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とにかくおおきい大銀河  作者: あらお
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 とにかくおおきい大銀河の世界は仮想の宇宙だと思っていた。だが、輸送船から得たデータから調べてみると、何となくこの銀河は地球がある銀河と一緒なのでは無いかと思えてきた。


 私にはそこまで宇宙に関する知識があるわけではないが、輸送艦がこの世界のインターネットのようなものに繋がっていたため、そこから多数の情報を仕入れることが出来たのだ。


 こちらのインターネット上では”地球”という名称では呼ばれていなかったが、生存可能な居住惑星で、先住民が降り、技術的にはまだ宇宙に辛うじて進出している程度との記載。そして太陽系と同じ並びの惑星。私の居る宙域からだと銀河の正反対の場所に位置している。移動しようと思ったら、ワープとかない限り不可能だと思える距離だ。


 ただ、この世界にはワープ航法もあるし、ワープよりもさらに遠くに移動するジャンプゲートなるものがあるらしい。私たちのいる宙域から地球まで、ジャンプゲートを使うと、数カ月でたどり着ける程度の距離だと言う。


 


 私は自分が知りたいことを知った後は、インターネットの使用権をポンちゃんたちに任せた。正直、このインターネットにつながったことで、シャビードローンは劇的な進化を遂げるだろうと予想できた。


 今まではとにかく情報がなく、シャビードローン達は自らを発展させていくことが出来なかったのだ。それが湯水のように情報が溢れているインターネットに接続したことで、ブレイクスルーが行われた。弱小種族だった彼らは、そもそも船を拿捕するような事も出来ない程弱かったことと、インターネットという存在自体を知らなかったこと。そして知ったとしてもその使い方が分からないからだろう。元々、何をしていたのかというと、採掘して溶かして船を大きくする以外には自衛しかしていないということなので、そもそも何のために存在していた種族なのかも不明だ。




 どちらにせよ、シャビードローンは劇的な進化を遂げることは間違いない。


 ポンちゃんが送り出したアンテナドローンが多くのシャビードローンを呼び寄せて、そいつらがみんな私に合流したことで、出来る事は増えた。




『あるじ様。このセックスというのはどういう意味でしょうか』


『あるじ様。ぬるぽというのはどういう意味でしょうか』


『あるじ様。ワープ航法に置けるアラインと速度との関係について』


『あるじ様。ゲロビとはゲロゲロビームの略で』


『あるじ様。きのことたけのこではどっちがおいし』


『あるじ様……』


………


……





 その代わりにうるささも倍増した。ポンちゃんが増えたからだ。


 なんで? なんで? どうして? どうして? 


 そんなことを聞いてくる無数の子供を相手にしているようで、正直疲れてくる。


 彼らが増えた事で、まず工場が劇的に拡大した。


 シャビードローンの特性として、その体内に一機、かならず炉を持っている。この炉がシャビードローンの心臓とも言えて、こいつはどんなものも溶かすことが出来る不思議な炉であった。マジカル炉と私は呼んでいる。


 このマジカル炉は鉱石を溶かして、作りたい金属を願うと、投入した鉱石によっては叶えてくれる。例えば鉄をぶち込んで、金が欲しいと願ってもダメだが、色々なものをごっちゃに入れ込んで、めっちゃ固くて軽い合金、などとお願いするとそれっぽい金属を生産してくれる。マジカル炉すごい。


 このマジカル炉が10機ほどになった事と、インターネットから様々な兵器の情報を得られた事で、シャビードローンの戦力は倍どころか、数百倍くらい跳ね上がった。


 そもそも、岩石を溶かす事しか出来なかった種族が、製造工場の工場見学動画を見る事によって、その工場を真似して作り始めたのだから驚きだ。今まで岩石の塊を相手にぶつける攻撃手段しか無かった原始人が、いきなりレーザー兵器を手に入れたくらいの勢いで進化を始めている。まだまだ製造される兵器は不良品ばかりだが、徐々に改善されていくだろう。


 さらに、戦力として多数のドローンが作れるようになった。


 情報収集ドローンや妨害用のドローンは今後の戦いに大いに役立つだろう。


 そして、最も戦力の拡大に寄与したのは、インターネット上に設計図が無料公開されていたロマン兵器の一つだ。


 どこかの有志が自作したらしいこのレーザー兵器は、あまりにも電力を喰い過ぎる為に役立たずの烙印を押されていた。


 ただ、電力のほとんどを炉と推進機くらいにしか使っていないシャビードローンの船は電力に関しては有り余っている。電力の大食いというのは欠点に成らなかった。


 そのため、私の船にはこの電力馬鹿喰いのロマン兵器が多数設置されることになった。今も船の工場でせっせと増産がされている。




 さて。では10隻のシャビードローンが合流した事で、私の船の現在の姿を何となく説明してみよう。正直、言葉で上手く説明できる気がしない。




 まず、全体像を一言で言うなら、クソでかいキノコだ。


 正面には丸みを帯びた30層からなる装甲がある。これがキノコの傘の部分。では芯の部分はというと、10隻のシャビードローンが束ねられたような形でくっ付いている。その全体を包むように、現在外殻がせっせと建造中だ。


