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宿命に抗う者たち  作者: パテンリ
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第二十七話 戦いの行方

 夜明けと共に姿を現した飛行物体。そして、それを迎え撃とうとする猫王国軍。空へと上がった狼煙を合図に両者の戦いが開始されたのだった。

 飛行物体は王都を目指して真っ直ぐ飛行してきていたが、猫王国軍はそれらをギリギリまで引き付けようとしていた。これは彼らの対空戦力が乏しく、攻撃手段が限られていた為であった。飛行物体が王都へ近付いてくると崩壊した王城にいたパンドルスが空に自身の特殊能力で炎を打ち上げた。すると飛行物体は彼へと進路を向けた。

「やはり、狙いは特殊能力者か」

「パンドルス様、準備万端です」

「そうか。じゃあ、手筈通りに頼んだぞ」

 パンドルスはそこを動かず、飛行物体が接近してくるのを待っていたが、それらが王城の上空辺りまで来た時、彼は飛行物体を目掛けて火球をまき散らした。彼の放った火球は全て回避されてしまったが、それと同時に地上から大砲や投石機などが飛行物体へと攻撃を開始し、それらがいくつか飛行物体へと命中して数機ほどが地上へと落下していった。猫王国軍はそれに喜びの声を上げていたが、落下した飛行物体から別の機械が現れた。それは様々な武装が施された二足歩行の戦闘用機械であり、その戦闘用機械はすぐに動き始め、地上にいる猫王国軍へ攻撃を開始した。猫王国軍はその状況を予期していなかった為、動揺を見せていたが、戦うことを止めなかった。彼らは猿帝国軍の兵器を用いて戦闘用機械へ攻撃を続けた。

 一方、パンドルスは遮蔽物を活用しながら飛行物体からの攻撃を回避していた。飛行物体はパンドルスを仕留める為、低空を飛行し始めたが、パンドルスはそれを待ち望んでいたようで、彼は跳躍して飛行物体の上へと飛び乗った。飛行物体はパンドルスを振り落とそうと激しく動き出したが、パンドルスはそれに耐えながら飛行物体に炎を浴びせ、撃墜に成功した。しかし、彼はその飛行物体と共に地上へと落下し、落下地点で戦闘用機械とかちあってしまった。戦闘用機械はすぐさまパンドルスへ銃弾を浴びせてきたが、彼はそれを全て炎によって無効化し、銃弾のお返しとばかりに炎の弾丸を戦闘用機械へと浴びせ、戦闘用機械は派手に爆散させた。パンドルスはそのままの勢いで戦場を暴れ回り始めた。

 そのような戦いの中、猿帝国軍の者たちは敵の飛行物体の中で一際大きい物に狙いを定め、地対空誘導を発射した。それは見事目標に命中し、大きな飛行物体は黒煙を巻き上げながら墜落し、大爆発を起こした。

 けれど、彼らがそこまでの活躍をしてみせても敵の戦力を五分の一ほど削っただけであった。逆に猫王国軍はその日の戦いが開始されてから三分の一ほどの兵士たちが屍となっていた。それでも猫王国軍の兵士たちは決して敵に背を向けず、勇敢に戦っていた。ミムレドとゲラピッドは特殊能力を駆使して敵と戦っていたが、彼らの力を持ってしても敵の戦闘用機械の方が戦力的に優位であった。その中で一人だけ別次元の強さを見せる者がいた。それがパンドルスであり、彼は単独で飛行物体や戦闘用機械を何機も破壊し、何とか猫王国軍の戦線を維持していた。

 ところで、パンドルスは敵を撃破しながら先ほど墜落した大きな飛行物体の元へと向かっていた。その飛行物体は先ほど大爆発を起こしていたが、形は保たれており、中から続々と戦闘用機械が湧き出していたのであった。パンドルスはそれを何とかしようと一人進んでいたが、彼の前に一機の戦闘用機械が立ち塞がった。その戦闘用機械は彼がこれまで戦ってきたものとは何か違う雰囲気を放っており、パンドルスも何かを感じ取ったのか容易には動かず、仕掛ける瞬間を見計らっていた。すると突然、その戦闘用機械から笑い声が聞こえてきて、パンドルスは一瞬、ビクッとした。笑い声の後、戦闘用機械からは言葉が漏れてきた。

