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宿命に抗う者たち  作者: パテンリ
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第三十一話 亜人たちの覚悟

 パンドルスは解放者の力を入手した後、猫王国内に数日留まり、国の安定化に努めた。その後、彼は猿帝国の都へと向かったが、魂の合一を完了させていない者がいた為、話し合いを始めることはまだできなかった。そこでパンドルスは個人的にエプリフィアのもとを訪ね、彼と対話することにした。

「大体のことはわかったけどよ、何故俺たちは亜人になる前、体が不自由だったんだ?」

「それは皆が集まってから話す」

「そうか。じゃあ、俺ってヒョウなんだけど、俺に対応する祖ってヒョウ祖なのか?」

「いや、ヒョウもライオンも他の者たちも元々は猫祖から発生した者たち。だからお前に対応するのは猫祖だ」

「なるほど。じゃあ次は……俺たちを襲撃し、俺たちが滅ぼした人間たちがいただろ。人間ってあれで全部なのか?」

「それも皆が集まってからだ」

「そうか。じゃあ、あの人間たちは何処から来て、何をしようとしていたんだ」

「それはわからん」

「なんだわからないのか。じゃあ次は竜についてだ。お前はあいつらについてどう思う?」

「やつらは人間と敵対している。我々と敵は同じ、ならば手を組める」

「でも、あいつらの目的はなんだ。俺たちは祖を求めているが、あいつらも何か求めているのか?」

「そんなことはあいつら自身に聞け」

「俺たちの特殊能力は世界樹との契約により使用可能なものだろ。で俺たちは祖に近い存在。というわけで祖は特殊能力を使用可能で竜祖がそれに該当するのはわかるが、他の竜たちも結構、特殊能力を使用していた。あれはどうなっている」

「だから知りたければあいつらに聞け」

「でも、あいつらでかいし、見た目怖いし、一人で行くのはちょっとなぁ」

「一緒に来いとでも言いたいのか?」

「その通り」

「仕方ない。お前に質問攻めされるよりは良いか」

「よし、じゃあ行こうか」

 というわけでパンドルスとエプリフィアは二人で竜たちの住む地へと足を運んだ。彼らはそこを初めて訪れたが、そこは自然豊かな場所で竜たちがのんびりと暮らしている様が見られ、いい雰囲気であった。パンドルスとエプリフィアは竜たちに竜祖の居場所を聞いて彼のもとへと向かった。教えてもらった所へ到着するとそこにはちゃんと竜祖がいた。竜祖は二人を見つけると近付き、話しかけてきた。

「お二人さん、何か困ったことでも起きたのかい?」

「聞きたいことがあってここに来たんだ」

「へぇ。俺は説明とか下手くそだけどそれでもいいならどうぞ」

「じゃあ、聞くぜ。あんたらの目的はなんだ?」

「あぁ、そういえば言っていなかったか。俺たちの目的は全ての生物が共に手を取り合い生きてゆく世界を実現させることだ」

「えっ!?そんな凄いことを考えていたのか。待てよ、全ての生物って人間も入っているのか?」

「当たり前だろ」

「でも先日、俺たちと一緒にあいつらを皆殺しにしただろ」

「確かにあいつらとは分かり合えなかったが、まだ機会はある。俺たちは諦めない」

「うん、俺たちとは少し考え方が違うようだ。次の質問だ。あんたが特殊能力を使用可能なのは理解できたが、他の竜たちはどういう仕組みなんだ?」

「祖の能力の一つでな。自分が生み出した子たちに特殊能力を与えることができるのだ。一応上限があるがな」

「なるほど。ついでに聞くけど、祖の能力は他には何があるんだ?」

「自分が掌握した噴出口を管理する力があるがそれを応用して色々とできる。例えば自由に星を作ったり、作った後の星をいじくったりとかな。それと座標移動とは別の移動手段があり、宇宙橋と言って、自分は移動できず、時間もかかってしまうが、大量に運ぶことができる。おっと一番重要なことを言っていなかった。祖は噴出口と繋がることができて、そうすると噴出口を掌握でき、そこから出てくるエネルギーを支配できるようになるのだ。他にも祖同士ならテレパシーが可能なこと、指定した座標を透視できることなどがある」