 この外殻は可動式になっており、外殻が動いて中から太陽光パネルがにょきにょきと生えてくるような形になる。太陽光パネルがすべて展開すると、キノコの頭側に装甲の傘。お尻側に太陽光パネルの傘が出来上がる様な形だ。


 レーザー兵器は装甲の傘の一番縁に等間隔に設置されている。ここで使用される電力はお尻の傘の太陽光パネルで発電される。


 この船の戦い方は、常に恒星を自分の背中に向け、お尻で発電し、頭でレーザーを撃つ、というものだ。


 この戦い方が出来ない場合でも、太陽光パネルを正面の装甲傘よりも広く展開すればいいだけだ。もちろん、その場合、太陽光パネルに被弾することもあるが、被弾した端からせっせと直せるだけの修理ドローンは用意できている。


 


 この船は拠点防衛用であるため、こいつで輸送艦を拿捕しにいくことはまずないだろう。そういうコンセプトで作っていない。そもそも、あまりにも巨大になり過ぎて、いくら比較的軽いとは言え動きが鈍重すぎる。また、内部に生産工場を多数設けたことに寄り、あまり激しく動かすと生産ラインに影響が出てしまう。そのため、この母船は小惑星帯などの採掘ポイントに常駐し、辺りの小惑星を軒並み喰らいつくす事が仕事になる。


 ならば、情報収集用や戦闘用の船はどうするかというと、それ用の大型ドローンを作った。


 人が居住することを全く考えなくて良い為、兎に角頑丈で、足が速い、ラムアタック専用ドローンを多数用意した。


 こいつらには武装は全くなく、見つけた得物に体当たりして壊すことが主目的だ。もちろん、相手の機動力が高かったり、小さい目標に関しては全く意味を成さない為、輸送艦や大型採掘艦などを壊して乗っ取るためのドローンになる。


 もし、護衛の艦載機などが居た場合は、攻撃ドローンの改良型を多数用意しているので、そちらで対応する予定だ。また、妨害用ドローンも同時展開出来る為、戦略の幅は大きく広がる。


 


『となると、ドローンの母船が必要になるんだけど、これもドローンで作っちゃえばいいよね。ベースの輸送船はあるし』


『TP50輸送艦をベースにドローン母艦の建造ですね』


『それと、推進力全振りの曳航用の船も欲しいな。あとはどこかで採掘艦を拿捕して、そいつの分析をして、採掘ドローンの性能アップもしていきたい』


『同族を呼び寄せるために、アンテナドローンも増産しましょう』


『……これ以上やかましくなるのはちょっと』


『我々はここにシャビードローン王国を作り上げるのです!』


『ポンちゃん、インターネットで変な映画見たでしょ?』




 今や百機以上に増えた採掘ドローンが、巨大な岩石に取り付き、無数のオレンジのレーザーで鉱石を採掘していく。その隣に駐機した巨大なキノコ型の母船は、体内に取り込んだ鉱石を瞬く間に赤熱したドロドロの液体へと溶かしていく。それから型枠に流し込まれて形を成した部品は、組み立て工場に運ばれて船やドローンの形に整えられて行く。




『ネックは中身というか、精密部品だなぁ。まだ粗が多い』


『半導体関係を製造する為の部品を作る化学工場も作る必要がありますね』


『ポンちゃんの仲間が集まってこれば、そのあたりも追々出来ていくでしょ』


『もっと情報が欲しいですね。インターネットではなく、生の情報が欲しいです』




 シャビードローン達は自分達が今まで虐げられていた、という感覚は持っていない。だが、初めて自分たちの力で輸送艦を拿捕し、大きな船を作り上げられる様になったということは喜んでいるようだった。


 


『それなら偵察ドローンを放って、まずは採掘艦を襲いに行こうか。輸送艦も並行して見つけに行こう』


『偵察ドローンを展開します』




 こちらも百機近い数になった偵察ドローンが宇宙のあちこちに飛び立っていった。ドローンとはいえ、シャビードローンの子どものようなもので、半分自立して動いている。通信限界というものはあるが、常にこちらで制御しているわけではない。通信圏外で得物を見つけたら、通信圏内まで戻ってきて報告をしてくれる。




『そのうち、中継用の通信ドローンも必要だな』


『今から作りましょう。ポン9にやらせます』




 集まってきたシャビードローン達には、一番最初にいたポンちゃんの後からはポン2からポン10というように名前の後に番号を振ってある。名前という物に興味を示さなかったので、名づけは適当だ。


 こうしてしばらくは採掘業と製造業に勤しみ、船の整備に時間をかけていたが、数日後、ようやく偵察ドローンから知らせが入った。


 採掘艦隊がいるらしく、大型の採掘母艦もいるとのことだ。また良質な鉱石が多数あるという報告もあった。


 


『複数相手に勝てるか? まだ複数相手は難しいかもしれないぞ』


『良質な採掘場所であるならば、母船で向かえばよろしいのではないですか? そこを新たな拠点にしてしまいましょう』


『防衛艦隊は……まぁ、ある程度出来てるし、場所的に恒星の近くで、発電量も賄えそうだな……いくか』




 例え負けても、それはそれで現実世界に戻れる可能性がある。


 まだ日本の自宅に戻れる希望を捨てきれずにいる私は、いけそうなら行く、というスタンスで出航の準備のため、採掘ドローンを母艦に呼び戻すのだった。

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