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1 魔王、遥か遠くの未来に転生する

「ついにあの極悪非道な魔王を倒した!」


 長い旅路の果て……魔王城へとたどり着いた勇者一行は激闘の果てについに魔王を倒したのであった。

 完!






「いや、それ完全に勘違いだから……」


 息も絶え絶えに反論したが小さく掠れた声は勇者には届かなかった。

 一体どうしてこうなった?私は()()()とは呼ばれてるけど人里離れたこの場所で数百年のんびり暮らしていただけ。


 大体その極悪非道な魔王ってのはすぐそこの山を越えた先にある魔族領の奴の事だよ!

 後普通に正面からこいや!!なんで裏の山からこっそり入ってくるのよ!!!


 なんか昔から色々と勘違いされやすいのよね、大分前にカッコよくてつい装備したら呪われて外せなくなった鎧をずっと着てたからよく男と勘違いされるし、本当は聖なる龍に連なる一族なのに何故か黒い角が生えてるせいで龍族の地から追放されるし、黒い角のせいで邪神達(ぶっちゃけ私から見たら人族が崇めてる神も邪神と似たようなもんだが)を崇める魔族と勘違いされるし、そのせいで最近はコボルトとかゴブリンとかトレントとか魔族の中で弱いって除け者にされてる奴等に頼られてその辺に住んでるし。

 もしかしてそのせいで、となりの魔族領にいる極悪非道な魔王と勘違いされたの?


 折角世界中を見て回ってようやく見つけた良い感じの古城だったのにな……修繕も大分済んでたのにまた壊れちゃったわ。

 ていうか人族の崇める女神の加護強すぎなんですけど、聖なる龍の力で治そうと思ったけどもう多分これ体治せないわね。

 自慢の角も片方折られるし女神の加護の力で全身ズタボロ……もはや呪いねコレ。


 ていうか城下の皆は大丈夫かしら?多分この勇者達ヒッソリ忍び込んだから今の所この城の崩壊位しか被害が無いけどもしかしたらこの後城下の皆も勇者に倒されちゃうのかな。

 城下の民は弱いけど、平和に仲良く暮らしてただけに少し心残りになっちゃうわね。


 ……そういえば昔どっかで見た竜の秘術とかいうの試してみようかしら、確か己を再構築して遠く未来に飛ばす転生の秘術とかなんとか……なんか体にある魔力とか全部使うらしいし失敗したら死ぬとか書いてあったから試した事無かったけど、もうこのままだと体の再生も出来ないし勇者にトドメさされるだろうし……だったらちょっと気になるし竜の秘術、試しに使ってみよう。確かこんな感じか?


「勇者、まだあの魔王何かする気みたい、早くとどめを!」


 勇者の隣の神官らしき女が私が何かしていることに気づいたみたいだけど、これなら十分間に合いそう。意外と秘術っていう割には簡単に出来そう!やはり私は天才。


「悪あがきはさせない!食らえ魔王!」


 危機を察知して右手で思ったより速く振られた勇者の聖剣を受け止めたと思った瞬間、練っていた秘術の力が大幅に膨れ上がる!もしかして聖剣の力で練ってた秘術がおかしくなっ――――











「――――――――たはっ!?」


 水滴の落ちる音で目が覚めた、眩しい光で気を失ったからか周りが少し仄暗ほのぐらいからか、いつもと感覚が違いよろけながら壁伝いに立ち上がる。


 ここは一体どこかしら?段々目も慣れてきたがなにやらいつもより視点が低いような。


「なにこのおてて」


 しかも自分の手なはずなのに何だか小さい気がする。

 もしかして転生の秘術で幼くなっちゃった?しかも鎧も全部消えてて私のいかつい鎧の下に隠されたナイスボディがちんちくりんぼでぃになったうえに野ざらしに……いや、少し小さくなったがまだ山は少しある!いやそういう事じゃない!

 流石に裸のままは恥ずかしいのですぐそばにあった鎧についていたマントのようなボロボロになった布を羽織る事にする、流石にマントは呪われて無かったわね。


 ……どうやらここはどこかの路地裏みたいね、とりあえず向こうの光の方に行ってみようかな、もしかしたらどこかに転移しただけって可能性……も…………って!


「なんだここーーーー!?」


 路地裏を出ると崩壊した横にも縦にも巨大な建物がいくつもあり、よく見るとその建物は所々割れてはいるが透明度の高いガラスが幾つも嵌められており少なくともここに来る前に見た人の町や国と大きくかけ離れた風景が広がっている。


「ど、どうなってるの……?」


 人里離れた場所で数百年のんびり暮らしていたとはいえ時々人の町等に遊びに行くことはあった、たまに少し大きくなってたりはしたけどここまで巨大な建物が立ち並び、しかもボロボロになってるなんて一度もなかった、一体何千……いや、下手したら何億年も経ってるのかもしれない。


 どうやら私はとんでもなく遠い未来に来てしまったようだ……






 ────少し探索して分かった事がある、まず魔力。

 どうやらこの世界には魔力、正確には神の力の残滓(きせきのしぼりかす)で、様々な神の力の残滓が混ざって様々な力を抱擁したモノを体外魔力と呼ぶ、それは置いておいて。

 この世界には体外魔力が無い、厳密には薄っすらと感じる……かもしれない程度にしか無い。


 かつて世界にいた神々ははるか大昔に元々世界の頂点に君臨していた竜族との世界全土を巻き込む大戦でほとんどが竜族共々消え、残った神々もこの世界に存在する事が出来ないほどに弱った……とどこかの遺跡にかいてあった気がする。


「弱った神々は時が経っても回復する事は無く、全滅した……って所かしらね」


 空気中に魔力が無いので魔法は使えないけど、体内での魔力運用によって闘気として纏うならば問題無さそう。

 魔法が使えないので水を出したり火を出したりという便利な事は出来ないが、闘気による肉体強化等が使えるのはせめてもの救いだ。


 そしてこの辺はどうやら全く生物の気配が無い、生物どころか見渡す限りの巨大な建物とほとんど砂や瓦礫で埋まって役割をはたしていない道のようなものしかないから、よく考えたらこんな所に生物がいるはずもないか。



「このままここにいても何も無いし、とりあえず辺りを探索してみましょうかしら」


 長旅の果てに見つけたあの古城のようにのんびり平和に暮らせる場所はこの世界にあるのだろうか。






「────ん?なんか向こうの方から音がするわね」


 少し歩いていたら遠くの方で爆発音が聞こえた、もしかしたら誰かが戦っているのかもしれない。

 もしかしたら話が通じないような獣同士の争いなのかもしれないけど、それでも気になるので音のなる方へ向かう事にした。

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