「なるほど前に聞いた話と合わせて考えると祖は色々と出来て凄いな」

「だろ。でも俺たちを作り出した創造主はもっと凄い。創造主は世界を創ったのだからな。噴出口から漏れ出してくるエネルギーも創造主のものなのだ」

「そこまで行くともうよくわからないな。それにしても俺は竜のことが気になってきた。今日はここで寝よう」

「俺たちはいつでも大歓迎だ」

「我はやることがあるから帰る」

 そう言ってエプリフィアは猿帝国へと帰ってしまったが、パンドルスはその日の残りの時間を竜たちと共に過ごした。竜たちは前向きな者が多く、パンドルスも前向きであった為、彼らはすぐに仲良くなり、気付けば、パンドルスは数日程彼らに囲まれて過ごしていた。そこへエプリフィアが来て、亜人たちの魂の合一が完了したことをパンドルスに知らせ、パンドルスは彼と共に猿帝国の都へと向かった。その時、竜祖と虫祖、ドラファティアも同行した。

 パンドルスは猿帝国の都中央のドーム状の建物へと進入し、いつもの部屋へと向かった。パンドルスが部屋へ入ると既に皆が着席していたので、パンドルスは一言謝り、席に着いた。その場に集まった者はヒョウ族亜人パンドルス、サル族亜人エプリフィア、サカナ族亜人ピスキュラ、クマ族亜人ベアドルム、キツネ族亜人フェリベルク、タヌキ族亜人タボラッグ、アザラシ族亜人シルグリア、ペンギン族亜人ペタギュレア、ゾウ族亜人テリファンナ、サイ族亜人リレイラス、カバ族亜人フィポリタス、オオカミ族亜人アルクルフ、トリ族亜人ヴァルザリア、竜祖、虫祖、竜祖最愛の子ドラファティアであった。

 皆が席について早々、パンドルスは質問を投げかけた。

「シェドアンやカルバトロスはどうした?あいつらが本流とやらではなかったのか?」

「どうやらあの道具は魂の合一を補助することはできたが、どちらに魂が移動するのかまでは制御できなかったらしい。彼らは特殊能力を失ったが、ちゃんと生きているようだ」

 パンドルスの質問にエプリフィアがすぐさま答え、パンドルスはその答えに満足したようであった。またパポベルドに関してはフィポリタスに敗北してしまったらしく、フィポリタスが解放者として覚醒したとのことであった。

「これで解放者は全て揃った。話を始めようか。我々の目的は祖となることであり、それぞれの素体となった祖から力を授かる必要があるのだが、これが容易ではないことがラミマルブの情報から判明した」

 エプリフィアの言葉にその場にいた皆が反応を示したが、そのまま黙って話の続きを聞く姿勢を取っていた。そこでエプリフィアは話を続けた。

「現在、この星の外では祖たちが二つの勢力に分かれて争いを続けている。一つが人祖を中心とする勢力で、もう一つが魔界連合なるの勢力。そして、人祖は他の祖の力を奪って自らの力となし、神祖と名乗って他の祖を従属させている。彼の勢力は彼が神祖と自称して以降、生み出した神族なる者たちが主戦力となっている。一方、魔界連合を構成しているのは悪魔祖、鬼祖、魔獣祖、怪獣祖、妖魔祖、巨人祖、幻獣祖、となっている。まず我々はどちらかに接触する必要があるのだが、皆はどうすべきだと考える?」

「聞いた限りだと、人祖が俺たちに協力してくれそうには思えないな」

「あいつは傲慢だからな」

「竜祖は人祖と会ったことがあるのか?」

「あぁ、この世界が誕生してすぐにな。それ以来会っていないが、奴は変わっていないようだな」

「魔界連合の祖たちは?」

「今名前が挙がった連中は人祖に比べれば、気のいい者たちだ」

「ならそいつらと接触してみるのが良さそうね」

 そう言って発言したのはフェリベルクであったが、その後にタボラッグが彼女を詰るような形で発言した。

「でもそっちに行ったら必然的に人祖と敵対することになりますよ」

 フェリベルクはちらりとタボラッグを見ただけで、特に彼に対して何も言わずにいたが、不機嫌そうにしていた。タボラッグはそんな彼女の視線に対して決まりが悪そうにした。フェリベルクはそれに満足したようで、視線をエプリフィアに向け直し、彼に祖の力が強奪可能なのかについて質問した。

