手の振り戻しの際に瓦礫や壁にムキムキ虎が手をぶつけるたびに爆発が起こり非常に鬱陶しい。
隙を縫って銃で撃ってはみたものの、結構な火力のハズなのにすぐに再生されてしまう。
チマチマ撃ってもすぐに再生されるし、勿論蹴りは大して効いてないか……仕方ない、闘気を纏わせて一気に蹴りを付けよう。
爆風を利用して素早く後ろへ回り込み頭に狙いをつけ闘気を纏わせた銃弾を放った
しかし放たれた銃弾はムキムキ虎が避けようとしたのでうまく当たらず、ムキムキ虎の右腕を掠めただけだが想像以上に威力が大きく右腕を大幅に削った。
半分以上肉が削られた状態の右腕を抑えながらムキムキ虎がこちらを睨み、怒りによってなのか、全身の血管が浮き出て上半身がさらに膨れ体の赤みが増す。
「感情に振り回されちゃってまぁ……所詮獣ってとこね」
先ほどよりも素早くなったが怒りによって単調になった大振りの攻撃をかなり余裕をもって回避し、先ほどより闘気を込めた拳銃で今度は右肩を撃ち抜く。
大きく振りかぶったのに合わせて撃ったのも相まって虎の右腕が千切れ飛んだ。とんだ腕が壁に当たり爆発を起こし虎が吠え更に怒る。
がむしゃらに左腕を振るうが怒りに任せた読みやすい攻撃なので楽々回避しながら狙いを定め、頭に拳銃を構える。
「これで終わりだ!」
とどめだ!と撃ち抜こうとしたが突然ムキムキ虎の千切れた右腕から大爆発が起きた。
咄嗟に離れて何とか無事だったが、土煙をすぐに虎が払うと、さっき千切れ飛んだはずの右腕が生えており、体中がの血管がボコボコと動いていた。
なんつう再生力してやがるコイツ……しかも完全に再生出来てなくて所々皮が再生されてなくて控えめに言ってグロい……
先ほどまでの二足歩行ではなく前足を地面につけた四足歩行スタイルに変わった虎がこちらに駆けてくる。
足跡代わりに歩いたところを爆ぜながら段々と加速していくが難なく躱した。
しかし突進が終わることは無くどんどん突進の速度が上がっていき二回、三回と避けるがどんどん加速する突進、四回目は避けきれないと悟り目一杯闘気を込めた蹴りで止めた。
しかし超スピードで突進してくるムキムキ虎を蹴った瞬間、爆風に包まれた。
「……ケホ、衝撃で爆発するなんてどういう体してんのよコイツ」
それなりの闘気を纏っている為、少々吹き飛ばされても爆風でむせる程度で済んでいるが正直結構機械鹿との連戦でそろそろ残りの魔力が危うい気がする。
どうやらムキムキ虎はまたしても突進をしてくるようで、既にこちらに向かってきている。
二度も同じ手を食らうほどマオウは愚かではないので一回、二回と突進を回避し、それなりの速度で曲がってこちらに真っ直ぐに突進してくる瞬間に咄嗟に闘気を纏わせた拳銃を構え放った。
「三回目のこの突進、速度が大分上がって曲がり切れず遠くから真っ直ぐ向かってくるこのタイミングを待ってたのよ!」
真っ直ぐ正面から突っ込んできたにもかかわらずムキムキ虎はその銃弾に反応して身を逸らしたが、流石に途轍もないスピードを出しており回避する事は出来ず顔の側面を削りながら左肩を銃弾が撃ち抜いきそのまま転がりながら遺跡の瓦礫に突っ込んでいった。
先ほどの突進の接触と比べ物にならない爆発が起き、咄嗟に後ろに下がり大きな瓦礫の裏に身を隠した。
「……流石に倒したよね?そんなわけないか」
まぁ、弾を避けようとして肩に当たったのは見えてたし勿論倒せているわけは無いと思うが。
土煙が晴れると強化された銃弾により左肩を貫かれ息の上がったムキムキ虎が、倒れてはいないもののかなり苦しそうな表情をしている。