「お前ら、なんでそんなに必死なんだ。笑えるぜ、不良品のくせによ」

「お前が人か」

「あぁ、そうさ。お前たちのご主人様だ。お前たちにはこの星は過ぎた代物だよ。とっととくたばって俺たちに返してもらおうか」

「よくわからんが、お前たちは俺たちが排除する」

「良く言うぜ。周りを見てみろ。お前たちはこのまま俺たちに滅ぼされるんだよ。あっははは」

 パンドルスはその時、若干怒りを見せ、敵に殴り掛かったが、回避されてしまった。

「おいおい、お前らは相変わらずだな。まぁ、そういう風に作られたんだから仕方ないか。丁度、暇だったからお前の相手でもしてやるか。こいよ」

 パンドルスはその挑発に乗る形で戦闘用機械と戦いを始めたが、彼は何故か炎の力を使わず、相手に押されていた。

「弱いな。先代はこんな奴らに負けたのかよ。情けないな」

 戦闘用機械はパンドルスを甘く見たのか少し、隙を生み出してしまった。パンドルスはその隙を見逃さず、炎の力を使用して戦闘用機械を半壊させ、その中を覗き込んだ。そこにはパンドルスたちのような人と別の動物が合わさったような生物ではなく正真正銘の人がいた。パンドルスと人は互いに見つめ合っていたが、パンドルスは無表情であり、人は何か汚いものでも見るような目をしていた。

「意外とやるじゃねぇか。でもやっぱ聞いていたものよりは弱いな」

「お前が指揮官か?」

「俺が指揮官?あっははは。俺はただの雑兵だよ。そうだな、俺たちの指揮官はもう少ししたら来るんじゃないか。おっ、ほらあっちを見てみろ」

 パンドルスがその者の言葉に従って大山脈の方へ顔を向けてみると、無数の飛行物体が飛んでくる光景が目に入り、彼は唖然としてしまった。人はパンドルスの唖然とする様子を見てニヤリとし、何かのボタンを押した。すると彼の搭乗していた戦闘用機械が爆発し、パンドルスはその爆発に巻き込まれ、激しく吹き飛んだ。そこへ数人の猫王国軍が駆けつけて来てパンドルスを抱き起した。

「パンドルス様、大丈夫ですか?」

「何とかな。だが……」

 そう言ってパンドルスが再び空を見上げると、兵士たちも彼につられて空を見上げ、無数の飛行物体を確認し、絶望の表情を見せた。

「もう終わりだ。今いる奴らを倒すだけでも精一杯なのに……」

「既に俺たちには退路もない。ここで果てるのか」

「諦めるな。この際、勝つか負けるかなどどうでもいい。俺たちは死んでいった者たちの為にも最後まで進み続けなければならない。俺に付いて来い」

 パンドルスはそのように強き言葉を発し、兵士たちを奮い立たせた。彼らは無謀にも十数人で無数の飛行物体へと立ち向かい始めた。明らかに彼らに勝ち目など無く、見方によっては死にに行っているようなものであった。けれど、彼らの顔には諦めなどは見られず、彼らは雄たけびを上げながら大地を駆けていた。

 その時、天地を揺るがすような咆哮が聞こえた。それと同時に山や森、湖、地面、雲の割れ目などから様々な姿をした生物が出現した。パンドルスたちの前にも謎の生物が現れ、その生物は二足足歩行であることは共通していたが、パンドルスたちと比較すると体長は十倍ほどあり、体は鱗で覆われ、大きな翼と長い尾を持ち、鋭い爪と牙を有していた。その生物は姿を現してすぐに飛び立ち、口から怪光線を発射して上空を漂っていた無数の飛行物体を攻撃し始めた。さらに別の場所からもその生物と同様な身体的特徴を持った者が現れ、飛行物体へと攻撃を開始した。