「おそらく可能だ」

「なら人祖を倒して他の祖たちを解放し、祖の力を獲得することになるのか。それで、魔界連合はどこにいるんだ?」

「ここから遠くはないが、途中に人祖勢力の星があってそれをどうにかしないと先には進めない」

「そこはどういう所なんだ?」

「その星はサクリファステラと呼ばれ、管理者は神族のディザリラスとなっている。星の規模はここの十分の一以下だ」

「なるほど。そのディザリラスがどれ程の実力者なのか判然としないが、戦ってみれば神族について色々とわかりそうだな」

「ところで、この星の名前はなんだ?」

「パミクステラっていう名前だ。ちなみに星の名前は創造主が決めてくれる。俺たちが星を作ると創造主から信号が送られて、俺たちはそれを呼び名にするのだ」

 竜祖はそれを自慢げに語り、解放者たちはまた一つ世界について知ることになった。

「そういう仕組みか。それよりその星へはどう攻める。前に滅ぼした星は人間が少なかったけど、その星にはたくさん人間もいるだろ。俺たちだけじゃ戦力不足だぜ」

「各国の軍を動員するしかないだろう」

「移動に関しては俺の宇宙橋を使えばいい。宇宙橋は星と星の間をつなぐもので、座標移動と違って結構、移動時間がかかってしまうが、ほぼ無制限に生物や物質を運ぶことが可能だ。ただ問題もあって、宇宙橋をつなげた段階で相手に気付かれてしまう。宇宙橋を通る事ができるのはそれを作成した祖の裁量に委ねられている為、相手がそれを通ってこっちに来ることはないが、移動に時間がかかるから、待ち伏せを受けることが当たり前となるだろう」

 竜祖はそのように説明し、自分たち竜も亜人たちと共に参戦することを表明した。それにエプリフィアが答えて言った。

「それなら尚更、亜人たちを動員するしかないだろう。彼らには猿帝国の者たちを通じてある程度の情報を開示している。後は彼らに戦う覚悟があるのかどうかだ」

 話し合いはそこでひとまず中断され、解放者たちは亜人たちに覚悟があるのか確かめることとなった。彼らは自国へと帰り、そこで彼らに質問した。どの国の兵士たちも最初、迷いを見せていたが、やがて覚悟を決めたように決意を表明した。彼らも解放者たちと同様、自分たちの種族の未来の為、自らを犠牲とすることを厭わない意志を持っていたのである。

 解放者たちが兵士たちの意志を確認した後、彼らはエプリフィアに大山脈に囲われた地域へと呼び出された。道中、パンドルスはタボラッグに話しかけていた。

「あんたと話すのは初めてだな。俺はパンドルス。よろしくな」

「僕はタボラッグ……よろしく」

「あんたはここら辺に住んでいたんだろ。ここの事は良く知っているのか?」

「少しだけ……」

「ここはどういう場所なんだ?」

「……ここは宇宙に逃げる最後の時まで人間が暮らしていた所なんだ。人間はあの軌道エレベーターで逃げて、いつかこの星を奪い取る為、そこを守る必要があった。だから彼らは制御不能で危険な怪物たちを解き放ち、僕たちを近付けないようにしたんだ」

「怪物って俺たちがモンスターと呼んでいた奴らのことか?」

 パンドルスの問いかけにタボラッグはうなずき、話を続けた。怪物たちの戦闘力は脅威であり、獰猛過ぎる為、亜人たちは大山脈に囲まれた地域へは近付かなくなった。しかし、怪物たちは大山脈の外へ出ようとした。そこでタヌキ族の解放者は自らの幻術の力で怪物たちに幻を見せ、彼らが大山脈の外に出ないようにし、さらにその地に住み着き、監視することにしたというものだった。パンドルスはタボラッグの話に深い興味を示しており、話が終わった後もすこしばかり興奮していた。

「タボラッグも幻術を使うのか。そういえばフェリベルクも幻術を使っていたな」

「僕は彼女みたいに幻術で生物を傷付けるんじゃなくて、幻術で皆を笑顔にしたいんだ」

 タボラッグはそのように発言したが、それがどうやらフェリベルクに聞こえてしまったようで彼女は鋭くタボラッグを睨み、彼は少々怯えた姿を見せた。パンドルスは軽くフェリベルクに注意をして再び、タボラッグに話しかけた。

「俺はお前のその考え、好きだぜ。お前はお前のやりたいようにやるのが一番いい。フェリベルクなんて気にするな。それに俺もあいつにはちょっと思う所がある」

 パンドルスに励まされたタボラッグは笑顔を浮かべていたが、フェリベルクはパンドルスの発言を聞いて再び機嫌を悪くしていた。

 そんな風にして彼らが歩いている先頭を歩いていたエプリフィアが立ち止まり、他の者たちも異変を感じたのか、彼と同じように立ち止まり、辺りを見回した。すると辺りから気味の悪い叫び声が聞こえてきて、彼らの前に怪物たちが多数、姿を現した。相変わらず怪物たちは恐ろしく、醜い姿であり、彼らは体液をまき散らしながら解放者たちに接近してきた。

 倍以上の数の怪物たちに囲まれた解放者たち。彼らにこの窮地を脱する術はあるのか。また、エプリフィアは何を考えているのだろうか。

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