右腕を生やした時のように肩の傷を再生とかは出来ないのか、右腕を生やす際に再生能力をほとんど使ったか分からないが、これ以上奴は傷の再生が出来ないと思いたい。
度重なる爆発によってただでさえ開けていた場所が更地になった遺跡の一画で、互いに動向を伺っている。
相手は完全に再生しきれず少々痩せて所々皮が無いボロボロの右腕と再生力が無くなったのか肩を銃弾で貫かれうまく動かなさそうな左腕しか残っていない。
こちらも多少は爆発に晒されはしたが、闘気によって軽減されているので一番最初の奇襲時に思いっきり殴られた腕のダメージの方が深刻だし鹿の群れとの連戦で魔力がそろそろ尽きようとしている。
……恐らく次の攻撃が互いに最後の攻撃になるだろう。
やはり獣だからなのか、堪え切れず鹿の時と同様先に動いたのは向こうだった。
両手で地面を叩きながら爆風で加速しながら右腕を裏拳のように振り上げてきたが、ギリギリの所で躱し即座に左手に持った拳銃を奴の脳天に突きつけようとしたが、この振り上げは奴の誘いで、躱した所に奴が大きく口を開けて顔を近づけてくる。
今までずっと手を使った攻撃ばかりしてきていたので失念していたが、よく考えたらこんな肉食獣の頭を持った奴が噛みつきをしてくるのは当たり前だった……しかしこの大口を開けた状態のこいつは逆に考えれば弱点を内側から狙い打てる絶好のチャンスでもある!噛まれるよりも先に打つ……!
まるで時が流れるのが遅くなったかのように感じる高速で流れる思考の中で見つけた唯一の活路を切り開くべく、残りの魔力の量も気にせず闘気で無理矢理体を動かし体勢を立て直し、嚙みつかれるよりも先に大きく開かれた口の中へ素早く拳銃を持った左手を入れ、上顎、脳天、頭部目掛けて全力で闘気を捻じ込んだ拳銃で発砲する。
大きな反動と共に今までで一番の爆発が起きる。
拳銃に闘気をほとんど捻じ込んだせいで体に纏う闘気を最低限にしてしまった為、流石に爆発によるダメージを食らいながら吹き飛ぶ。
「───う、うぅ……左手が痛い……銃に闘気を込めすぎちゃったな。腕折れてないわよね?ん~……まぁ大丈夫そうね。それよりあいつはどうなったかしら……流石にあの威力だったし倒したと思いたいけどあの回復力だし、もしかしたらって思っちゃうわね」
爆発による煙が消え、ムキムキ虎の姿が見えた。
虎は既に顔の上半分がほとんど吹き飛び事切れており、地面に倒れていた。
倒れた虎の体から流れ出た血がボコボコと小規模な爆発を起こしている。
もしかしなくてもコイツ、血が爆発してたのか。
魔力も無いのにこんなとんでも生物が生み出されてるなんて、みらいのぎじゅつすげー……
「しかしまぁ……めっちゃ疲れた……体中痛いし拳銃の反動で肩痛めたのかな、もう左腕上がんないや」
これから遺物を集めに行くのは少々、いやと~~~~っても面倒なので今日の所はこいつらの使えそうな部分でも拾って帰る事にする。
転生する前の冒険者達も強い魔物とかから剝ぎ取って素材を換金したりしていたし、この世界でも機械獣とかから剝ぎ取って換金できると信じよう。
ボス鹿の大きな角……を持って帰るのは少し面倒なので、虎はもう触っても爆発しないみたいだから、比較的奇麗に残ってる左腕をちぎり持ち帰ることにする。
……まぁ遺物じゃないけど、一応こいつら機械獣もこの遺跡に棲んでて血が爆発するとかいう謎の力持ってんだし実質遺物みたいなもんでしょ!多分!知らんけど!
色々やってて投稿するの忘れてました