 パンドルスたちはその光景を信じられないようでその場に立ち尽くしていた。

「なんだ……あれは?敵か、味方か?」

「俺たちには攻撃してこない。敵ではないんじゃないか」

「……あれは竜だ。敵か味方かわからんが、今は飛行物体や地上の機械共を殲滅するぞ」

 そう言ってパンドルスは放心状態の兵士たちを引き連れて飛行物体や戦闘用機械の殲滅を進めた。彼が竜と言った生物の力は強大であり、瞬く間に飛行物体や戦闘用機械の数を減らしていき、遂に全滅させてしまった。パンドルスを含めた猫王国軍の者たちも全力で戦っていたが、竜たちが撃滅した敵機の数には遠く及ばなかった。猫王国軍は敵機が確認できなくなると王城の近くへと集合し、戦いの勝利を喜び合っていたが、彼らには解決していない問題があった。

「機械どもの殲滅には成功したが、あの生物はなんだ?今はあそこで大人しくしているが、あれが敵なら今度こそ我々はお仕舞だ」

「あれは竜という生物だ」

「パンドルス様、ご存知なのですか?」

「名前と姿形だけな。それ以外はわからん」

「おい、一体がこっちに向かってくるぞ!」

 見張りをしていた兵士の言葉にその場にいた誰もが恐怖したが、パンドルスだけは落ち着きを保ち、兵士たちが竜へ攻撃しようとするのを押しとどめさせた。竜は翼を広げて飛行し、彼らの元へと来ると飛行を止めて地面に降り立ち、周りをじろりと見回すとパンドルスに話しかけてきた。

「お前がここのリーダーか?」

「そうだ」

「なら、俺と一緒に来てもらおうか」

「理由は?そもそもお前は何者だ」

「面倒な話は苦手なんだ。でも、一応名乗っておくか。俺はバーンレイグ。俺と一緒に来てくれないのなら暴れちまうぜ」

「それは困るな。わかった、あんたの言う通りにしよう」

 パンドルスに答えにバーンレイグは満足していたが、猫王国の者たちはパンドルスの身を案じ、諫めようとしたが、バーンレイグを恐れたのか、その場では何も言わなかった。パンドルスが準備の為、バーンレイグから少し離れるとミムレドとゲラピッドが彼に諫言してきた。

「パンドルス様、どう考えて危険です。考え直して下さい」

「あなたを失えば我々は終わりです」

「大丈夫、俺は絶対に死なない。いや死ねないからな」

 そう言ったパンドルスからは強い覚悟が見て取れ、二人は沈黙してしまった。パンドルスは準備を終えるとバーンレイグの元へと戻って来て、彼に出発可能であるという合図を送った。バーンレイグはパンドルスに近付き、自身の背中に乗るよう指示し、パンドルスは素直にその言葉に従って、彼の背中に乗り、背中にある突起にしっかりとつかまった。そして、バーンレイグは空へと飛び立ち、猿帝国がある方向へと飛行し始めた。飛行中、パンドルスはバーンレイグに質問をしていたが、彼が質問に答えることはなかった。彼曰はく、聞きたいことがあるのならこれから行く先にいる者に聞けということだった。

 さて、バーンレイグの飛行速度は速く、その日のうちに猿帝国の都へと到着した。猿帝国の都は激しい戦闘があったのか建造物の殆どが崩壊しており、あちこちから黒煙が上がっていた。道や建造物の傍には黒焦げの死体がいくつか転がっており、生物の姿は確認できなかった。

 パンドルスは都の中心に位置するドーム状の建造物の近くで降ろされた。そして、彼はバーンレイグに言われた通りにそのドーム状の建造物の中に進入していったのである。

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